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第百三十七話 相手を嵌めようと思ったら自分たちが既に嵌まってたって話


 「何やってんだ!! アレン!!

 後に続きやがれ!!」

カイゼルシュタットの大声で我に返る!

確かに呑気に解説している場合じゃない!!

だけど、まずはあの二人を助けないと・・・!

 「ミコノ!!」

 「アレン様、仰ることはわかりますが、あの場所まで距離がありすぎます!!

 ここからじゃヒールは届きません!!」

 「先に妖精を倒すしかないのか!?」

 

 「どっちにしろ距離を詰めるしかないよっ!

 あたしの弓もライザの魔法も、迂闊に使ったらあの二人までも巻き込む!!」


ミストレイの言う通りだよな、

ミランダさんの乱入は心情的には理解するけど、完全に足手まといだ。

これは戦闘の作戦を相当見直す必要がある。

・・・けど参ったな、あの二人には時間がないぞ?

ほっとくわけにも・・・



ほっとけないかな?

どうせ、オーガバスターズなんて脳筋どもは、今後も長生きできるとは思えないし、

兄を殺された村の女性と言ったって、ここまで来ること自体、無茶なんだ、

僕らに彼女を助ける義理すらないだろう。



 「・・・くそぅ、何がBランクだ、使えねぇっ!!

 てか、お前らもかっ!!

 こうなったらオレだけでも・・・!!」


僕らが動かないのを見て、カイゼルシュタット一人で突っ込む気か、

・・・そういえば、オーガバスターズの残りの連中も足を止めたままだな、

あいつら全員、近距離戦闘タイプだろ?

いや、今はカイゼルシュタットを・・・。


彼は村の女性やランス使いに気を使ったために、どうしても妖精への接近・攻撃に隙を作ってしまった。

あのバトルアックスが妖精のカラダに当たりさえすれば、勝負は一瞬で着くだろうけど・・・


 「怖いのう、・・・アースウォール・ジェイル。」


再び妖精がカイゼルシュタットの接近を防ぐために壁を作・・・る?

え?

 

 「うぉぉぉおおおっ!?」

カイゼルシュタットの下半身が土の壁に飲み込まれる!!

なんだあれ?

アースウォールってあんな使い方も出来るのか!?


 「そしてストーンランス・・・。」

間髪入れずに妖精が凶悪な石槍を頭上に浮かべる・・・

おい、そんな至近距離で・・・


息を呑む暇すらなく、そのストーンランスはカイゼルシュタットに・・・

 「グアアアアアアアアアッ!?」


鮮血と共にカイゼルシュタットの左腕が宙を舞う!!


ああ・・・

まだ右腕でバトルアックスを持ちこたえてはいるが・・・


ちぎれ飛んだ左腕は大地に堕ちる・・・。


 「ち・・・ちくしょうぉぉぉぅ・・・」



つ、強いぞ、この妖精・・・

いまだ全体魔法も使ってこないのに、ここまで僕ら二つのパーティーがあしらわれるなんて・・・。


 「おや? もう動けんようじゃの?

 そろそろお主も融合させてやろうか?

 さっきの栄養源がおぬしの兄だというのか?

 そうかそうか?

 なら兄弟仲良く一つのカラダにくっつけてやろうかぁ?」


 「なっ、テ、テメェ、あ、悪魔かっ・・・!?」


おい、ばか、やめろ、

別にカイゼルシュタットが死のうが化け物のエサになろうがどうでもいいけど、

この場でやったら、目撃する僕らは完全にトラウマものだぞ?

明日の晩飯だって喉に通るかどうか自信がない。


 「おーい、そう、貴様じゃ貴様、

 根を引き抜くことを許すぞ、

 こっちにやって来るが良い。」


 「あでぃあfえいおはsがdl」

・・・ズボッ、 ズボッ・・・


うわっ、見たくもなかった・・・

腕もない代わりに、二本の男根をぷらぷらさせながら、

さながらゾンビのように緩慢な動作で足を地中から引き抜く・・・。

そしてカイゼルシュタットの兄だった「生き物」は、左右の足の長さが不揃いな事もあるせいなのか、

ゆっくり、ぎこちなく、

まるで歩くのが初めてだと言わんばかりに支配者たる妖精アルラの元に向かう。


するとどうだ?

アルラに近づくにつれ、その「生き物」の男根が二つとも巨大化しそそり立ってゆく・・・。


まさか・・・。


 「おおっと? 今は食事の時間ではないぞぉ?

 ワシに入れたければまた後でな?

 それにしても、こやつらめ、

 ワシに近づくと条件反射のようにおっ立たせてしまうようじゃの?」


見ればあの「生き物」、気味の悪い笑みを浮かべていやがる!!

ダメだ・・・あれはもう人の心なんか残っちゃいない!!


 「こらこら、今はワシのとこへじゃない、

 そこの頭の禿げた男がおるじゃろう?

 なんでもお前の・・・どっちの顔の方か分らんが弟らしいぞ?

 一緒に繋げてやるからそっちにゆくのだ。」


 「あふgしぇぐいあ!」

その生き物はアルラの言葉だけは理解できるのか、カイゼルシュタットに向き直る。

 「あ、兄貴ぃぃ!?」

カイゼルシュタットにはまだ片腕とバトルアックスがある。

・・・だが、それを実の兄に振り上げるわけにもいかず、みっともなく肩から先がなくなった腕を振り回すだけだ。


ふと周りを見渡せば、僕らのチームもオーガバスターズの無事な連中も、誰一人として足を動かすことができない。

この残酷な見世物の前に声一つ発することも出来ないのだ。


 「ストーンランス。」

無慈悲な妖精の魔法が、融合生物のカラダを斬り刻む。

 「あgうslすふぁlkぁっ!!」

奴は悲鳴を上げるが、喜んで叫んでいるようにも聞こえるぞ?

僕らと同じ赤い血だ。

どうしても「それ」が僕らと同じ人間だと思いたくはない。

けれど、それが事実なんだ。

目の前に起きている現実とは思えない光景・・・


それを僕らは受け入れるしかなかった。


もちろん、カイゼルシュタットでさえも・・・。


 「やめろっ、ちくしょおおおおおおっ!!」

 「あさおあgっふぁckっ!!」

下半身を土壁に飲み込まれて逃げ出すことも出来ないカイゼルシュタットに、

わずか1メートル前後のカラダしかない血だらけの肉塊がすり寄っていく・・・!


 「くるなぁあ! くるんじゃねええええええっ!!」


 「そうそう、そこじゃ、出血してる部分同士をくっつけるのじゃぞ?

 ほれ、【融合】。」



 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアっ!!」

耳を塞ぎくなる絶叫・・・、

いや、目でだって直視できる光景じゃない!!


 「あうああ、あなんだこれぇっ! なんだこれぇっ!?

 入ってくるぅ! 気持ちの悪いもんがオレのカラダにぃぃっ!?」

カイゼルシュタットの声がひっくり返る!


なっ、なんだ、ありゃ!?

カイゼルシュタットの左腕が再生したっ!?

いや、違う!

左腕がさっきのあの化け物そのものになっちまってるんだ!!

今や、カイゼルシュタットの左腕に相当するところには、

二つの顔がそのまま、そして変わらず二本の男根がぶらぶら揺れているのだ。


 「今のお主は、カラダのほとんどが残っておるからの、

 まだ普通に喋れるじゃろ?

 ただ、そのうち発狂し始めるかもしれんからな、

 今のうちに喋りたいことがあるなら仲間に喋っておくんじゃな?」


ランス使いとミランダさんは、その光景を僕らよりも間近に見て、

恐怖と嫌悪で顔を引き攣らせている。

自分たちの大怪我よりも恐ろしい出来事が目の前で起きているのだ。

誰だってそうなるだろう。


 「おお! そうじゃ、いいことを思い付いたぞ!?」

嬉しそうに顔を輝かせる妖精アルラ。

まだ何かあるっていうのか!?


 「さっき女は要らんと言ったんじゃがな・・・。」


えっ!?


 「理屈では女にも栄養は十分備わっておる筈なのじゃ、

 ただ、それをワシが吸い尽くす手段がない。

 死体を地面に埋めればある程度は吸えるのじゃが、地中だと栄養が分散してしまい、効率が悪い・・・。」


何を言ってるんだ、この妖精!?


 「そこでじゃ・・・。」

妖精アルラは邪悪な笑みを浮かべる・・・。


 「ここにいいる女どもを男と融合させて、その男から栄養を吸えば!

 一体から二人分の栄養を吸い取れるってことじゃのう!!

 クッカッカッカッカ! ワシって天才かぁ!?」



 「ヒィィッ!?」

今の悲鳴は誰だっ!?

ミコノか!?

いや、もう誰だっていい。

オルベもミストレイもライザだって、僕の背中に我先にと競うように隠れるようとしている。

もちろん、気持ちはわかるさ。

あんな化け物になってまで生き永らえたって、その後いつまで正気を保っていられるというのか?

ガクガクと彼女たちが震えているのも当たり前の反応だ。


一度僕は彼女達を振り返る。

 「大丈夫、心配いらない、僕が君らを護る!」


そう口だけでも虚勢を張ろうと思った。

・・・だが、その時僕が見たのは・・・彼女達の有り得ない反応だったのだ・・・。



次回、絶体絶命のアレン達の前に・・・


「ヒロインは遅れてやってくるもんだよなって話」



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