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第百十二話 この親にしてこの子有り


ヨルは一目でお偉いさんが使っているであろうと見える部屋の扉を、

ノックもすることなく威勢よく開いた。


 「おとうさぁん!! お婿さんを・・・」

 「ならんならん許さぁぁぁーーーーーんっ!!」

 「どうしてですかぁっ!!

 カラドックがヒューマンだからですかぁっ!?」



あ、あの、いえ、

紹介も挨拶も何にもしてないのに、なんでそんなポンポン話が進んでいるのかな?

扉を開けて5秒ぐらいしか経ってないんだけど・・・。


 「ヒューマンだろうが魔族だろうが、このわしが認めた男でなければ、大事なヨルを渡すわけにはいかぁぁぁんっ!!」

 「そうやって娘の自由を奪う父親なんて最低ですよぅぅっ!!

 しかもそう言って、絶対誰も認めないつもりなんですよぅぅ!!」

 「当然だぁぁぁっ!!

 ヨルは一生、ここでパパと一緒に暮らすんだぁぁぁっ!!

 他の男はヨルの半径1メートル以内に近寄ることすら許さああああああんっ!!」


この人も・・・

いや、この魔族も、立派な角と彫りの深い顔立ちで、威厳はたっぷりある筈なんだけど、かなり残念なことになっている。

溢れんばかりの膨大な魔力を別の事に無駄遣いしてるんじゃないだろうか?


ていうか、魔族の人に出会う度に、どんどん魔族のイメージが崩れていくんだが、だれか責任取ってくれないかな?



 「今まで出会った魔族の中で一番、魔族っぽいのは、串焼きのオヤジ。」

 「対抗馬で魔族らしかったのは、さっきの角の立派な執事。」


ああ、あの人は、落ち着いてたけど眼光とか口調に凄みを感じたな。

油断はしないようにしよう。


問題は今の状況だ。

私は不毛な言い争いを続けている親子の間に入って、話を始めることにした。

 「ヨルさん、・・・とりあえず私たちの紹介をしてもらっていいかな?」


途端に彼女は顔を真っ赤にしてしまう。


 「あっ、恥ずかしいですよぅぅ・・・

 ちゃんと紹介もしないうちに婚約したことをバラしちゃったですよぅぅ・・・。」

いや、約束してないからね?


 「ぬぁにぃぃぃぃぃっ!?

 もう体を許したのかぁぁぁぁぁっ!?

 許さん許さん!

 貴様その薄汚れた手で、ヨルの大事な大事な角をいじりまわしたというのかぁぁぁっ!?」


もうどうしてくれよう・・・。


 「カラドック、これ、もうこの街、滅ぼした方がいいんじゃないか?」

 「あたしもぺんぺん草一本も生えない焼け野原にしてあげるよ?」

 「ケイジ、リィナちゃん、・・・もうちょっと耐えてくれ。」

二人が、どちらが魔族なのかわからないような発言をする。

でも気持ちは十分わかる。

何より私がそうしたいのを必死で堪えているんだ。


私はアガサとタバサに目配せをする。

二人とも私のやりたいことを察してくれたようだな。

私の両脇に構えて、二人は魔力を高めてゆく!

これは示威行動だ。

攻撃する気も敵対する気も毛頭ないが、一度目を覚ましてもらわないと。


さて、街の町長を務める魔族の実力はどの程度なんだ?


そして二人のエルフが魔力を湧き立たせた瞬間!

 「ぬぉぉぉぉっ!!

 貴様ら何のつもりだぁぁぁぁっ!!」

バカ親晒していた町長が勢いよく立ち上がった!!


おおおお、魔族の町長のカラダから膨大な魔力が溢れ出す!!

目の色が変わったな、

もちろん、こんな狭い部屋で魔力を使った戦闘など有り得ない。

下手したら建物全体が崩れて全員お陀仏だ。

 「・・・戦う気はありません。

 話を聞いていただけますか?

 なお、ヨルさんには、ここへの案内をお願いしただけで、それ以外何の要求もしていません。」


町長の顔面には何本もの筋が浮かび上がり、琥珀色の目も異様な光を帯びている。

机の天板を抉りかねない手の甲は爬虫類のそれを思わせ、それらを観察するに、人間とは全く別の生物だと判断したくなる。


 「貴様ら、それだけの魔力を見せつけておきながら、戦う気はないと戯言をぬかすのか!?」

 「先程の様子では、何時まで経っても話ができないと思いましたので。」

 「話だと!?

 この街を手に入れたいのなら、1対1でわしとやり合う事だ。

 ・・・だが、魔族全てを敵に回す気なら・・・」

 「ですから争う気は全くありませんし、この街にも興味ありません。

 私たちの目的は魔人クィーンだけです。」


そこで初めて意思疎通が可能になったようだ。

やれやれ、一時はどうなることかと。


 「魔人クィーンだと!?」

 「ご存知なら話が早い。

 町長殿は彼女を・・・。」


 「あ、おとうさんの名前はゴアって言いますですよぉ。」


横からヨルが父親の名を明かしてくれた。

名前も強そうだな、

あの、残念な第一印象がなければ、かなり警戒しただろうな。

 「ヨルさん、ありがとう、

 えっとゴア殿とお呼びしても?」

 「・・・好きに呼べ・・・、

 だが、貴様、今かわいいかわいいヨルに色目を使ったな!?」


ええええええ、めんどくさいっ。

 「あの、お断りしておきますが、

 私には妻も子もいますので、他の女性に目移りすることはありま・・・

 ちょ! タバサ! アガサ!?」

途中で二人に抱きつかれた!!


 「・・・貴様ぁ、妻子ある身でありながら、エルフたちを侍らしているのかっ!

 そしてそこにワシのヨルを加えようというのかぁっ!!」

あー、もうっ、話が進まないぃぃっ!!


 「カラドック、・・・後は俺がやる。」

うん、もう頼んだ・・・。

賢王の称号も返上させてもらっていい?


私は一歩下がり、ケイジに交渉役を譲った。


 「改めて、オレがこのパーティーのリーダー、ケイジだ。

 悪いが交渉事は苦手なんでね、単刀直入に言う。

 魔人クィーンを探している。

 こちらの情報では、彼女のやろうとしていることで人類社会が破滅的な被害が生じる恐れがある。

 それをはっきりさせるためにオレたちはここに来た。

 だから、あんたらが魔人に関係ないなら、オレたちはこの街にも魔族にも敵対意識はない。」


町長ゴアがケイジを睨む。

ケイジの能力を計っているのだろうか?

ケイジも尻尾を勇ましく立てて臨戦態勢ではいるようだ。

このまま話し合いができるのか、

それとも血を見る結果になるのか、

・・・はたまたグダグダな展開に舞い戻ってしまうのだろうか?



ゴアは視線をケイジに固定したまま自分の娘に声をかける。

 「ヨルよ・・・。」

 「なんですかぁ・・・?」


・・・反抗期の娘が親に反発するときみたいな感じだな。

もし私に娘ができて、将来そんな対応されたら、・・・うん想像したくない。

とりあえずイゾルテには悪いけど、彼女が自分の娘だったらと仮定してみよう。

 「父上様とは二度と口をききたくありませんわっ!」

うん、ダメだ・・・耐えられない。



 「ヨルよ、この獣人とはどうなのだ・・・?」

それにしてもぶれないな、このオヤジ!?


 「ケイジさんは強くていい人ですよぉぉ!

 あ、でも毛深いのはちょっと・・・。」


ケイジの尻尾がみるみるしなだれてゆく・・・。

ま、負けるなケイジ!!


 「獣人よ、話を聞こう!!」

それでいいのかよ!!



ようやく話が本題になります。

次回、魔人クィーンの情報が・・・。


途中でラスボス出そうかな?

最後まで正体隠す方がいいか・・・ううむ、悩みます。

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