表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/748

第百二十五話 ありのままに起こったことを話すの


 「えっと、・・・なにがどうなってこうなったのかしら?」

私の名はメリー、

今少しだけ「?」マークを頭の周りに浮かべているの。


 「昨日はすまねーな、お人形さんよ、

 オレァ、オーガバスターズのカイゼルシュタット!

 一緒にクソ妖精、やっつけに行こうぜぇ!?」


昨日だけのかませじゃなかったのか、このスキンヘッド。

これ物語を読んでいる人は彼を覚えているの?

 「アレン、・・・私は説明を求めているのだけど?」


昨日のカンジでは、アレンの方が彼らをうまくあしらっていた筈だ。

弱みを握られている風でも、単純に脅かされれているわけでもなさそうなのに。


 「あ、ああ、すまないね、

 理由はいくつかあって、まずは戦力的な問題、

 僕らとメリーさんだけのパーティーだと、僕に敵の攻撃が集中しそうでね、

 もちろん、普段ならその大役をこなすのに何の問題もないけど、

 高い魔力を持った妖精種が相手だと、僧侶ミコノの防御呪文でも厳しいものがありそうだったんでね、

 前衛メインのオーガバスターズが参入することで、敵の攻撃を分散できるかとね。」


 「それは理解したわ。

 他の理由は?」


 「もう一つは・・・心情的な問題というか・・・僕がしゃべっていいのかい?」

そこでアレンはスキンヘッドのカイゼルシュタットに視線を送る。


 「・・・構わねぇ。」

 「そうか、彼ら『オーガバスターズ』には先輩にあたるパーティーがあってね、

 『オーガブレイカーズ』というのだけど、

 先月、幻惑の森付近の依頼を受けたが、そこに向かったまま帰らぬ身となった・・・。」


・・・そういうことか。


 「復讐?」

 「ん? いや、そんな気持ちはさらさらねぇ、

 だがこいつはけじめって奴だな、

 オレたちの世話になった人たちを殺されて、同じ冒険者のオレたちが、平気な面でのほほんと活動できるかよっ!?

 だがオレたちはランクCだ・・・。

 その妖精種の討伐に向かう資格はねぇ・・・。

 まぁ、だからこそ、ここでBランク以上の誰かがその依頼を受けることはねぇか張ってたんだけどよ、

 アレンがこれを受けるってぇなら、胸糞わりぃが利用させてもらう。

 金は要らねえ、

 盾役にでもなんでもしろ。

 だが、その妖精に一撃でも入れてやらねぇと、先輩たちに顔向けできねぇ・・・!

 てわけでよろしく頼む・・・。」



 

 えっと・・・。


 


私の名はメリー、

いま、ありのままに起こったことを話すわ。


妖精種討伐に手頃なパーティーを利用させてもらおうと思ったら、噛ませ犬までくっついてきた。


何を言ってるんだかわからないでしょうけど、何か得体の知れない恐ろしいものの片鱗を味わったわ。

ひとまず「足手まといは要らない」と言おうと思ったのだけど、

私にとって、彼らスキンヘッドの一団は何の義理もしがらみもない。

加えて言うならば、彼らの目的は彼ら自身の都合であり、私が恩を感じることさえない。


そういう意味であるなら、無理やりにでも同行させなかった「銀の閃光」や「苛烈なる戦乙女」の状況とは似て非なる。

彼らが妖精種の前に全滅したところで自業自得。


さらに言うと、この足手まといさん達を連れて行かないと、アレン達「栄光の剣」は依頼を受けないというから、始末に困る。


 「アレン、彼らは役に立つの?」

正直、妖精種相手に活躍しそうな構成には見えない。

だって全員、前衛職にしか見えないのだもの。

リーダーはバトルアックス、盾役がショートランス、もう一人が棍棒使い、さらには手甲だけの格闘家という有様だ。


 「メリーさんの疑問はもっともだと思うよ、

 彼らはそのパーティー名が示す通り、物理系の魔物たちを、真正面から戦技だけで打ち破って来たイケイケタイプチームだ。

 硬いモノ相手には抜群の相性なんだけど、魔法系の相手には正直分が悪いと思う。」


なるほど、それでCランクか。

ランクだけで見ればテラシア率いる「苛烈なる戦乙女」よりも上。

昨日はテラシアに一本取られたけど、パーティー戦ならそれなりに連携もとれるのかもしれない。


 「それでもアレンは彼らが参加するメリットを感じているのね?」

 「ああ、少々情けない理由に聞こえるかもしれないが、彼ら自身が盾でも囮でも使ってくれというんでね、

 彼らを守る必要がないなら、僕は思う存分動ける。」


 「相手が魔法系の魔物でも盾代わりに使えるというの?」

 「言っておくけど、彼らもCランクにまで登って来ただけあってね、

 斬る、叩く、殴るだけじゃないんだ、

 そこは僕も評価しているところでね。」


 「最後は私が美味しいところを持っていくことになると思うけど、それも異論はないのね?

 まぁ、別に獲物を横取りされても、私は妖精種の魔石を手に入れられればそれで構わないのだけど。」



そこでカイゼルシュタットが口を開いた。

 「戦いに参加できるだけでありがてぇ、

 だが、止めを刺させてくれるっつうんなら、土下座してでもお願いしてぇくらいだ。」

 「それは多分、無理。

 一度戦闘に突入したら、私は自分の行動をコントロールできなくなる。

 それこそ自動で敵を殲滅するゴーレム同様に動くわよ?

 対象相手に会話くらいはできるけど、それも交渉ではなく一方的に相手を断罪するための行動。

 それを邪魔された場合、私の鎌は敵味方を区別できなくなるかもしれない。」


後ろで「こいつやべぇ」とか「関わらねぇほうがよくね?」とか言っているけど、本来その通りなのだ。

闇に生まれたこの人形メリーに、生身の人間が関わってろくなことなど何もない。


最終的にカイゼルシュタットは私の話を受け入れた。

アレンも両者が合意できるのなら何も異論はないようだ。

強いて言えば「栄光の剣」のハイエルフ、ミストレイが確認したいことがあると私に話を振って来た。


 「メリーさん?

 一つだけ聞きたいんだ、

 もし妖精種があたし達の手に負えないほどの強さだったなら、

 ・・・あたし達があなたを置いて逃げ出すとしたら?」


なるほど、負ける時の想定ね、

というよりも、この私を仲間として扱うべきか、ただの道具として扱うべきか決めかねていたのだろう。


もちろん答えは決まっている。

 「気遣いは不要、

 私はあなた達を利用するだけ。

 あなた達がどうであろうと、私は私の行動原理のまま、

 敵わないと思ったら私を捨ててくれて構わないのよ?」


 「・・・そう。」

そこでミストレイは何とも言えないような表情をした。


少しだけ残念そうな・・・物悲しい感情が流れ込んできた。

優しい子のようね、

他の子たちはまだ警戒心が強いみたい。

もちろん、私に何の不満もない。


目的が果たせればそれで良いのだから。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ