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第百五十三話 ぼっち妖魔は手段を選ばない

選ばない・・・いや、選んだのか、これ?


そして当日!

売り子はあたしとゴッドアリアさんのみ。

場所は商人ギルド前なので人通りは文句なし!

建物の中からデミオさんがお手並み拝見とばかりにこちらを覗いている。

近場ではマーヤ夫人が部下の人と一緒に様子を見に来ていた。

さぁ、いきますよ!

時刻はお昼御飯が終わった午後一時からスタート!!


うう・・・緊張する。

と思っていたら、ゴッドアリアさんの緊張度がただ事でなかった。

おめめがグルグル模様になってるよ?

口の形も波線になっているようだ。

さすがにあたしはそこまで酷くはない。

そうとも、あたしは妖魔リーリト。

この程度で動揺したりしないのだ。


よし!

 「さぁ、さぁ、皆さま!

 どうぞこちらをご覧ください、

 世界初の卵と牛乳を使った甘い甘いスイーツです!!

 どうぞ、食後のデザートにいかがでしょうか!!」


・・・あたしの大声に道行く人はこちらを見てくる・・・。


でもそれだけだ!?


お昼帰りの労働者の皆様やら、夕飯の食材を買いに来た奥様方、

ヒマそうな子供たちが物珍し気に見に来るが、一定の線以上近づいてこない。

うう、声をかけるには遠すぎる・・・。


向こうも売り子のあたし達に話しかけられるのを警戒しているみたいだ・・・。


 「甘いな・・・

 あの距離でも遠慮せずに声掛けできないと話にはならないんだよな・・・。」


後ろの方でデミオさんが何か呟いているみたいだけど、さすがに壁を隔てた建物の中の声をあたしが聞くことは出来ない。


 「うう、麻衣・・・やっぱり難しいんだよ、

 あたしたちじゃ商売なんて・・・。」

 「何言ってるんですか、

 まだ始めたばかりですよ!!

 これからです、これから!!」


とはいえ、どうしたものか、

ウナギのかば焼きとかなら匂いで釣れるかもしれないけど、

そもそもそれこそ作るのに技術がいるし、かば焼き用のタレなんかあたしは作れない。

ここまできたら腹をくくるしかないのだ。



・・・あ。

よく考えたら・・・あたしには奥の手が有るではないか。


頭の中でステータスウィンドウが浮かび上がる。


・・・魅了・・・

うん、あのスキルがあれば・・・ってダメ!!

あれは女としてのプライドが許さないとあたしは決意したはず!!

しかもそれをここで使うのはズルみたいなものだ!!

第一、お客さんを魅了にしてしまったら、その後どんな弊害が起きるかわからない!

下手をしてバレたら術者のあたしが魔物だとかなんとか言われかねない!


というわけで却下だけど!!

おかげでもう一つの手が思い浮かんだ!!

 「しょーかん! ふくちゃん!!」

 「えっ!? 麻衣!? あ、えっ、それ!? ええええええっ!?」


はい!

白い光の柱からふくちゃんとーじょー!!

これならズルじゃないよ!!

あくまでアイキャッチ!!

ほら、御覧なさい!


辺りの人たちが、巨大ふくろうのふくちゃんが屋台のテーブルのうえに鎮座しているのを見て、物珍し気に寄って来た!!

今がチャーンス!!


 「なんだ? お嬢ちゃん、そのふくろう、デカ過ぎね!?

 てか、いまどうやって現れた!?」

 「ふっふっふ!

 あたしは召喚士ですからね!!

 おお、そうだ! 

 この試食用のプリンを誰かこのふくろうに食べさせてあげてくれるかな!?」


 「麻衣・・・あざとすぎる・・・。」

何言ってるんですか、ゴッドアリアさん、あなたの借金返済のためですよ!?

しかもこうしてる間にも魔力を消費してるんですからね!?

まぁ10分くらいは余裕だけど。


 「え、すごい、このフクロウ、かわいい!」

 「く、くちばしで突っつかれない!?」

 「大丈夫ですよ、ふくちゃんおとなしいから。

 ホラ、この竹べらで試食用のプリンをすくって、このふくちゃんに・・・おお!

 食べた食べた!! ね? こんな感じで!!」


すぐに「ぼくもあたしも」と、老若男女が群がり始めた!

最初は美味しそうに羽をばたつかせて食べるふくちゃんに、

皆見惚れていたんだけど、

そのうち、試食用のプリンにも見物客が急接近し始めたのだ。

 「え? これ食っていいのか!?」


今までこの異世界で試食という行為は見たことがない。

だからこんな手が成功するかは賭けだったのは確かだ。

下手したら全て、買わずに食い散らかされるかもとは思っていたのだけど・・・。


 「なに、これ、うめぇぇえ!?」

よし!

あたしは試食用のプリンにカラメルソースを注いで声高に叫ぶ。

 「どうですか、皆さん!

 ほっぺたが落ちる事間違い無し!!

 お一つたったの500ペソルピー!!

 今回は200個の限定販売!!

 売り切れにならないうちに早めにどうぞ!!」


さすがに子供たちだけでは、500ペソルピーすらのお金も持っていない子が殆どだった。

絶望の表情を浮かべる子供たちには「お父さんかお母さんと一緒に来てね」と精一杯の慰めをして、お金を持っていそうな大人たちを相手にあたしは容赦なく売り捌いた!!


出来合いを売るのではなく、

お客様に手渡す直前で、仮蓋を外してゴッドアリアさんがカラメルソースを注ぐ。

そして紙蓋をして紐で結んで、お包みするのだ。


元の世界だったらプラスチック容器があるので中身が見えるのだけど、

こっちにそんな素材はない。

だから買ってくれる人の目の前で中身が見えることが重要だと思ったのだ。


・・・結果、食いついてから1時間もしないうちに完売した。


 「はい、申し訳ありません、

 本日は売り切れとなってしまいました!!

 明日も同じ時間にこちらでお店を出しますので、

 またのご来店、お買い上げをお願いいたします!!」


あちこちからブーブー非難の声が聞こえてきたが、これは良い反応。

よし、明日は500個用意しよう。

今日の夜じゅうに、材料を用意し、明日の朝から二人で作り続ければどうにかなるぞ!?


 「ま、麻衣・・・これ、こんなに売上が・・・。」

 「はい、売れましたね!!

 さぁ、ゴッドアリアさんの借金返済まで頑張りましょう!!」





・・・そしてあたし達は一週間頑張って売り続けた。

途中、ゴッドアリアさんの金貸しに見つかって一時騒然としたが、

デミオさんが話をつけてくれた。

曰く、見ての通り売り上げは好調で、月末には延滞金ふくめて耳を揃えて返済に行くと。

既に返済期限は過ぎているので、それこそ下手をすると最終的によろしくない事態にまで行く危険もあったけど、金貸しも商人ギルドに目を付けられたくはないらしく、

話はとんとん拍子でまとまった。

デミオさんには感謝である。


・・・ん?

余計なフラグは立ってないからね?

もし、そうなるんだとしたら、あたしは遠慮なくゴッドアリアさんを人身御供に差し出しますよ?

へっへっへっへっへ!


 「麻衣の目が怖い・・・。」

 



ただ、何日目だったか、あたしがこの異世界で過ごすにあたって、

重要な転機を迎える人が来たのはここに記しておこう。

 「お、お、特別限定販売、プ、プリン100個下さいな!」


ニメートルは有ろう縦にも横にも広いおじさんが無茶なことを言い始めた。

とてつもなく大きな白い袋を肩から担いでいる。

白いお髭をつけて服装を真っ赤にしたらサンタのおじさんを連想したことだろう。


 「え、あ、あの、お買い上げ下さるのは、う、嬉しいのですが、

 数に限りがありますので、お一人様にそれだけ売るのは、ちょっと・・・。」


当然のごとく後ろに並んでる人たちからもクレームが入った。

 「おい、こら、待て、100個は欲張りすぎだろう!!」

 「あたし、もう30分も並んでるのよ?

 売り切れたらどうするつもりなのよ!!」


ていうか、100個もどうするの?

まさかあなた一人で食べるつもり!?

みるみるしょぼーんなおじさんにできるだけ丁寧に声をかける。

 「販売制限は考えてなかったのですが、そうですね、

 この並びからなら、10個ほどのお買い上げでお願いできませんでしょうか?

 あまり食べ過ぎは体にも良くないですし・・・。」

この人の胃袋なら問題なさそうだけどね、念のためにね。


するとおじさんは満面の笑みを取り戻して、嬉しそうにお金を払う。

10個も崩さずに包装できるかなと思っていたら、何とおじさん、

カラメルソースを注いだその場でいきなり食べ始めたのである。

え、いや、別にここで食べてもらっても全然構わないんだけどさ、

あまりに突然だったのと・・・


 「ああ! 美味しい美味しい!

 ま、間違いなくプリンだよ!!

 噂を聞いて駆けつけてきてよかったぁ!!」


はい!?

 

連休で少し下書き増えました。

プリン編はおまけです。

その後が麻衣ちゃんパートの本編となります。

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