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第百二十四話 新しいパーティーに入れてもらうの

ストライドたちとはこれでお別れです。

でも、イベント終わるまでには、もう一度出番を用意するつもりです。


そんなこんなで次の朝、

私メリーはフードで顔を隠したまま、一晩ギルド内で夜を明かした。

今や気楽な独り身だ。

別に睡眠する必要もないので、食堂の隅の、誰にも邪魔にならないようなところで、身動きもせずにカラダを休めるだけ。


辺りを見ると、理由は様々なのだろうけど、私と同じように、静かにこの食堂で夜を明かす冒険者もいるようだ。

見すぼらしい冒険者が多い。

これは単に宿に泊まるお金がないだけなのだろうか?


すっぽりフードを被った私の足元は、

冒険者には場違いなヒールと、網タイツ姿の細い足が覗いている。

それだけで私を女性と判断し、ちょっかいをかけてこようという愚か者もいるかもしれない。

そこで私はテーブルの上に、左手を無造作に投げ出している。


誰もが一目で作り物の腕だと認識できるだろう。

まぁいきなりそれで私が人形だとは思わないだろうが、

少なくとも左腕を欠損したか何かで、義手のようなものをくっつけているとは想像できるはずだ。


そんな状態の女性が、フードで顔を隠して一人、夜を冒険者ギルドで明かすなんて、

どう考えたってまっとうな女性である訳がない。

何人かが私に視線を向けてはいたが、私に声をかける勇者は、結局その晩、誰もいなかった。




そして朝。

陽が高くなると共に、新しい依頼目当ての冒険者たちが、ギルドのドアを開けてあっという間に大混雑となる。

依頼の受付カウンターも長蛇の列だ。


私はフードを被ったまま、一人の男性がそこに現れるのを待っていた。

勿論、それはたった一人ではなく、何人かの集団の中の一人なのだろう。

キラキラオーラを振りまく彼を見つけるのに時間はかからなかった。

私は混雑する人の波をすり抜け、彼のもとに向かう。

昨日と同じ姿の私に彼も気づいたようだ。


 「おや? もしかしてそこにいるのはメリーさんかい?」

 「ええ、おはようアレン、あなたを待っていたの。」


「栄光の剣」アレンの後ろには彼と同じパーティーであろう仲間が・・・

あら?


 「僕を待っててくれたって?

 それは光栄だなぁ、じゃあ場所を変えて僕のパーティーを紹介させてもらおうかな?」

 「・・・ええ、それはこちらからお願いしたいのだけど、

 後ろの女性、みんなアレンのパーティーなの?」



まさか、アレン以外全員女性だとは思わなかった。

なに、このハーレム野郎・・・。



 「ふふ、僕らは5人パーティーさ、

 前衛はアタッカー及びタンク役の僕、

 そしてもう一人、スカウト役の狐獣人オルベ、

 魔術士のダークエルフ、ライザ、

 僧侶のミコノ、

 そしてハイエルフの弓使いミストレイだ。」


 「ンヤハハハ、オルベだよ、よろしくね?」

 「闇魔法、得意・・・ライザ。」

 「ミコノ、と申します、よろしくお願いいたします。」

 「ミストレイだよー? よろしくぅ!!」


なんか、今までになくテンプレ通りのパーティーに出くわしたかもしれない・・・。

ショートパンツとは言え露出度半端ない狐獣人に、

俯き加減で気味の悪い笑顔を張り付けているダークエルフ、

どっちかというと僧侶より一国のお姫様みたいなお嬢様、

そしていかにもエルフチックな弓使いか・・・。

でもBランクなのよね?


それに昨夜バレッサは、妖精種相手には僧侶が絶対に必要と言っていた。

ならば条件は全てクリアしていると言っていい。

後は彼らを説得できるかだ。



 「それでメリーさん、改まって話って?」

 「単刀直入に言うわ。

 私と一緒にあるクエストを受けて欲しい。

 報奨金は私は一切要らない。

 私の目的はマルゴット女王に謁見する事。

 これは昨日も話した通り。

 私が必要としているのはあなた達のランクBという肩書。」


 「なるほど、さてはグリフィス公国直々の依頼に目をつけたってわけか、

 昨日のパーティーではその依頼をうける事ができないわけだね?」


 「ええ、昨日あなたに会えたことで話が早くて幸運だったわ、

 彼らでは今度の相手は危険が大きい。」


 「そこでBランクの僕らに目を付けたと。

 ・・・依頼は何だい?

 それと、僕らのパーティーの一員として参加するなら・・・

 君のことも知らないと受けるわけにはいけないね?」


 「当然の要求ね、

 まず依頼の方は、バラナ高原の幻惑の森に住まう妖精種の討伐、

 Aランククエストよ?」


 「うぉっと!?

 Aランクか! 確かに僕らはAランククエストの受注資格を持っているが、

 かなりのリスクがあるね!!」


そこでアレンは自分たちのパーティー仲間に視線を送る。

その上でもう一度私に向き直った。

 「これは即答できかねる案件だ、

 一度メンバーだけで検討させてもらうけど?」

 「構わないわ?

 ただ、急いでいるわけではないけども、次の目的が控えているので、あまり時間を取りたくはない。

 あなた達が受けられないなら次のパーティを探すつもりよ。」


 「合理的な考えを持っているんだね、

 では一度お別れする前に、君のことを出来るだけ聞いてみたい。

 君自身のプロフィール、戦闘能力、そしてマルゴット女王に会いたいという目的、をね。」



そこで私はフードを外す。

聞こえてきたのはほぼ全員の驚愕の声。

 「私の名はメリー、ご覧の通り、人形に転生を果たした女・・・。

 昨日、アレンに喋った呪われているという言葉は、半分正しく、半分不正確。

 普段は非力な女性と大して変わらない。

 けれど、恨みに身を焦がし死んでいった哀れな魂を見つけると、

 その恨みの対象者を斬り刻むまで、この人形は動きを止めない。

 そう、自動殺戮人形と思って頂ければいいわ。」



彼らが私を見る目は一様に驚いてはいるのだけど、

怯える者、腰を抜かしそうになる者、反応は様々・・・

・・・ダークエルフのライザだけ嬉しそうな表情ね、

それはそれでどうかと思う。


さて、パーティーリーダー、アレンの反応は?

 「・・・驚いた、

 君がフードを被っていた理由はそれか、

 戦力として期待していいんだね?」

 「参考になるかはわからないけど、

 ハーケルンでは一晩で40匹以上のブリンは私一人で斬り伏せたわ、

 ゴブリンメイジとホブゴブリン含めて。」


実際何匹討伐したかしら?

サブギルドマスターのアルデヒトに教えてもらったような気がするけど忘れちゃったわ。


他の冒険者たちの目に留まる面倒を避けるために、私は再びフードを被る。

 「・・・凄まじいね、

 ちなみに昨日、君と一緒にいたパーティーは?」

 「あのお人好したちとは別れたわ・・・。

 黙っていたら、私について妖精種を討伐についてきかねない勢いだったけど、

 Dランクの彼らには危険すぎる。」


 「・・・そうか。

 あと、それでマルゴット女王の方は・・・。」

 「別に彼女そのものに興味があるわけではない。

 知りたいのは異世界からやってきたカラドックの方。

 わたしはここで手順よく情報を得たいだけなの。

 だから妖精種の討伐も、私にとっては必須のクエストという訳でもない。」


私も異世界からやってきたという話は不要だろう。

喋っていい気もするが、カラドックを知っている人間に、

こんな凶悪な鎌を持ち歩いている人形が、後から追ってきているというシチュエーションはあまり絵的によろしくない気がする。


 「よくわかったよ、

 それならお昼までに答えを出させてもらうよ。

 それでいいかな?」

 「ええ、期待しているわ・・・。」


そしてアレンは席を立った。

さて、彼らはこの依頼を受けてくれるだろうか?

もしダメだったら、自分一人で行くべきか。

それこそ、このイベントを完全に無視し、いきなり女王の元に向かうという選択肢もあるのだけど・・・。

 


<視点変更>


 「ンヤハハハ、胡散臭いよ、あの人形、

 オルベはやめた方がいいと思うな~?」

 「・・・動く人形・・・不思議・・・解体したい。」

 「ライザは黙っていてください、

 ただ、アレン様、私たちがAランク昇格を目指すのであれば、

 このクエストはランクアップの貢献度が高いと思われます。」

僧侶のミコノの言葉にアレンは頷く。


 「ミストレイは?」

 「正直、怖いね、いろんな意味で。

 若干、戦力不足な気がしないでもない。」


 「ふむ、なんだかんだでメリーさんの戦い方が把握できないしなぁ、

 この依頼・・・。」



アレンは軽薄そうに見えて、しっかり物事を考えるタイプだ。

女性に甘い顔を見せてはいるが、その優先度は自分の身内を重要視する。

ならば、今回の誘いを受けるわけには・・・、


と言った結論を出そうとする寸前で、

彼らの決定に水を差す者が現れたのである。



 「まさか『栄光の剣』のアレン様が、さっきの依頼を怖気づいて受けねぇってんじゃねぇだろうなぁ!?」



 「きみは・・・Cランクパーティー『オーガバスターズ』の・・・。」



 


次回「ありのままに起こったことを・・・」


栄光の剣チームは、ケイジのパーティーと構成が似てますね。

特にエルフ勢。

ん? どっかで聞いたような名前があるって?


今度の妖精種、設定とストーリーは進んでるんだけど、戦闘描写をどうするか・・・

それが一番悩ましい・・・。

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