第百三十八話 ヒロインは遅れてやってくるよなって話
ぶっくま、ありがとうございます!
明らかに彼女達の反応はおかしかった・・・。
「ゆ・・・融合?
アレンと・・・一つに融合?
そ、それ・・・ンヤハハハ、
それ、いいかも?」
「そ、そうですね、
あのオーガバスターズの皆さんとは死んでもごめんですが、
アレン様となら・・・、
それにもしかすると、絶頂の時はアレン様と感覚が繋がったまま!?」
「みんな・・・一緒・・・気持ちいいのも一緒・・・。」
えっと、君ら、何言い出すんだ?
「ええええっ、みんなどうしたのっ!?」
おっ!?
「ミストレイ! 君は正気・・・かい!?」
「えっ!? あっ! アレンも!?」
「良かった! 君は無事かっ!
これは、なんだ!?
ミコノたちは状態異常にでもかかっているのか!?」
「あっ、状態異常・・・なのかな!?
いったいいつから!?」
状態異常ならミコノの回復術で・・・ってミコノ自身がやられてるじゃないかっ!?
「おい、ミコノ、僕の声がわかるかいっ!?
プリーストの呪文・ディスペルをかけるんだ!!」
あらゆる精神的状態異常を解くディスペルは上級僧侶職で覚える高度な呪文、
オーガバスターズのモンク程度では習得できるはずもない、
ここは彼女じゃないとダメなんだ!!
なのに・・・!
「ええ〜? アレン様ぁ・・・
それより私たちと繋がりましょうよぉ・・・?
イク時はいつも一緒・・・すっごく刺激的です・・・ぅ。」
えっ、あっ、ミコノが僕のカラダに二つの胸を押し付けてきたっ!
ラッキーッ!!
って違う!
いま、そんなこと言ってる場合じゃない。
「ンヤハハハハッ! おい妖精!!
オルベたちを繋げてもいいけど、オルベはアレンとしか繋がらないからな!!」
オルベのもふもふ尻尾が僕の太ももに巻きついてくる!
状況が違えばすっごく嬉しいんだけどさ、
融合させられるのはまずいって!!
「ん? なんじゃ、融合先のリクエストか!?
まぁ、よいじゃろう、ワシに不利益はないしな!
良いぞ! その望み叶えよう!!」
妖精アルラもノリノリだ。
こいつ、結構サービス精神あるんだよな。
あれ、誰だ、僕のカラダを抱きしめるのっ・・・て、この匂い・・・ライザか!!
「アレン様・・・私と・・・ダメ?」
そ、そんなトロンとした唇で・・・あ、舌先がなまめかしく僕を誘ってる・・・。
これ、ぶっちゅってやっちゃっていいやつだ!!
いや、これいいです、最高ですっ!!
つか、これ、僕が前から望んでた全員一致のハーレムじゃないかっ!?
「アレンッ!?」
「っ! ・・・な、なんだい、ミストレイ!?」
あ、危ない危ない、僕も流されるところだった。
ミストレイは正気のままか。
「まぁ、望みは叶えるが少し待っておれ、
先に手近なこいつらから試してみるでのう?
ほれ、そこの女もそのままじゃと、出血で長く持たんじゃろう?
足はいらんじゃろうからな、そこの禿げ頭と繋げてやるぞ?
それとも槍を持った男とくっつけてやろうか?」
あっ、このままだとミランダさんまで危ない。
あれ、でも確かにあのまま誰かとくっつければ治療の必要もなくなるのかな?
「い、いいいいやぁっ!?」
彼女は狂ったような形相で首を振る。
そんな嫌がらなくてもいいんじゃないかなあ?
「なに、痛いのは最初だけじゃ、
すぐに気持ちよくなるようじゃぞ?
それ、ストーンランス・・・。」
ほら、アルラもそう言ってるし。
妖精アルラの頭上に魔法の槍が浮かび上がる・・・。
あれでカラダを刻まれたら、ミコノの治癒魔法でも回復は厳しいだろうな。
「いやいやいやいやいや! っやめてやめてやめてっ!!」
ミランダさんの絶叫に反応してか、
カイゼルシュタットの左腕になってしまった二つの口からも、それぞれ異様な叫び声が上がる。
「「あほだgふぁうdぁあぁぶじzんs!!」」
叫び声のタイミングはほぼ一緒なんだけど、
別々の口で適当に声を出しているせいか、
余計に何を言ってるのか分からない。
一方、カイゼルシュタットはもはや放心状態なのか、口をパクパク開くだけで何もできない・・・。
いま、その凶悪な石の槍が・・・
「ぎゃあああっ!!」
ランス使いの左足が宙に飛ぶ。
「まずは男の方からのぅ。」
ダメだ・・・この妖精は一人ずつ嬲る気だ・・・。
逃げ帰って態勢を整える?
無理だ・・・。
たとえAランクパーティーを引き連れてきたところで勝てっこない。
それこそ妖精の姿が見えないうちから広範囲火炎魔法でもなんでもいいから、
森ごと焼き尽くすしか方法はないだろう。
いや、それさえも防御魔法でしのがれたら・・・。
「さて、待たせたのう、次は女、お前じゃ・・・。」
「・・・あ、あ、あ・・・いやぁ・・・。」
もうミランダさんは抵抗する力すら残っていない・・・。
恐怖からなのか、痛みからなのか、顔面は涙でぐしょぬれだ・・・。
妖精の頭上に新たな槍が形成される。
ってこいつはどれだけ魔力があるんだ!?
無尽蔵に魔力があるとでもいうのか!?
「さ、これからはワシらは仲間じゃぞ?
仲よくしようなァ・・・!」
もうだめだ・・・。
恐らくミストレイがここから矢を放ったとしても、妖精は再びエアスクリーンで防ぐだろう。
エアスクリーンの防御膜が、ミストレイの矢で相殺されるにしても、結局はただのいたちごっこ。
その間、ミランダさん達は死に近づくだけ。
そして恐らくは先にミストレイの矢が尽きる。
ならばと、僕が動いてもいいけれど、今や僕のカラダに3人の女性がしがみついている。
彼女達を引き剥がして妖精の元に向かうのは困難だ。
割り切ろう、今あの場にいる者達は助からない。
ここは退いてでも命を永らえるべきだ。
状態異常なんて戦闘から離脱すれば何とでもなる。
「撤た・・・」
僕がまさに撤退と告げようとしたその時、
・・・まさにその時・・・
森の中を一陣の風が吹いた・・・。
思わず砂埃から庇うように目を伏せたが、
何が起きたのか・・・
いや、再び目を開けた時に何も変化は起きていなかった。
恐らく他のみんなも似たような状況だったのだろう、妖精ですら目をこすっている。
だが、この時点から、
事態は僕らの予想を遥かに超えた展開となっていく・・・。
最初の違和感は、カイゼルシュタットの左腕の化け物が発したものだった。
「「あfたsfdめrきおえlるまあなtうさほあgshの」」
相変わらず何を言ってるのかはわからない。
だが僕が感じた違和感とは、
今までは二つあった口がそれぞれ別々の音を発していたように聞こえていた、
時には片方の口しか開いてない時もあったと思うが、
いま、あいつは二つの口で「同じ音」を発していたようだ。
そしてどうやら妖精アルラは、
僕以上に今の違和感を感じ取っていたらしい。
「なんじゃ?
眷属の・・・繋がりが途切れた!?」
なんだって?
「「わdあひgめgけfりーざn、いmだたのうjころんぃえりうの」」
二つの口は、明らかに何らかの意思を以て喋ろうとしている。
いったい、なんだ?
眷属の繋がりが途切れたって・・・いったいどういう意味だ!?
「誰じゃっ!
ワシの眷属を奪おうすとるのは誰じゃあっっ!?」
そのまま妖精はストーンランスをカイゼルシュタットに放つ!
「「「ぎゃああぁああっ!!」」」
おい、仲間になったんじゃなかったのかよ!!
カイゼルシュタットも二つの口からも、同様に激痛が走っているのか仲良く悲鳴があがる。
カイゼルシュタットの顔の表情からは、痛みの反応以外、何も読み取れないが、
あの二つの顔は、痛みが治まったのか、少し落ち着いた後、
再び笑うかのように顔を歪め始めたのだ。
そして・・・
遂に僕らはその言葉をはっきりと聞き取っていた・・・!
「「わぁtぁしjぃmェリィィ・・・
いぃまぁ・・・あぁnぁたぁのぉうぅしぃrぉぃにいぃるぅのぉぉ・・・」」
お待たせしました!
・・・ちなみにこの場にいる人間で、
状態異常に一切かかってないのは
2人だけです。
ただしみなさん、異常度はほんの軽微なもののようなので・・・。