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第百九話 急襲!!

とりあえず、あっぷ!

ぶっくまありがとうございます!!


これだけの規模の街が、こんな大渓谷の陰に存在していたなんて。


人間の街に勝るとも劣らない城壁都市・・・。

高さ7メートルはある城壁の前に私たちはいた。

 「ここがマドランドですよぅ!!

 門兵たちに話を通すから待ってて欲しいですよぅ!!」


当の門兵たちも驚いてるな。

本来、彼らは強大な魔物から街を守るために配置されているわけで、

外来者・・・それも人間の訪問など想定すらしていなかったのだろう。

なお、ここの男性門兵たちは角を隠してはいないようだ。

頭の左右から間違いなく角だと分かる突起物が生えている。 


 「ヨ、ヨル!

 お、お前いったい誰を連れてきたんだ!?

 こ、こいつらは!?」

 「へ? ヒューマンを街に入れてはならないという決まりなんかないのですよぅ?」

 「そ、それはそうだが、ここ数十年ヒューマンなど訪れた記録も・・・

 しかも獣人までいるではないか!?」


彼らは、半分槍を構えかけている。

ヨルと言う子の話を聞いている内は安全かもしれないが、この先大丈夫なのだろうか?


 「どうしてもダメですぅ!?」

 「どうしてもも何も、こいつらが我らを襲ってきたらどうするんだ!!」

 「そんな悪い人達にはみえませんですよぉ?

 狼の人は怖いかもしれませんけどぉ。」


もうやめてあげて。

ケイジの精神力はゼロだ。


大丈夫かなと後ろを振り返ると、ケイジの周りをリィナちゃんたちがぴったりと張り付いていた。

 「お、お前ら・・・?」

 「気にすんなって、ケイジ、

 お前が優しいのはあたしたち、みんなわかってるからさ!」


二人のエルフも頷きあっている。

いいパーティーだよな、本当に。


おっと、前の状況はどうなった?



 「むぅぅぅ、分からず屋ーっ!

 なら、門兵らしく町長に許可貰いに行くですよぅっ!!」


その時ケイジの耳がピクリと動いた。

 「ん? なんだ!?」


ケイジが目を向けた方向には何も見えない。

だが、リィナちゃんとケイジは警戒態勢をとっている。

 「ケイジ、何か来るのか!?」

 「中型の魔物か獣が接近しているような・・・。」

 「なんだって!?」


私たちの様子の変化に、ヨルや門兵も危険を察知したのだろう。

全員戦闘態勢だ。

これは・・・うん、私にも大地の震動音が聞こえてきたぞ。


いや、もう一つの音が混じっている。


 「・・・たぁすぅけーてーぇくーれーえええええええっ!?」

 「「「ミドッ!?」」」


肉眼でも見えてきた。

ヨルと同じ浅黒い肌の若い男が、一目散にこちらに駆けて来る姿が見える。

そしてその後ろから大きな塊が・・・


 「ミドのおおバカ野郎ですよぅ!!

 なんで街までバジリスクを引き連れてくるですよぅ!?」


どうやらヨルと同じく街の周りをパトロールする役割の魔族か。

そもそも一人で対処できる魔物なのか?

冒険者としてバジリスクには2回ほど遭遇しているが、魔法が効きにくい性質だったな。

そしてその牙にかかると、傷口から毒が体内に侵入し、患部から徐々に石化していくという恐ろしい魔物だ。

なので極力遠距離から倒したい。

となると・・・。


 「ケイジ!!」

 「ああ、お前とオレで十分だな!!」


私は風の精霊術!

ケイジは矢を番える!!


岩に囲まれたこの峡谷に突然の風が吹き荒れる!!

 「うわうっぷ!?」

ミドという魔族が吹き飛ばされそうになるのを堪える後ろで、

這い寄る魔物バジリスクも、いきなりの突風に身をよじる。


 「さよなら、バジリスク。」

 「・・・・・・。」


ケイジが決め台詞を呟いた後、息をつく暇もなくその矢が放たれる。

初速は通常の矢と変わらないが、

背後から吹き荒れる風が、その矢を肉眼でとらえきれない程の加速を与え続ける!

・・・そしてもちろん、その威力も!!


スカァン!



ケイジの矢はバジリスクの眉間を正確に貫いた。

これ、終わってみたら簡単な討伐に見えるかもしれないが、そんなことはあり得ない。

そもそも只の弓矢など、バジリスクの皮膚を貫くことさえ難しいのだ。

バジリスクは素早さこそ大したことはないが、その耐久力はBランクの剣士数人でかかっても手こずるという。

その上、魔法にも耐久性を備えているので、冒険者にとって危険度はかなりのものだ。

魔族の戦闘能力がどれくらいかまだわからないが、魔法重視の闘い方だと討伐は難しいのかもな。


さて、現状は・・・。


 「んん~、これはもうあたしの出番ないかな~?」

リィナちゃんが止め刺しに行こうとしているけど、もはやその必要はなさそうだ。

それよりバジリスクの死体の手前で、腰を抜かしている魔族の男の子に手を貸してあげた方がいいみたいだね。


 「ん? あんたも魔族?

 ほら、起きれる?」

 「えっ、あっ、あれ? 獣人っ?」

 「はいはい、兎型獣人剣士リィナちゃんですよ、

 とりあえず、成り行き上助けてあげるです。

 ていうか、このバジリスクの素材、あたしたちがもらっていいのかな?

 バジリスクの革って防具性能いいんだよねぇ?」


 「あっ、えっ、あ、うん、いいんじゃない、かな?」

リィナちゃんから差し出された手を、戸惑いながらも掴む少年。

幾つくらいなのだろう?

人間感覚だと15才程度に見える。

彼もヨルと同じくターバンのような物を頭に巻いているので角は見えない。

後で確かめてもいいが、

成人前は角を隠す風習なのだろうか?


そしてようやくこっちも時間が動きだしたようだ。


 「すっごいですよぉぉ!!

 バジリスク瞬殺じゃないですかぁぁぁl!」

 「なんと・・・まぁ。」


門兵も驚いている。

それはいいんだが・・・失敗したかもな。

私たちの戦闘能力が高いと知れたら、この街の者達は余計に警戒心を高めるだろう。



それでも、この場で助かった魔族の少年ミドと、相変わらず能天気なヨルは無警戒にはしゃぎまくる。

 「あ、ありがとうございます!

 自分だけでも勝てるかなと思ったんですが、途中で剣を折ってしまって・・・。」


横から門兵が怒鳴り散らす。

 「バカ野郎!

 だから魔物相手に剣はやめておけって言ってるんだ。

 レベルが低いうちは槍が最も安全なんだよ!!」


確かにそうだろうね、

対人相手なら剣も有効なんだが、攻守ともにバランスよく扱えるのは槍だ。

洞窟やダンジョンなどスペースを制限されるエリアならともかく、場所を選ばないのなら槍が無難だろう。


 「えー、けど、槍はなんとなくダサいし・・・。」

 「・・・これだよ、

 数少ない若者の一人だってのに、この先、この街はどうなるんだか・・・。」


 「まぁ、いいじゃないですか、それより本当にありが・・・え?

 獣人の他にも人間!?」


ミドは今頃気づいたのか。

それより、私たちの会話の隙に、リィナちゃんとヨルが魔物の素材剥ぎに熱中している。

何となくあの二人、気が合いそうだな。


さて、では仕方ない、

私とケイジで話を進めるか。

 「それでどうだろう?

 彼を助けたことで恩を売るつもりはないが、私たちが友好的であることは示せたんじゃないか?

 できれば街の責任者にお会いしたいんだが?」


 「あっ! それならヨルが案内するですよぅ!!

 こいつ片づけたら一緒に行くですよぅ!!」


門兵の魔族は苦々しく笑いながら、別の係の者に何事か告げに言った。

どうやら門の中の人間に話を繋げてくれるようだ。

逆に私たちの身は安全と言えるのだろうか?

ここからはそっちを心配しないとな。


どうやらケイジは私の心配を悟ったと見える。

 「大丈夫だろ?

 いざとなったら、その子を・・・。」


人質ですか、悪どいねケイジくん。



バジリスクは必要な部分だけ素材を剥がし、後の死体の処理はミドという若者に任せておいた。

バジリスクの革は、ちゃんと処理を施せば、軽量且つ魔法耐性があるので軽戦士垂涎の的だとか。

私もお土産に元の世界に持って帰りたいほどだ。



 

次回、魔族の街のマドランド。

明後日か、次の日くらいには投下・・・。


うりぃちゃん

「・・・いろんな意味で香ばしい匂いがするで・・・。」


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