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第百五十七話 ぼっち妖魔は手を差し伸べる


あたしは二軒目に向かう。

こんどは職人さんの家なのか、

入り口にはサイズ50センチほどの大きな靴が飾られていた。

身長5メートルの人が履くんじゃないかというバカでっかい靴だ。

まぁ客寄せのための品だろう。

こういうものを作ってしまうセンスは好きだ。


というわけでここは靴屋さんだ。

お客さんの足を測って仕立て上げるお店だろう。

もちろん、サンダルとか、すぐに履ける既製品も売っている。


 「ごめんくださーい。」

すぐに頭の禿げあがったおじさんがニコニコ顔で出てきた。

・・・ちょっとやつれた感じだな。


 「はい、いらっしゃいませ、

 おや、これは可愛いお嬢さんだ、靴をお探しで?」


ごめんなさい、客ではないのだよ。

たまたまなのか、もとからそうなのか、

他にお客さんはいなかった。

用件を切り出しやすいといえば都合がいいかもしれない。

 「あ、すいません、買い物ではないんです、

 行方不明の娘さんの件で、冒険者ギルドから依頼で・・・。」


そこでおじさんの顔が険しくなった。

 「ああ!?

 まだメイジャを見つけらんねーのか!?

 依頼出してから何日経っているんだよっ!?

 しかも今度は獣人どころか、こんな小娘に何ができるって言うんだ!?

 ギルドはオレたちの事、舐めてるのかよっ!!」


あとちょっとヒートアップしたら、胸元掴まれていたかもしれない。

おじさんが激高している間に、店の中から奥さんと思われる女性が出てきて、

おじさんの背中を抑えにかかった。

 「あんた! なにしてんだい!!

 いくらなんでも失礼だろうっ!!」

 「ああっ!? ふざけるな!!

 こんな小娘寄こしてくるギルドの方が失礼だろうがぁっ!

 放せ!! これからあいつらに文句言ってくるっ!!」


落ち着いてもらおう。

 「『ダークネス』。」

あたし達の周りを闇が包む・・・。


 「あ!? あ・・・!?

 なんだ、真っ暗・・・!?」

こんな狭い場所なら詠唱は要らない。

多分サイレンスよりこの場にはいいと思う。


 「な、なんだ、これ!?

 もしかして、や、闇魔法ってヤツか?」


あたしは真っ暗闇の中、正確におじさんの手を握りしめる。

 「あ、え? この手・・・?」

 「わかります・・・不安ですよね、心配ですよね・・・。」

 「こ、これ、おま・・・お嬢ちゃんが!?」


あたしはゆっくり暗闇を解除していく。

 「あたしも昔、誘拐されたことがあるんです・・・。」

 「え・・・お嬢ちゃんも・・・?」

 「はい、あたしの時は、誘拐されてすぐだったのと、

 助けてくれた人たちがいたんで無事だったんですけど、

 魔物に耳を引き千切らせるとか脅されて・・・

 その時のあたしのパパの狼狽えぶりは良く覚えてます・・・。」


あんなものは二度と見たくない。



 「あ・・・う。」

 「だからあなたたちを他人事だなんて思いません・・・。」

 「そ・・・そうだったのか・・・わ、わるい・・・。」

 「いえ、謝らないでください、

 だからこそ絶対に見つけてみます・・・。

 協力してください・・・。」


 「す、すまねぇ・・・!

 む、娘を・・・メイジャを探してくれっ・・・この通りだっ!!」



ダークネスは完全に解除して、あたしは店の奥に通される。

ここで足の採寸を行う場所だね。

奥さんが暖かいお茶を煎れてくれた。


お店の中はいかにもという感じで男女用の様々な靴が陳列されている。

ダンジョン用の丈夫そうな靴もあるようだ。

全体的におしゃれ用の靴は少なく、実用的なものばかりだね。

そのせいか、お店の入り口に飾られている大きなお花がアンバランスに思える。

お店の中が殺風景なだけに、せめてもの華やかさを演出したいという事だろうか。

でもちょっと萎れかけているな。



話を聞いてみると、先程のエミリアさんと大差がないような状況だった。

朝起きたら、メイジャさんの姿が見えない。

靴もなくなって、お金や着替えを持って出ていった様子はない。


・・・状況が全く一緒なのか・・・。


交友関係も怪しいところはないし、

普段はメイジャさんはお店の手伝いをしているとか。


話の途中で近所の人らしき人がやってきて、

メイジャさんはその後どうなってるのか、奥さんに声をかけていた。

みんな心配しているようだね・・・。


念のために、付き合ってる人がいないかどうかも聞いてみた。

 「ああん?

 肉屋のポッポがメイジャに色目使ってたけどよ!

 もしあいつが犯人だったら顔の形が変わるまで殴り続けてやるぁ!!」


物騒だなぁ。

でもこっちは男性関係あるかもしれないのか。


あたしはお礼を言ってこのお店から出ようとした時、

奥さんが、あたしを見送ってくれたご主人を通り越して耳打ちしてくれた。

 「あの人は気にいってないんだけどね、

 あたしはメイジャがポッポと仲良くなってもいいと思ってるんだよね。」

 「へぇ、その二人自身はどうなんです?

 仲がいいんですか?」

 「うう~ん、あたしの見た感じじゃ、ポッポはメイジャに惚れてる気がするんだけどね、

 メイジャはその気が・・・あるのか、ないのか、そこら辺が微妙でねぇ・・・。」


なるほど、年頃なら無理もない。

 「わかりました。

 ちょっとその人にも話を聞いてきます。

 家の場所わかりますか?」



そのお肉屋さんは少し歩くのに距離があった。

その間、街中に不審なものがないかも気にして歩く。

・・・それっぽいものはないねぇ・・・。


冒険者ギルドが依頼を受けた行方不明者リストは全部で5件。

行方不明者そのものは他にも何件か報告されているのだけど、

この5件は行方不明時の状況が同じとして、同種の事件としてまとめているようだ。

一番古い事件はほぼ半年前。

今現在、あたしは最近の事件から調べに行っている。


これが終ったら、その前は二か月以上前か・・・。

ほぼ、一月置きの事件なのだろうか?


そしてそのお肉屋さんについた。

・・・結構賑わってるな・・・。

時間帯がまずかったか。

まぁいいや。

 「お仕事中、すみませーん、ポッポさん、いますかぁ~?」

ううむ、名前のせいで緊張感なくしてしまう・・・。

あたしもこんな間の抜けた声をかけておいてなんだけど。


 「んあ? ポッポォ?

 おい、ポッポ、お前を呼んでる嬢ちゃんがいるぞ!?」


大体このあたりは一家で商売してるのが殆どだから、このお店の主人さんぽい人がお父さんかな?

すぐに怪訝そうな顔して二十歳前後の男の人が出てきた。

 「え・・・と、誰だい、君?

 いま、忙しいんだけど?」

 「すいません、冒険者ギルドから来ました伊藤です。

 メイジャさんのことで聞きたいことがあるんですか、少しよろしいですか?」

 「あっ、えっ、メイジャ!?

 も、もちろんいいけど、そんな長時間は・・・。」

 「あ、簡単に終わらせます。

 もし長い話を聞くようであれば、後日伺いますので・・・。」


 「そ、そうか、それで聞きたい事って・・・?」

 「えっ、と、まず、ポッポさんはメイジャさんとお付き合いは?」

 「う、あ、え、と、付き合ってるとまでは言えないな・・・。」

 「他の人にはもちろん言いませんので・・・

 メイジャさんのこと好きです?」

 「う・・・うん、

 ええい、ちくしょう! 好き・・・だな。」

 「でも告白とかはされてないんですか?」

 「ま、まだオレも一人前じゃないし、あっちの親父には気に入られてないし。」


たぶん、この人は無関係っぽいな。

一応、念のため。

 「すいません、ちょっと手を触らせてもらっていいですか?」

 「えっ? な、なんで?」

 「あなたがメイジャさんの行方不明に関わってないか調べるためです。」

だからあたしは正直に答える。


 「そ、それはもちろん! ホラ!!」

すぐにポッポさんは手を出してくれた。

そしてあたしはその手を掴む・・・。


うん、無関係だね。

何も怪しいところはない。

 「え? なに、これ、鑑定スキルみたいなもの?」

 「はい、そんなところです。

 ポッポさんは無関係と確実に言えます。

 ・・・それでポッポさんは何かメイジャさんの様子とかで気付いたこととかありますか?」

 

 「おい! ポッポ、なにやってんだ、早く戻れ!!」

途中でお父さんがお店の方から怒鳴ってきた。

ごめんなさい、もうちょっと。


 「オヤジ、すぐ戻る!!

 ・・・あ、ご、ごめんね、

 メイジャの様子・・・か、

 そうだな、あいつがいなくなるちょっと前から・・・。」

 「ん? 何かありました?」

 「何かあったってわけじゃないんだけど・・・あんまりオレに構ってくれなくなった・・・。」


ガクッ!

そ、それは何と反応すればいいのか・・・。

 「は、はぁ・・・。」

 「あ、で、でもさ、誰か他にちょっかいかけてる男でもいるんじゃないかと・・・。」

ああ、そういう風に話が繋がれば?


 「・・・その男の人に心当たりは?」

 「といっても、あいつ、ミーハーだから・・・そこら辺のイケメンにすぐ目をキラキラさせるような奴で・・・いや、いつもそれだけで終るからいいんだけどさ!」


うまくいっても苦労しそうだな、この人。


そこで再びお店の主人からの怒鳴り声がかかったのであたしは退散した。

とりあえず、あたしはメイジャさんを全力で探す事だけは約束した。

それ以上は全く関与しませんので。


 

家に帰る時間がない・・・。

下書きが残量がまたピンチ・・・。

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