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第百五十四話 ぼっち妖魔は核心に近づく

前の話、ちょっとおかしな部分が有ったのでこっそり修正しました。


ちょ、ちょっと待ってちょっと待って、

今の言い方・・・間違いなくこの人、前にプリン食べたことあるんだよね?

でも、デミオさんもマーヤ夫人も、プリンなんて今まで聞いたことも見たこともないって話だった。

でもこの大きなおじさんは知っている?

他所の国の人?


いや、それよりも・・・

あたしの鑑定が弾かれた!!


あたしの目で全く見通すことができない。

この場にいるゴッドアリアさんや、妖魔のラミィさんより遥かに強大な魔力を持っている可能性がある!!



・・・とは言え、このおじさんからは敵意も害意も感じない。

ただの偶然でここに現れただけ?

だとしてもあたしは確かめずにはいられない。

もしかするとあたし以外にも転移者がいる可能性が・・・!


 「あ、おじ・・・お客さん、待ってください!」

 「お、おい! 麻衣っ! どこへ行くんだ!?」

 「ゴッドアリアさん、すいません、ちょっとだけ! 

 すぐ戻ります!!」

 「あっ、えっ、ちょっと、麻衣ってば!?」


満面の笑みで立ち去ろうとするおじさんをあたしは小走りで捕まえに行く。

もちろんおじさんは、後ろから追っかけに来るあたしには気づいてくれたけど・・・。


 「おっ? おっ!? どうしたのかな?

 も、もしかしてお釣り間違えた!?」

 「・・・はっ、はぁ、あ、いえ、ごめんなさい、お会計の事じゃなくて、

 さっき、おじ・・・お客さん、間違いなくプリンて・・・

 前にどこでプリンを食べたことあるんですかっ!?」


声はできるだけ小さくしておく。

何ならこの辺り一帯にサイレンスかけてもいいけど、

それはそれで後程騒ぎになりそうなのでここでは控えるしかない。


最初、おじさんはきょとんとしてたけど、

手をポンと叩いて頭を掻き始めた。

 「あっ、おっ、いけないいけない、

 それは内緒なんだったっけ。」


やっぱりそうなのか・・・。

 「内緒って・・・周りに聞いてる人はいませんよ?

 おじさんは・・・あたしと同じ国の人なんですか!?」


日本人かと言われると違和感ある風貌だけど、

どこかのアジア人としたら納得できるくらいの微妙な顔立ち・・・。

エスニック系と言えばいいんだろうか?


身長が全く違うおじさんは、上からあたしを静かに見下ろした・・・。

すごいプレッシャーと言えなくもないんだけど、

全くこの人からは怖さを感じないんだよね?

しかもどことなく優しそうな・・・


 「えっと、あれ? き、君はどこかで見たことあるなぁ?」

 「えっ!?」

どういうこと!?

いくらなんでもこんな大きな人を忘れるわけない!!


 「あっ、お、ご、ごめんね、たぶん、僕の記憶じゃないや・・・。」

 「はい? 仰ってる意味が・・・。」

記憶違いならともかく「自分の記憶じゃない」?


 「あっ、あのね、プリンの味を知ってるのも、僕の記憶じゃないんだよ。

 僕はこの世界で生まれたんだ。」

 「え、あ、あの、何言ってるんですか!?」


ダメだ、マジでこの人、何を言ってるんだかわからない。


 「マ、マスターの所へ行けば、い、いろいろ教えてくれるかもしれないけど?」

 「マスター?」

この人、酒場の店員さんなんだろうか?

それとも新手の誘拐犯の手口だろうか?

でも本当に、悪だくみをしてそうな雰囲気じゃないんだよね。


 「あ、で、でももしかしたらマスターの方が君にいろいろ教えて欲しがるかも?」

なんで?


 「マスターって誰のこと言ってるんです?」

 「ぼ、ぼくらを作ってくれた人だね。」


なんなの!?

何から何までわからない!!

 「あ、あなたは人間じゃないとでも!?」

 「ぼ、ぼくらはマスターに造られた。

 その時、マスターは僕らにいろんなものをくれたんだ。

 僕にはこことは異なる世界の記憶が贈られたんだよ。」


・・・!


 「・・・おじさんのマスターには会えるんですか?」

 「あ、う、うん、どうかな?

 ま、まだダメかもしれない。

 みんな揃ったら会っていいと思うよ・・・。

 あ、でもやっぱりオデムは反対するかも?」


 「みんな!? みんなって誰です!?」

オデムって人はその内の一人なのかな?



 「え、えーと、なんだっけかな?

 た、確か白い矢で撃ち抜かれた人たちがこの世界に送られてきたってことかな?」

なんだってぇぇぇぇぇっ!?


 「あた・・・あたしの他にもこの世界に飛ばされてきた人が!?」

 「うん、いるよ・・・。

 でも、ぼ、僕もまだ会ってないから、はっきりとは・・・。」

 「何処に行けばその人たちに会えるんです!?」

 「さ、さぁ? でも、慌てずにイベントこなしていけば会えるんじゃないかな?

 それぞれの目的も生い立ちもバラバラだけど、ご、ゴールは一緒らしいって。」


 「ゴールって何ですか!?」

 「あ、そ、それは喋るなって言われてるんだ、

 い、意地悪じゃないよ!?

 ショートカットしちゃうとレベルが低いうちに強力な敵と戦う事になっちゃうんだって!

 だから、ちゃ、着実に力をつけて、みんなと力を合わせた方が生き残る確率が高くなるって・・・。」



 「その人が・・・あたしをこの世界に呼びつけたんですか・・・。」

目的はともかく、まずは文句言ってやらないと始まらない。


 「そっ、それは誤解だよ!

 たぶん、マスターも、も、元の世界からこっちで生まれ変わったんだ、

 そしてマスターはもう元の世界には何の干渉も出来ないんだ。」


 「じゃあ、どうしてそんないろいろなことがわかるんです!?」

 「マ、マスターは何でも知っているんだ、

 あ、知ってるっていうより、わかるっていうのかな?

 も、『運命の三女神モイライ』ってスキルがあるんだよ。

 この世界だけにしか通用しないけど、過去・現在・未来を見通す事が出来るんだ。」


なんですと!?

それはあたしの透視能力をも上回るってこと?

あ、でも・・・この人自体、あたしの魔力を遥かに・・・。


 「・・・そんな人があたしに何を教わると・・・?」

 「き、君はいろいろな人に愛されている・・・。」



はっ!?

いきなり何!?


 「あ、あ、・・・あの、なにを!?」

ヤバい、自分でも顔が赤くなっていくのが分かる。

なんという、こっ恥ずかしいセリフをお吐きになるのだろうか?


 「マ、マスターはある人をとても愛している。」


話の流れが変わった・・・。

これは口を挟むようなことではないかもしれない・・・。


 「そしてマスターはその人を愛するあまり、そ、その人の恋人にとても酷いことをしたんだって。

 そ、そして結果マスターは罰を受けた・・・。

 い、今も罰はつづいているのかもしれないって。

 もう、マスターはその人に二度と会えない・・・。」


うぁ・・・悲しみの感情が流れ込んでくる・・・。

このおじさん、マスターに造られたとか言ってたけど、

もしかしたらその人と精神状態がリンクしているのだろうか。


 「それがあたしとどういう・・・!?」

 「き、きみ、自分が誰かに守られてると思ったことは?」


・・・え。


それは・・・

思い返すと、あたしは子供のころからとんでもないトラブルに巻き込まれてきた。

ある意味、リーリトという希少種族のせいだとも思うんだけど、

少なくともあたし自身はこうして無事に生き永らえている・・・。

あたし自身は。


そしてそれは勿論、あたしの能力が優れているとかそんな話ではなく・・・

みんなに助けられて、

支えられて、

許してもらってこうして生きているのだ。


 「そ、そのみんなに君は愛されているんだろ?」


セリフはとても恥ずかしいけど、多分そうだ。


 「きっとマスターは、そ、そんな君が羨ましいと思う。」

 「おじさんのマスターさんは、誰かに愛されていないの?」


そこでおじさんは静かになった。

目元は寂しそうで、それでいて柔らかな笑みを浮かべている。


 「ぼ、僕らはみんなマスターを愛しているよ、

 でもマスターが本当に欲しがっているのは僕らじゃない。

 ・・・君なら、マ、マスターの寂しさを何とかできるかなと思って・・・。」

 「あ、あたしにそんなこと・・・。」


 「き、君は闇の巫女だろう?」

 「・・・それは。」

そんな話は聞いてない。

聞いてはいない・・・けども・・・。


 「ぼ、僕はもう、いくね。

 仲間が待っているんだ・・・。」

 「あ、おじさんは最初からあたしを知ってて、プリンの列に並んだんですか?」


 「あ、ああ、プリンが食べたかったのは本当・・・。

 でも、わかっていたのは、プ、プリンを売っている子が、異世界からきた女の子ということだけだよ・・・。」

 「あたしの事、記憶にあるって言ってたのは・・・。」

 「それは、き、君の顔を見てから気づいたことだね、

 そ、それに、ぼ、僕は自分の中にある記憶が、誰のものかわからないんだ。

 でも、た、たぶんその人は君を優しく見守っていたんだと思う・・・。」


 「・・・うそ。」

 「あ、も、もしかして、余計な期待をさせてしまったかもしれない。

 僕の記憶の中の君は、今と同じくらいの角度で見えていたから、

 ものすごくカラダの大きな人だと思うよ。

 こ、心当たり・・・ある?」


あたしの人生の中で2メートル近い身長の人なんて、たった一人しかいない。

会ったのはたった一度きりだよ?


でも、そうか・・・あの人なら・・・色々と腑に落ちることがある。


 「おじさんのマスターが愛した人って・・・。」

 

そこから先はおじさんは答えなかった。

でも、なるほど、世界が少し見えてきた気がする。

あたしがこの世界に送られてきたのは、気まぐれや悪戯なんかじゃない。


はっきりとした意味があるんだ。


 「おじさん!」

 「な、なんだい?」

 「あたしはこの街でクリアしなきゃならない何かイベントがあるんですか!?」

 「お? お?

 イ、イベントの意味はわからないけど、こ、この街に何かあるのかってことかな?

 ぼ、僕らには無関係だけど、街の真ん中に強力な魔力があるね。

 で、でも、常に隠蔽されているみたいだよ?

 それ以上、ぼ、僕にはわからないや。」


いま、あたし凄い決意をしようと思ったけど、いきなり出鼻くじかれた・・・。

やっぱりやめようかな?


 「おじさんはそのマスターさんのために動いている?」

 「う、うん、そうだよ、間違いない。」

 「じゃあ、あたしがそのマスターさんの役に立つなら・・・

 あたしの味方になってくれるってことでいいんですか!?」

 「あ、・・・うん、でも出来ることと出来ないことが・・・。」


 「十分です!

 おじさんの名前を教えてください、

 あ、ご存知かもしれませんが、あたしの名前は伊藤麻衣です!!」


 「う、うん、僕の名前は布袋ほてい

 仲間には布袋さんとか布袋どんて呼ばれているよ・・・。」


まさかの七福神か!!

ああ、だから白い大きな袋持ってるんだね!?




その後おじさんは残ったプリンを白い袋に無造作に突っ込んで帰って行った。

すぐに中身が崩れて大変なことになると思って大声出したのだけど、

なんでもマジックアイテムだから心配いらないとのこと。

え? もしかしてあたしの巾着袋と同じ性能?

でも確かあのアイテムボックスは世界に10個あるそうだから、その内の一つなのかと納得した。


それにしても大事な話ばかりあったな。

真っ先に気になるのは街の真ん中にあるとてつもない魔力だそうだけど・・・。

あたしの危険察知能力でも把握できない程の隠蔽を掛けられているという事か・・・。


 

この街から逃げよっかな?


いよいよ次回から本編です!

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