第百二十二話 ギルマスとの交渉
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「異世界からやってきた意志あるゴーレム・・・メリー、か。
長らくギルドマスターなんてやってきたが、初めて見るよ・・・。」
「あなたがこのギルドのマスター、ヴァルトバイス様ね?
はじめまして、私の名はメリー。」
「ああ、よろしくな、
・・・本当に喋ってるんだな、腹話術でもないわけか・・・。」
「私の生態に疑問を持つのも自由だけど、
あまり時間を取りたくないの。
ハーケルンのギルドマスター、キャスリオンからの手紙は読んでもらえたかしら?」
「・・・正直信じがたい部分もあるのだが・・・内容は理解したよ。
それで・・・君と同じ転移者、カラドックの事を聞きたいと?
生憎だが、冒険者の情報は・・・。」
「いえ、知りたいのは彼の情報でなく、彼を取り巻く状況かしら?
この国のマルゴット女王は何のために彼を召喚し、彼に何の使命を与えたの?」
そこでヴァルトバイスは深いため息をつく。
「それを知ってどうする?」
「自分がこの世界に送り込まれた意味を知りたいの。
それがそんなに不思議なこと?」
「・・・そうか。」
しばらく考え込むかのようにギルドマスターは視線を逸らす。
「あらかじめ断っておくが、
オレたち冒険者ギルドは、如何なる権力からも独立した機関だが、実際、マルゴット女王の統治は民衆にも評判がいいし、オレらも不満はない。
オレらは持ちつ持たれつでこの良好な関係を続けていきたい。」
「女王とやらがこの国をうまく治めているというなら当然ね、それで?」
「メリー、君がマルゴット女王やカラドックの力になってくれるというなら、勿論私も全面的に協力したいと思う。
だがもし君が・・・。」
「なるほど、私の存在が彼らにとって害悪なら、私を近づかせるのは危険と判断するわけね?」
「理解が早くて助かる・・・。」
「私の称号は見たんでしょう?
私の死神の鎌は、他人から恨みを買うような重犯罪者にしか反応しない。
女王やカラドックが、人に言えないような殺人を犯すか指示するような人間でなければ私の敵になることはないわ。」
「そういうことを冗談でも言うのはやめてくれ、
だが正直、このオレでも今回の話は何も知らないんだ。
カラドックのBランク昇格の時はオレも立ち会ったし、奴とは会話もしたが、
向こうから聞かれたのはAランクパーティー『蒼い狼』の消息だけで、
彼自身のことやマルゴット女王の話は一切していないんだ。」
「極秘事項なのかしらね?
ギルドマスターの方からカラドックに質問とかはしなかったの?」
「カラドックにも転移者の称号はついていたしな、
向こうの世界の話は質問したし、答えてもらったけど世間話の域を越えなかったぞ。」
「そう、やはり、マルゴット女王に直接会う方法を考えた方がいいみたいね。」
「その方が確実だろうな、
おっと、これは役に立つ情報かどうかわからないが・・・。」
「・・・教えてくれるかしら?」
「オレがカラドックに、この世界で魔王でも倒すのか聞いてみたら、何とも言えないような苦笑いを浮かべてこう答えたな・・・。」
「へぇ・・・、彼はなんと?」
「向こうの世界でのわだかまりが・・・この世界で解決するかもしれないと・・・。」
メリーの人形の瞳が見開かれる。
「意味が分からない・・・
私たちの世界と無関係なこの世界に起きることに何の繋がりが・・・。」
「そうだよな、オレもそう思う。
ここから先はオレの感想なんだが聞くか?」
「ええ、ぜひ。」
「感想と言っても、多分オレ以外でも、奴らの顔を知ってる人間は、多分同じことを言うだろう。
カラドックという男、異世界からやって来たのに、この国の公家の連中と、やけに顔の特徴が似てるんだ。
それこそマルゴット女王の弟か親族とか紹介されても、誰も違和感を覚えないぐらいにな。
しかもマルゴット女王と同じ精霊術を使うという。
召喚にしろ転移にしろ、何かの意図があるんじゃないかとね。」
今度はメリーの方が黙りこくってしまった。
メリー自身、今の情報を聞き飛ばすことができなかったのだ。
まず何よりも・・・
(明らかに・・・私の時と同じ存在によって彼はこの世界に送り込まれた・・・!
私に送られたメッセージには、「私の知りたかった真実」が明らかになるという。
カラドックのという男の、元の世界でのわだかまり?
それが異世界で解決する?
普通に考えて有り得ない。
だけど、それが実現するかどうかは別として、
私の場合もカラドックの場合も、あまりにも目的の内容が抽象的過ぎる・・・。)
「参考にはなったか?」
「ええ、有意義だったわ、ありがとう。」
「それと、女王に謁見する方法だがな。」
「何かアイデアが?」
「オレが思い付く話なら・・・
正攻法で『動く人形』をアピールで高名な商人にでも売り込んでもらう方法か・・・、
ただ、手続きに時間かかるだろうな。」
「他の手段は?」
「お前がオレに会う方法と一緒さ、
その為に嫌でも目立つ手段でクエストを解決したんだろ?
いま、グリフィス公国直々の依頼が保留状態で残っている。
もともとカラドックにクリアさせるつもりで依頼を出したんだろうがな、
あいつがBランク昇格と共に、この街に残る理由がなくなったからな、
その依頼は、この街の北西にあるバラナ高原に幻惑の森というところがある。
そこに住む妖精種の討伐。
既にいくつかパーティーが向かったが全て返り討ちに遭っている。
クエストランクはAになる。
恐らくその妖精の魔石は国宝クラスになるだろう。
マルゴット女王が欲しがらないわけもない。
依頼達成報告と共に冒険者が直々に女王に献上したいと言えば、お目通りは可能だと思う。」
「・・・前者の方法は避けたいわね・・・。
時間もかかるし、商人さんに伝手はあるけども彼らに迷惑がかかりそう・・・。」
「宮廷で何かやらかす前提かい・・・。
ちなみに後者は・・・?」
「妖精種の討伐?
その妖精は自分のテリトリーに入り込んだ冒険者を迎え討っているだけ?
なら私の処刑相手として成立しないわ?」
「薬草や獣を狩りに来た一般人も虐殺するような妖精だとしてもか?」
そこでメリーの瞳がギョロリと動く。
「残虐なの?」
「人間を生きながら拷問しているらしい。
死ぬまでじわじわ甚振るような性分なんだとか。
なんとか逃げ帰ってきた複数の民間人の証言がある。」
「・・・確か妖精種は人間同様の高い知能があるのよね?
それなら間違いなく私は動けるわ?」
「その妖精のテリトリーに入らなければ無害・・・なんだが、
幻惑の森の名が示すように、その森を避けて歩くつもりでも、いつの間にかそこに迷い込んでしまう特性があるらしくてな、
さすがに都の近くにそんな物騒な森があるのも放置できんし・・・、
だが、その妖精を討伐するつもりなら、メリー、君の場合、一つ問題が。」
「問題? 何かしら?」
「君は現在、Dランクだろう。
冒険者として討伐任務を与えるわけにはいかない。
今言ったように、この妖精種の討伐はAランクだ。
君の後ろにいるのはトライバルのハーケルンの冒険者だね?
彼女達も同じくDランクだったな、
この妖精種の討伐に向かう資格を備えるのはBランクに昇格してからだ。
おっと、先に言っておくぞ?
我ら、冒険者ギルドに何の断りもなく、勝手にAランククエストに向かうのは物理的には可能だ。
だが、それで依頼を達成しても、報奨金も何も出ないし、例え生きて帰ったとしても、そのパーティーの冒険者資格は剥奪される。
この街だけではない。
彼女たちがハーケルンに戻ろうが、誰も彼女たちを知らない他の街にいっても、ギルド間で通達が回るので、二度と冒険者として活動できることはなくなってしまうんだ。
理解できるな?」
「・・・冒険者の命を守るための絶対的なルールね・・・。」
「そう言ってくれるとルールを課した側の人間としては嬉しいよ。
冒険者が命の危険を冒さないために作られたのが冒険者ギルドであり、そこにあるルールなんだ。
これはオレが冒険者時代から納得するルールであり、ギルドマスターとなった今も絶対に必要なルールだと思っている。」
「・・・でも、そのルールには、抜け穴もあるのよね?」
ギルドマスターはポリポリと頭を掻く。
もう頭髪は残念なことになってはいるが。
「・・・わかっているか、
だがそれ以上は、オレもどうすることも出来ない。
必要なら自分自身でなんとかするんだな・・・。」
「ありがとう、ギルドマスター、
貴重な話が聞けたわ・・・。」
「勝算はあるのか?」
「妖精種の方は見てみないことには何とも・・・。
もう一つの方も交渉次第ね・・・。」
とゆーわけで、次の相手は妖精さんです!!
いよいよ、メリーさんパートも異世界っぽくなってきました。
ああ、下書きのストックが・・・