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第百七話 泡の女神

重要人物です。

せっかくなので長めです。


時間は遡る・・・

この「異世界」の遥か遠い過去に・・・





・・・



・・・・・・



私は・・・



なにがどうなっているのだろう?


眼は開いたつもりだ・・・。

でも何も見えない。


カラダが・・・動かない?


いま、私はどうなっている?

 「あ・・・あっ!?」


声は出る。

そして辺りにその声が反響している。

私は死んだのではなかったのだろうか?

記憶が・・・何を覚えている?

何を思い出す?


私は・・・私は・・・。


 「だ、誰か・・・!

 誰もいないのですか・・・!?

 ─── 様!?」


いま、私は誰の名前を呼ぼうとした?

あの人がそばにいてくれるなら、例えこの目が見えなくても・・・

あの人?


私にとって大事な誰か・・・思い出せ・・・。

いいえ、今はまず先に・・・。


声が響く・・・。

地下のような広い場所に閉じ込められているのか?


・・・そうだ、私は地下の世界に住んでいた。

だけれども、それは洞窟のような狭い場所ではなく、

見上げれば大空洞の中心に、仲間が作り上げた仮の太陽すら輝く世界・・・。


ううん、そこから連れ出された・・・誰に?

覚えていない・・・記憶の欠落が激しい・・・。


覚えてないのに、何故自分は死んだと思ったのだろう?

単に何も見えないこの状況のせいだろうか?


耳を澄ますと、水が流れるような音がする。

泉でも湧いているのか・・・。


泉・・・


何か思い出したぞ・・・。

そうだ、忘却の泉・・・レーテの水・・・。


そうだ、あれを継続的に飲まされていたせいで、記憶が定かでないのだ。

・・・いいえ?

もう飲んでいなかった筈だ。

私は解き放たれたのだから・・・あの人と一緒に・・・。


・・・!


記憶がはっきりしてきた。

忘れてない・・・。


忘れるものか・・・忘れるわけがない。


でも、そうなると・・・何故私は生きているのだろう?


助かったのだろうか?

私を・・・あの人は許してくれたのだろうか?

・・・。


いずれにしろ、ここがどこだか、先に知るべきだろう。

光も届かない地下にいるのは間違いなさそうだ。


でもそうなると、それはいつからの話だろうか?

腹を刺されたはずの自分が生きているのも不思議だが、

その怪我が治っていたとしても、水や食事を摂らなければ結局は同じはずである。

誰か意識のなかった私を看護してくれていたとでも言うのだろうか?


 「誰もいないのですか!?」


相変わらず声を返してくれるものはいない・・・。

これは・・・もしかして私への罰なのだろうか・・・。


その時、私の頭に浮かんだ考えは「牢獄」。


そうとも、私は罪を犯した・・・。

あのかわいい子を騙した。

それこそ地上の太陽のように眩しい笑顔が似合っていたあの子を・・・。


あの人がどこに行ったのか所在を聞かれて、

私は前の晩に旅立って行きましたと嘘をついた。

それくらいなら大したことではないかもしれないが、

私の嘘を信じて、あの子はたった一人、荒野の砂漠へと向かっていった。

それにあの時、彼女は体調がすぐれなかった様子もあった。

そんな状態で広大な砂漠を一人旅するなんて自殺行為だと言えよう。


でも私は止めなかった。

あの人を独占するために。

あの子はその後、無事だったのだろうか?

どこかで野垂れ死にしていた可能性もある。

いや、今更な話だ。

今は自分の事を優先すべきだろう。


死ぬことは免れたようだが・・・誰もいないような孤独の世界に繋がれたということか、

・・・それが私への刑罰だというなら・・・。


 「それも・・・いいかもしれませんね・・・。

 でもせめて明かりを・・・。」


刑罰だというなら、もしかすると目を潰されていたのかもしれない。

だが目に痛みは何も感じなかった。

だからやっぱり、ここは光が届かない場所という認識でいいのだろう。


ところが、そこで有り得ない事態が起きた。


いきなり頭上に光が灯ったのである。


 「う!? ま、眩しい・・・!」


今度は明るすぎて何も見えなくなった。

それでも、しばらく・・・どれくらい時間がったのか・・・。

ようやく目が慣れてくると、

この場所が何なのか全体が分かるようになってきた。


やっぱりここはどこかの洞窟の中だったようである。

天井は5、6メートル程の高さがあるだろうか、

自分の真正面先には広がりがあり、2、30メートル向こうまで道らしきものが続いているが、そこからカーブを描いているのか先に道があるのか、行き止まりかもわからない。


洞窟は頭上の光りに薄く反射している部分が多く、若干、幻想的な風景に視えなくもない。

希少な鉱石でも含んでいるのだろうか?


そこまでは良かった。

私は動かない自分のカラダを確かめようとして、

絶望的な恐怖に襲われたのである。


首すら・・・首も満足に動かせなかったが、視線は動かすことができた。

まず確認できたのは足元だ。

膝から下が大きな樹木のなかにめり込んでいる!?


肌着のような薄いキャミソールはまとっていたが、その下の肉体は樹の幹の中に隠れて、

いま、足がどんな状態なのか確認すらできない。

そしてそれは両腕も一緒だった。


肘から先は同じように太い幹の中に埋め込まれていて指先の感覚は一切ない。

手首から先が実際に残っているのかどうかも定かでない。


となると、背中も首もどうなっているのか、自分の目で見れなくても想像はつく。


自分は樹と一体化している。


何がどうなってこんな目に?


視線だけ上を見ようとすると、

自分を収めている樹木が洞窟の天井まで伸びていて・・・

その天井を貫いて成長しているようにも見える。

天井付近は枝や葉も生い茂っており、

太陽の光がなくても問題ない様子である。

もっとも、天井を突き破って生えているなら、地上部分にまで先端は伸びているのかもしれない。

疑問や考察は尽きることもないが、結局は殆ど身動きできないのだ。

やることが何もない。

なるほど、これは恐ろしい拷問だ。


今のところ空腹を感じていないのだが、もしかすると、私はこの植物と同化しているということか?


そうすると食事すら不要というわけか。



つまり、このまま悠久の時間を何もすることもなく過ごせと、

誰がそんな恐ろしい刑罰を考えたのか?


それから何時間か過ぎただろうか?

こんな所に、まさか人間など訪れる事などないだろうと諦めかけていた私の元に、

全く予想もしなかった珍客が現れたのである。


視界に違和感を感じるまで、私はその接近にまるで気付かなかった。

地面が一部分だけ変形している?

最初に認識できたのはそれだけだった。


だがそんな事があり得るのだろうか?

私がその現象に注意していると、

「それ」は間違いなくこちらに接近し始め来た。


 「な、なんですか、あれは!?」


私は身動き一つできない。

つまり今の自分には身を守る手段は全くない。

なのに気味の悪い何かはこちらに真っすぐ近づいてきている。


こ、これは生き物・・・なの!?


不定形で半透明の物体がうねうね足元にまでやって来た!!

 「あ、あ、あ・・・誰か・・・誰か助けて!!」


ここには誰もいない、

そんな事は分かっている。

それでも私は悲鳴をあげる。


けれどもそれに応える声はないし、この半透明の物体も何の反応もない。

ただひたすら、私の周りでウロウロして、

最後には私を支える樹木にへばりついてしまったのだ。


・・・動かなくなった?


いや、よく見ると小さく蠕動しているようにも見える。


これは・・・もしかして樹木の樹液でも吸っているのだろうか?

それは・・・私の栄養も一部奪われているのだろうか?


その可能性は十分にあると思うが、

こんな半透明の物体に吸い取られても、それ程大した量でもないと思われる。

カブトムシが大樹の幹から蜜を吸ったとしても、樹木の生育に何の影響も与えないのと同じことだろうか?


 「そ、それにしてもなんなのですか、この生き物は。

 今まで見たことも聞いたこともありません、

 誰か調べてくれる人でもいないのでしょうか?」


誰もいないとはわかっていても、思わず口に出た言葉だった。

するとどうだろう?

いきなり、目の前に不思議な文字が浮かんだのだ。


 「名前・・・無し 年齢・・・三ヶ月 性別・・・無し(状態 食事中)

 レベル・・・2 種族・・・スライム」


んん~?


いまの・・・私の言葉に反応して現れた?

そういえば・・・この頭上の明かりもさっき私が喋ってから・・・。


 「明かりを!!」

今度は視線を少し先に向けて叫んでみた。


やっぱりだ。

先程と同様に、強烈な明かりが前方に灯ったのだ。


これ・・・まさか女神アグレイアの能力?

なぜ、私がアグレイアの能力を?

も、もしかして他にも?


 「炎よ!!」


今度は違う空間に火の玉が現れた。

すぐに地面に落ちて、辺りに流れる水のせいで消えてしまったが。

そう、これはヘファイストスの能力だ。

ゼウス様の気まぐれであのハゲオヤジと婚約させられてしまったのは私の黒歴史。

けっして悪い人ではないと思うのだが、こちらにも選ぶ権利ぐらい与えて欲しい。

うん、いろいろ思い出してきた。


もう少しこの力を試してみよう。

さすがに炎を使うのはやめたほうがいいかな。

こっちの樹木に被害が及んでは堪らない。

相変わらずスライムとやらが幹から何か吸い出しているようだが、

こいつを相手に他の能力を試してみるか。



・・・えっと、誰がいたっけ・・・。


すぐに思い浮かんだのは、「キャーッハッハッハ!」と下品な笑い声をよくあげていた女神アルテミス。

あの胸のでかいだけで頭の中が空っぽのアルテミスの能力は・・・

矢がないと何もできないわね・・・。


少し私より年上だからって偉そうなアテナは・・・あの人の能力は楯よね?

今は意味ないか。


うーん、自分が戦ったことないから、こういう時、どうすればいいか・・・。

それより、こうやって一心不乱に食事している姿を見ると、

攻撃するのも可哀相に思えてくる。


あ、嫌なヤツだがあいつの能力はどうだろう。

 「我に従え!」


権力の神クラトスだ。

どんな能力なのか今一つ分からないが、多分、そんな感じだろう。

でもこっちの言葉がわかるはずもない生き物に通じるだろうか?


あれ?


すると食事をしていたスライムが、急に頭(?)を翻し、私の足元までやってきたのだ。

もしかして?

 

なにかスライムはヘコヘコしてお辞儀をしているような・・・。

その能力も通じるの?


いったい私はどうなってしまっているんだろう?

さっきスライムを見通した力は自分にも使えるのだろうか?

試してみるか・・・。


 「私の力を見せよ!」


するとまたしても目の前に不思議な文字がズラズラと並ぶ・・・!

やっぱりそうだったのか・・・。


だがそこに現れた情報は、自分に納得できるもの、納得いかないもの、

それらが平等に並んでいたのである・・・。



 「私の名前と種族が表示されて・・・けれど、

 この職業・・・『世界の管理者』!?

 そして称号がいくつも・・・『転生者』とは何を意味するの・・・。

 『泡の女神』と『愛と美の女神』はともかく『世界樹の女神』ですって?

 え、と、ユニークスキル・・・『生命創造』?

 いったいこれは何なの・・・!?」

 


いつものネタバレ

◯ィナ

「勝手に人を殺すんじゃねーよ!!」


おお、お元気そうで何より。



なお、

この女神はたった今だけで、

ライト、ファイアー、鑑定、テイムスキルを実行しました。


次回からカラドック編、いよいよ彼らは魔族領に!

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