第百二十話 情報収集するの
前回、タイトル入れ忘れてた・・・。
それと・・・大変申し訳ありません、
いつの間にかエルフのバレッサちゃんの名前がバネッサになってました。
見つけた限りは訂正しています。
ぶっくま、ありがとうございます!!
今回長めです。
私は・・・いえ、私たちはキラキラオーラを振りまく優男から話を聞くことにした。
エルフのバレッサが、
この街のBランク冒険者アレンにハーブティーを配る。
「ああ、ありがとう。」
お礼を述べながら、ニカッと白い歯を煌めかせて微笑むアレン。
・・・どこかでこんなシチュエーションあったかしらね?
私の記憶の中の何かが「突っ込め」とか、そんな事を主張してきそうな気がする。
テーブルには、私の他にテラシアとストライドがついた。
猫型獣人のジルは先程の喧騒のせいか、落ち着かずに辺りを警戒するようだ。
「あらためてさっきはありがとうな、
オレはストライド、ダリアンテ領のハーケルンというところから、商人たちの護衛としてこの街に滞在する。」
「ダリアンテ領か、この街どころか、よその国だったんだね、
それでホビットの君がリーダーなのかい?
ああ、気を悪くしたらごめんよ、
こっちのお姉さんの方が強そうなもんで・・・。」
テラシアが視線を動かす。
その通りなんでしょうけどね、彼女は人見知りするみたいだし。
あら、違うの?
すぐに視線でテラシアに抗議された。
もしかして心の中が読めるのかしら?
「ああ、その通りで間違いねーよ、
こっちのテラシアさんがオレらの中で『普段』は一番強い。
・・・ていうか、このテラシアさんは俺とは別のパーティーだ。
オレとこの猫型獣人のジルが同じパーティー、
テラシアさんと、そこの可愛いバレッサちゃんが同じパーティーだ。」
抜け目ないわね、ストライド、
さり気なく、バレッサにアタックするわけね。
ほら? 彼女も口を挟めないと判断したのか、汚いものでも見るかのようにストライドを睨んだわよ?
「ああ、なるほど、合同依頼というわけかい、
それにしても、うらやましいね、
魅力的な体躯の戦士と、かわいらしい魔法使いか、
うちにスカウトしたいくらいだよ。」
こっちも負けてないわねアレンとやら。
ただまぁ、この辺りは本気で口説くつもりもなく社交辞令の範囲だと思う。
あらあら、テラシアにバレッサも固まったままよ?
もしかしてあなた達、そういうのに慣れてないのかしら?
ああ、ここはあなた達のホームでないものね、
実力行使するわけにはいかないわね。
ただ、あまり時間を取りたくないのでこの辺りで私も参戦させてもらう。
もともと私の要望があっての会談なのだ。
「それでさっそくなのだけど・・・アレン・・・アレン様。」
私はフードのまま、口を開く。
「ハハ、アレンで結構だよ、冒険者同士で敬語も不要だし、
それより、君の名前と素顔も拝見したいな・・・。」
「わかったわ、
私の名前はメリー、
今紹介した、ストライドやテラシアのパーティーメンバーではないわ、
一人で旅をしているのだけど、たまたまハーケルンで彼らに会ったので、ここまでご一緒させてもらってるだけ。
・・・それと、顔を見せないのは勘弁してもらえるかしら。
呪われてるの。」
ブフッ!
ストライド、なにむせてるのよ?
まぁ、アレンとやらも意外だったみたいね。
目が見開かれてる。
「そ、そうか、それは失礼・・・。
残念だ・・・それで話というのは・・・?」
「ええ、先程、ジルが絡まれていた時、
精霊術士のカラドックの話をしていたわね?
私も旅すがら彼の噂を聞いて、どんな人なのか興味を持っていたのだけど、
アレンはカラドックという人に会ったことはあるの?」
そこで彼の顔は輝いた。
「そうか!
ふふふ、これは僕らの自慢になるのだけど、
僕らのパーティーは何度か彼と同じ依頼を受けてね!
その時の彼はDランクだったのだけど、その実力はAランク並みだと確信したよ!!
彼の魔力も術も判断力も凄まじいものだった!!」
へぇ、これはいきなり当たりを引いたようだ。
隣のストライドも話に加わる。
「そ、それでそのカラドックって男は、ホントに異世界人・・・なのか!?」
この辺りは冒険者ギルド発行のワールドワイドエクスプローラーニュースに載っているから、ストライドから質問しても違和感は全くない。
「・・・ああ、それは確かめる術はないんだろうけど、
ギルド発行の冒険者カードにも転移者って称号がついてるんだから、僕らには疑いようはないね。」
そして私は次の質問をする。
「この国の女王・・・マルゴット女王だったかしら?
彼女は何故・・・カラドックを召喚したの?」
そこでアレンの顔色が変わる。
私の質問に何かあったのだろうか?
彼は少し考えこむ・・・。
「アレン? 私何かまずいことを聞いたのかしら?」
そこで彼は両手をあげて「とんでもない」とジェスチャーする。
「あ、いやいや、
そうじゃなくて・・・ね、
その辺りははっきりしないんだ。」
「・・・?
どういうこと?」
「カラドック様から直接聞いたんだけども、
別に彼は女王に呼ばれたわけではないようなことを言ってたのさ。
ただ、女王に呼ばれたにせよ、そうでないにしろ、
根拠となるものが何もないらしく、ハッキリしたことは分からないって話だったんだよ。」
どういうことなのかしら?
転移者であることは隠してないのに、誰に呼ばれた事かは言明していない?
もしかして私と同じ何者かによってこの世界に送り込まれたならば、
そのまま正直に言えばいい事なのに・・・
そこで私は一つの可能性に気付く。
そうだ、カラドックは私の世界で世界最大の領地を持つ賢王と呼ばれていた・・・。
「何か政治的な理由・・・?」
それはアレンも同じ推測を持っていたのか、彼は低い声で唸った・・・。
「・・・そうだね、その可能性はあるかもしれない。
彼はこのギルド内においても特別な存在だった・・・。」
「というと?」
「彼への依頼はグリフィス公国からの発注がとても多かった。
カラドック様が僕らのパーティーに参加する以前は、宮殿の衛兵も討伐クエストに参加する程だったし。
彼はグリフィス公国にとって特別な存在であるのは誰の目にも明らかだった。」
「宮殿の兵隊に守られたおぼっちゃまという感じ?」
そこでアレンは激しく首を振る。
「いや、それはない。
カラドック様の魔物への戦い方は歴戦の強者のそれだ!
たんに宮殿の者達は、カラドック様にこの世界や冒険者たちの扱い方など、基本的なことを教えるだけの役割だった。
信じられるかい?
カラドック様は精霊術士として膨大な魔力と術を持っているのに、
僕ら冒険者の剣士にも遜色ない騎士としての剣技も持っているんだ。
味方への指示も的確だし、そこに迷いも躊躇もない。
あれはすぐにAランクにも到達できる人物だと思ったよ。」
べた褒めね・・・。
人並外れた魔力持ちに剣術・・・
なるほど・・・「あの男」の息子ならさもありなん・・・。
「カラドックはもうこの街にいないのかしら?」
「残念だけどね、彼はAランクパーティー『蒼い狼』というパーティーの元に向かったよ。」
「『蒼い狼』?」
あのオデムも言っていた名前ね・・・。
「ああ、狼獣人、兎獣人、そしてハイエルフとダークエルフの4人パーティーだそうだ。
どこか一つの国に所属することもなく、各地を回って、ドラゴンやら高難易度の依頼を解決するらしい。
噂なんだけどね、そのリーダーの狼獣人は『勇者』の称号まで持っているそうだ。」
後ろで猫型獣人のジルが反応した。
「えっ!? 獣人が勇者!?」
「はは、同じ獣人として気になるかい?
獣人と言ってもヒューマンとのハーフだそうだよ、
しかもどうやら・・・。」
そこでアレンは辺りを見回す。
人の耳や目が気になるという事か・・・。
「その狼獣人はマルゴット女王の血縁者らしいんだ・・・。」
これは・・・かなり核心的な情報とは言えないだろうか。
つまり・・・
「この国の女王に何かの事情があり、
カラドックはその勇者の称号を持つパーティーに出向いた・・・ということ。」
「そうなるね。」
私は考える。
カラドックが私と同じ異世界からの転移者だとして・・・
何の目的で彼は送りこまれた?
私には「私が知りたかった真実」という訳の分からない報酬が用意されているという。
普通に考えて有り得ない。
何故ならここは私の世界ではない。
言葉が通じる以外、何も共通点などこの世界にない。
しかし、この世界に、私の世界からもう一人送り込まれたというなら話は変わる。
しかもカラドックという人物は、私の過去の人生に多大な影響を与えた者の関係者だ。
とは言え期待できない部分もある。
何故ならカラドックは、私の時代の人間ではない。
はるか400年前の時代の者だ。
いくら賢王とはいえ、そんな人物に400年後の真実など手も出しようのない話だろう。
もちろん私にも、400年前の出来事に何か知りたかった事があるわけでもない。
何か隠された真実があるにしても、ああそうか、と思う程度だろう。
もちろん、彼に会ってみることに価値はあるとは思うのだが・・・。
「アレン、興味深い話が聞けて良かったわ、
私の方からあと一つ聞きたいのだけど、
マルゴット女王に冒険者が謁見する事なんてできるのかしら?」
さすがにそれはBランク冒険者のアレンにしても難問だったようで、少し頭を抱える仕草をとっていた・・・。
「うーん、Sランク、或いはAランク冒険者ならともかく・・・
メリーさん、君のランクは?」
「・・・Dね。」
「難しいと思うよ?
あ、でも依頼の中にたまにグリフィス公国自体が発注するものがあるから・・・
その依頼が女王個人的なものの場合、交渉によっては会ってくれるかも?」
「女王の個人的な依頼?」
「マルゴット女王自身も精霊術士なんで、マジックアイテムとか珍しい魔石とか、
希少なアイテムを収集することがあるみたいなんだ。
珍しいケースだけど、冒険者ギルドに依頼が回ってくるケースがあるんだよ。」
それは使えるかも・・・。
「アレン、いろいろ為になる情報をありがとう。
助かったわ。」
「いやいや、このぐらいなんてことないさ。」
その後、ストライド中心に話が進んでいたけども、
もうあとは私の目的の外のお話。
私は黙って今までの情報を整理する。
急に私が黙ってしまったので、
ストライドもアレンも戸惑っていたみたいだけど、諦めてもらうしかない。
・・・カラドックは「蒼い狼」というパーティーに・・・
「蒼い・・・狼」?
そして私はねじが巻かれた人形のように再び口を開く。
「アレン、
『蒼い狼』の狼獣人・・・名前は分かる?」
いきなり話を遮られて面食らっているのは仕方ない。
「え? あ、なんだっけかな?
ご、ごめんよ、彼らはこの街のパーティーってわけじゃないから・・・
た、確かケイジだったか、ケイタだったか・・・。」
そう言われると日本人みたいな名前に聞こえるわね?
でも・・・違うか。
「メリーさん、何かあるの?」
ストライドが聞いてくる。
「いえ・・・、ひょっとしたら知り合いかも・・・と思っただけ。
でも違ったわ。」
前世で私を殺した男・・・
いえ、別にその事に今更恨みなんてない。
むしろその後、私たちの運命を弄んだことに対して言いたいことがたくさんある。
生前、数々の悪事に手を染めた自分が抗議できる筋合いなど、どこにもない。
だからと言って、ピエロのような役割をさせられて黙っていられるほど私は出来た人間でもない。
・・・ああ、これは人形メリーの思考ではないわね。
感情が復活したゆえなのだろう。
でもひょっとしたら・・・この異世界転移自体・・・彼の差し金だというのなら・・・。
アレンと別れた後、
私たちは再び依頼ボードのところまでやってきた。
目を惹く依頼がいくつかあるが・・・。
「メリー、何か依頼を受けるのか?」
テラシアが興味深そうに私の視線の先を見据える。
依頼票の発行人はこの街の自警団となっていた。
「えー、なになに?
ここ数か月、街の娼婦たちが行方不明になっています?
彼女たちの消息を探して欲しい。
事件の解決、又は手掛かりの提供だけでも謝礼が出るみたい・・・?」
ストライドが読みあげる。
勘のいいバレッサが気付いたようだ。
「あっ、これ・・・まさかメリーさんが反応するってことは・・・!?」
クエストランクはE。
ただ、バトルを伴わない、探偵のような依頼は解決できるパーティーはなかなかいないのだろう。
私も別に探偵のような真似は出来ない。
だがこの人形のカラダが教えてくれる。
この死神の鎌を振り下ろす相手がいることを。
メリーさんの中の人の前世の時系列が分かりづらいかもしれません。
初代(21世紀)化け物として産み落とされる→「四人の使徒・狼」に殺される。
二代目(400年後)貴族の娘に憑依?転生?人格の上塗り?(本人も分かってない)→神聖ウィグル王国国王アイザスに嫁ぐ。→その後いろいろやらかす。
→逃亡→再婚→娘を産む→再婚相手自殺→娘が嫁に行く→人形に転生。←いまここ
四人の使徒・狼=後の天使シリスであり、カラドックの父親。
そして神聖ウィグル王国国王アイザスは天使シリス・カラドックの子孫にあたる。