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第百二十一話 一夜明けて・・・

ぶっくまありがとうございます!!


<第三者視点>


翌朝・・・、

冒険者ギルドでは、早朝に依頼ボードに新規のクエスト依頼が貼り出される。

横幅が数メートルもある、何百件、いや4桁に及ぶ依頼票を貼り出せそうな、とてつもなく大きい依頼ボードだ。

それが一斉に更新されるのだ。

冒険者の人口が多いのもこの時間帯となるだろう。

当然、ボード前、及び受付カウンターは長蛇の列となる。


一方、新規登録や転職手続き、依頼達成報告カウンターはそんなに賑わっているわけでもない。

そこへフードで顔を隠した「彼女」が一人歩いてくる・・・。

薄汚れた長いフード付きの外套の裾から、

黒いヒールと網タイツが覗いている。

外套はともかく、足元のそれは依頼をこなす冒険者の格好ではない。

また、その左手には、異様に長く巨大な得物が握られており、そのあまりにも大きな先端は、

粗目の麻布でぐるぐる巻きにされていた・・・。

大斧だろうか?

それとも魔道具の一種だろうか?

女性冒険者の中でも、斧や大剣を振るう重戦士タイプも時折いないではないが、

当然それらを振るうためには、必要な骨格と筋力というものがある。

となれば、あまりにもか細い足のシルエットから判断するに、「彼女」は魔術士系のジョブなのだろうか?




よく見ると、その後ろに何人かの連れがいるようだ。

先頭の小柄な女性がパーティーのリーダーなのか?

最初は誰もがそんな印象を持ったのだろう。

だが、彼女の左手にぶら下げられているものを見て、誰もが衝撃で言葉を失っていた。


それはこれから彼女の対応をせねばならない職員も同様である。


 「・・・ごきげんよう、依頼達成報告はこちらで良かったかしら?」

 「あっ、えっ、えっ、そ、そうですけど、そそその・・・左手の・・・っ?」


まぁ、魔物の首をぶら下げて現れる冒険者はいても、

人間の生首をぶら下げる者はいないだろう。

山賊の討伐など例外もあるが、やはりいきなり生首ごと持って来る者はいない。

せめて人の目に触れないよう、カバーか何かで覆うのが一般的だ。


 「クエストランクE 歓楽街で行方不明になっていた娼婦を探す件、

 彼女達の遺体を発見、犯人は新たな犠牲者を生もうとしていたので、その場で処断したわ?

 そうそう、後ろに誘拐された女性を保護しているの。

 確認と後のフォローをお願いできるかしら?」


チーム「苛烈なる戦乙女」のゼフィが、保護した羊獣人のサーシャを伴って後ろから歩いてきた。

その羊獣人はげんなりした表情を浮かべていたが、怪我とかの心配はなさそうだ。

ちょっとだけ頬が腫れているけども。


 「っは? はいぃ?

 ちょ、ちょっとお待ちくださいねぇぇぇぇっ!?

 しゅにーん!! ギルマスは・・・っ!!

 すぐ呼んでくださいーい!!」


通常の依頼であれば、受付の女性で十分対応できたはずだ。

だが、今回は明らかに法で裁く犯罪の範疇で、しかも被疑者とは言え人間が死んでいる。

受付嬢一人で負える話ではなかったのだ。


にわかに冒険者ギルドは騒然となった。

すぐにメリーたちは聴取を受けつつ、

これまでのいきさつを・・・というところで、

当然、フードから人形の顔を覗かせた所でギルド内に受付嬢の叫び声が響く。


これ以上騒ぎにならないように、ストライドたちが控えていたのだが、

あまり役には立たなかった。

せめて最低限の説明を彼の口からしてもらう。

さすがにこの国のギルド総本部だけあって対応自体は素早かった。

依頼を出した自警団への連絡、そして彼らを伴って犯行現場の確認。

もちろん、現場には「銀の閃光」のサムソンとヒューズが待機していた。

自警団、冒険者ギルドともに、被害者のサーシャ及び、彼ら冒険者の証言に何の矛盾もない事、

及び被疑者の生い立ちなどを捜査するにあたって、犯人が売春婦に異様な憎しみを持っていたという情報を見つけることも出来た。

・・・なんでも彼が幼少のころ、母親がカラダを売って自分を育てていたことにトラウマがあったようだ。


時間は半日ほどかかったが、

まさに犯人が殺人を犯そうとするのを未然に防いだという事で、メリーたちへの詮議は終了となる。

・・・だが、「人形」である彼女への調べは別の話だ・・・。

連続殺人犯への聞き取りが終了した後、

互いに一度休憩を挟み、彼らは一度息をつく。


元々、交渉事は苦手なテラシアとても、今回のやり方には疑問を抱いたようだ。

もちろん正攻法でないことは、メリー自身当然のように自覚している。

 「やっぱ、あんまり真っ当な手段じゃなかったんじゃないか、メリー?」

 「そうでもないわ?

 ギルマス自ら相手してくれるのよ?

 話が早くなる。」


 「・・・もしかしてそこまで計算して?」

 「成り行き任せな部分があったことは否定しないわ?

 でも、一応これでも人間としての思考回路は正常に働いてるのよ?」

 




さて、こちらはこの冒険者ギルド本部のギルドマスター、

かつて大陸内で最も難関と言われたダンジョンを攻略した功績でSランクの資格を得るも、

年齢的な衰えには勝てず、最高峰の称号の恩恵を受けることなく引退し、このグリフィス公国のギルド職員に転職した男。

その名はヴァルトバイス。

剣士でありながらビーストテイマー職をも極め、ワイバーンすら使役した一人一軍に匹敵すると呼ばれた男である。

闘いでは優れたセンスを見せた彼だが、やはりギルドでは不慣れな職場という事で最初は苦労したようだが、数々の修羅場をくぐり抜けただけあって、着実に職員や冒険者の信頼を得て、ギルド総本部のギルドマスターに上り詰めた。

現在、御年54才。

恐らく、いま魔物と戦ってもかなりの戦果を残せるだろう。

短時間であれば。

もはや、長時間の連戦には体がついていかない。

それは本人も理解している。

今の彼のライフワークは、冒険者たちの成長である。

公私ともに多忙を極める彼だが、冒険者たちのプロフィールや活動履歴には並々ならぬ関心を見せる。

時には受付嬢たちに対し、今後このパーティーにはこういった依頼を勧めてみてはどうだとか、

冒険者たちの成長になりそうなミッションがあれば、ギルドの方で斡旋を行ったりとか、

積極的に冒険者の成長を手助けしてくれる良心的なギルドであった。


それを押しつけがましい、鬱陶しい、とギルドの手を払いのける若手冒険者もいるにはいるが、いろいろな理由があってそういう冒険者は長続きしない。

いきなり命を落とすまでは行かなくても、致命的な怪我を負って冒険者活動など二度と出来なくなるようなミスを犯す者は、やはりどこでも一定数でてくるものだ。

ベテラン冒険者ともなると、身を以てその辺りは理解できてくるようになるので、

このギルドの方針を否定する者は、誰もいなくなっていく。

それらの意味で、このグリフィス公国の冒険者ギルド総本部たる信頼と実績は盤石と言えよう。


ただ、ギルドマスターがちょっぴり女性にだらしがないとか、

面倒なことは部下に丸投げするくらいは許容範囲内・・・いや、そこは意見が分かれるところかもしれない。




次回、この地でのイベント発生。

果たして次なる敵は・・・。

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