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第百二十三話 みんなとお別れするの

<メリー視点>


さて・・・ギルドマスターとの話を終えた私に、今晩これ以上ここで何かするつもりもない。

その気になれば、今から単独で妖精種の討伐に向かっても構わないとは思っている。

私にとって冒険者資格など、人間社会と関わるうえで、あれば便利なもの程度の認識だ。

だが、ここまで来て焦ることもないのも確かな話。

よくあるゲームの話ではないが、一つのクエストをクリアするのにいくつかのイベントをクリアせねばならないというのなら、それに従うのも一興か。

ならば、今晩は活動を終了し、人間社会の明日に付き合うまでだろう。


・・・それと共に、私は一つの義理を果たそうと思う。

 「テラシア、ストライド・・・。」

名前を呼んだのは二人だが、

私はその場にいる全員に視線を合わせる。

みんな、何事かと言った目をしている。

もしかして私がこれから話すことが何なのか、みんな想像がつかないのだろうか?

それとも見当違いの想像をしているのだろうか。


 「・・・いままで本当にありがとう。

 ハーケルンへの帰り道を気を付けてね・・・。」



途端に彼らの形相が変わった。

本当に今の私のセリフが意外だったのか。

テラシアすらも狼狽えているようだ。

そして案の定、真っ先に私に抗議の声をあげたのはストライド。


 「メ、メリーさん!

 いまのセリフはどういう事だよ!?」

 「ギルドマスターの話を聞いていなかったの?

 冒険者のあなた達では、さっきの話の妖精種を討伐には行けない。」


 「いやいやいや!

 それはわかりきってるよ!!

 だから、これからオレたちが話し合うのは、さっきメリーさんも言った『抜け道』の事だよな?」



やっぱり見当違いの考えをしていたわけね。

こんな気味の悪い人形に付き合ってくれるというのだから、その気持ちは本当にありがたい。

私が元の人間のままだったなら、下心もあるのだろうと下卑た考えも浮かぶのだけど、

この人形の身に期待する者など誰もいない。

だからこそ感謝したい。

先程のありがとうは社交辞令ではなく本心だ。


そして今の私には言葉以外にそれを表現する術を持たない。

・・・こうすればよいのだろうか?

私はストライドの両手をそっと掴む。

 「えっ・・・? 

 メ、メリーさん?」

 「・・・ごめんなさい?

 人形の私に掴まれて怖い? それとも不快?」


 「いいいい、いやいやいや、いきなりだったんでびっくりしたけどさ!

 不快でも怖くもねーよ、ていうか、いきなりなんだよ!?」

 「人形の私ができる感謝のしるし・・・、

 なんならそのまま私を抱きしめても斬り殺さないわよ?

 人形を抱いて喜ぶ趣味があればだけど。」

 「またなんでそういうこと言うかな、メリーさんは・・・。

 ていうか、いまオレたちが聞きてーのは・・・。」


 「『抜け道』の話ならあなた達には関係ないわよ、

 あなた達が思い知らなければならないのは、何よりも自分たちの命。

 冒険者ランクに関係なく、私にはその妖精種に向かう力がある。

 ・・・でもあなた達は違う。

 冒険者ギルドにAランクと設定された魔物に、

 あなた達が立ち向かえるだけの実力があるの?」


 「うっ、そ、それは・・・。」

 「テラシアも不満そうね・・・。」


 「当たり前だ! 相手がAランクだろうとあたしなら・・・!」

 「そうね、もしかしたらテラシアなら相手になるかもしれないわね、

 ・・・でもあなたのパーティーのみんなはどうなの?」


 「くっ・・・。」

そこでテラシアは自らの仲間を見回す。

そう、テラシアの「苛烈なる戦乙女」も魔物相手にそれなりに戦闘を重ねてきたパーティーだ。

だが、そのスタイルはテラシアを最前線に置いて、周りの女性たちはそれを後方から援護するスタイル。

タンク役の盾持ちもいるが、いずれにせよ、最近までEランクだったように、

これまでの彼女達の討伐していたのはゴブリン、コボルト、ジャイアントスパイダーなど、

E~Dランクまでの魔物ばかりだという。

人間並みの知能を持った相手や、広範囲魔法を持つ相手など戦ったことすらないのだ。

そしてそれを理解しているのは、何よりも・・・


 「あ、あたしも反対です、テラシアさん!!」

エルフの魔法使いバレッサ。


 「バレッサ、・・・お前。」

 「す、すいません、テラシアさん、でも今回はメリーさんの言う通りですっ。

 生まれたばかりの妖精種ならともかく、いくつものパーティーを壊滅させた妖精種なら、

 その知能も魔力もハイエルフやダークエルフをも上回っている筈です!!

 広範囲殲滅魔法は言うに及ばず、魔物独自のユニークスキルすら持っている可能性もあります!

 そんな魔物相手にDランクパーティーがいくら立ち向かっても自殺行為に過ぎませんっ!!」


弓使いのゼフィが反論する。

 「な、何言ってるのさ、バレッサ、

 あんただって、ハイエルフやダークエルフに負けない魔術士になりたいって言ってたろ?

 それがそんな弱気で・・・。」

 「違います!!

 そういうことじゃないんです!!

 敵が魔法を使ってくるんなら、こっちには絶対に僧侶が必要なんです!!

 あたしたちのパーティーにも、ストライドさんのパーティーにも僧侶はいません!

 そりゃ、あたしの術で妖精を攻撃するのは可能です!

 でも、あたしの術じゃ、妖精種の魔法をみんなから守ることができないんですよっ!」

なるほど、それも確かなことなのでしょうね。



 「でも・・・だけどオレたちは・・・!」

私の手を放してストライドは悔しそうに呻く・・・。

こういう時、空気を読めるのよね、彼は。


 「今のあなた達は商人の護衛任務真っ最中のはずよ?

 迂闊な真似をしてその任務の障害となるようなことをするのは厳禁。

 ・・・私の事なら安心して?

 敵わないと思ったら死んだフリもできるのだから。」


実際、勝ち目がない相手というのが想像つかない。

相手がドラゴンとかゴーレムとか、いわゆるこのメリーの処刑対象になり得ない魔物ならどうにもならないが、

処刑対象になり得る相手なら、どんな敵だろうと切り伏せられる気がする。

この人形の記憶に、

大勢の男たちにマシンガンで人形のカラダを穴だらけにされた映像が残っているが、

それでも目的を達して、標的を切り裂いた過去がある。


人形に魂を移し感情を失っていたにもかかわらず、

自らの一人娘を守り抜いた、

この人形の前の住人の物語はそこで幕を閉じた・・・。



この世界の魔法で言うと・・・、

いえ、銃弾より速く放てる魔法なんかないわね・・・。

それにこの世界に来て、私はまだその目的にさえ近づいていない。

ならばこんな所で足を止めているわけにもいかないのだ。


 「じゃ、じゃあメリーさん、どうするんだよ!?

 冒険者資格を失ってでも・・・!?」


 「私にはもともと、そんなもの不要よ?

 でも、今は形式に則ったままでいいわ?

 使える手段は何でも使う。

 まずは明日、私は目的のパーティーに近づく。」







 

二代目メリーさんの物語の結末は・・・未完成です。

途中まではどこかの媒体で見れるかもしれませんが。


モチベーションも尽きているというより、書きたくないと言った方が正確かもしれません。



あと、最後のメリーさんの話の補足で、

光系呪文、雷系呪文なら、弾丸より速いのですが、

呪文の詠唱などを計算に入れると銃の攻撃の方が速いですね。

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