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第百五話 ぼっち妖魔はランクアップする


ついにあたしも魔物や人を直接殺せるスキルを手に入れたのか・・・


と思ったら違いました。

かなり紛らわしい術です。

人の覚悟をなんだと思ってるのか。


「一定の空間から空気を奪い真空状態とする。」


普通に聞くと、

その中心に生物がいれば、酸欠になるよね?

死んじゃうよね?

後、気圧とかの難しい現象もあったような?

と思うのですが、

実は虚術は生物の生態活動には一切影響を与えないという特性らしく、

例えばサイレンスにしたところで、空間内の人間の発声などを封じるものではないようだ。

あたしも自分の声で試したけど、

耳からは自分の声は聞こえない。

けれど骨伝導で声は分かる。


つまり生物体内の音は封じられてない。

もちろん自分の心臓の鼓動も分かる。


ただ、今回のバキュームというスキルは怖くておいそれと生物実験できない。

スキル説明を何とか解釈するなら、

恐らく生物体内及びその周辺の空気は影響を受けないということなのか。


じゃあ一体どんな効果を生むのか、

後で魔物に試して恐ろしい効果を生む事が分かった。


また蝙蝠どもを一掃する手段が増えたという事だ。

あ、人間を襲ってこない蝙蝠さんには危害加えませんからね?




二つ目の宿屋町セルルまでは、それ以上なんのトラブルも起きなかった。

強いて言えば、みんな激しい戦闘の後でハイテンションになってたことか。

回収したロックワームの肉を仮設冒険者ギルドに持ち込んで臨時収入にしたせいもあるだろう、冒険者の皆さんもほくほく顔だ。

ゴッドアリアさんも、手に入れた魔石を洗浄して愛おしそうに頬ずりしている。


今回は、冒険者ギルドが騒がしいせいもあって、

あたしは顔を出さずにいようと思っていたら、デミオさんが一緒についてってやるから手続しに行った方がいいと言ってくれた。


 「え? でもあたし、ロックワームの肉持ってないですよ?」

 「そうじゃねーよ、討伐証明だ。

 オレ個人でこの隊商の護衛依頼を出してるわけじゃねーが、

 一応これでもキリオブールの商人ギルドのサブマスターでな、

 オレは依頼主の代行権限を持っているんだ。

 そのオレが嬢ちゃんの討伐実績を証明してやるってことさ。」


あ、そ、それってあたしがロックワームを倒したことになるになるのか。


 「冒険者のあんたらもそれで構わないだろ?

 別にあんたらに落ち度はねーから、マイナス評価にはならん。

 ・・・プラスにもならんけどな。」

デミオさんは一転して冒険者のリーダーさんに声をかけた。

冒険者の人もそれで構わないようだ。

 「おお、おれらはそれでいいぜ、

 ロックワームの素材売り込んで、臨時収入出たので十分だ!」


このセルルの冒険者ギルドも仮設扱いで、職員は二人しかいなかった。

一人の受付女性が他の冒険者が持ち込んだロックワームの素材の査定を行っていた。

まぁ、と言っても常連の冒険者たちは一グループみたいなもんなので、

順番を待たせても問題はなさそうだ。

もう一人の職員がそのお手伝いをしていたようだが、

デミオさんは、そのヘルプの人に声をかけて、あたしの討伐証明手続きをするよう促した。


 「へ!?

 ほとんど一人の女の子でロックワーム倒したって聞きましたけど、こ、こんな小さな子が!?」


そりゃ、体格は小さいですけど、この人が言ってるのは見た目の年齢の事だよね?

・・・そしてギルドカードを見せる前に、デミオさんはあたしの職業をこっそり、召喚士か巫女に戻すように言ってきた。

なるほど、これ以上、大騒ぎしないようにか。

あたしは召喚士にジョブを変えた後、さらにステータス隠蔽もかけておく。

これで受付の人が鑑定使ったとしても虚術士は視えなくなった。


まぁ、それでも驚かれたけどね。

 「異世界からの転移者ぁぁっ!?」


うううう、そっちを隠した方が良かったのか、

まぁ、でもほとんどさっきの戦闘から注目を浴びっぱなしだし、今更な気もする。


 「驚くのは後回しにしてくれ。

 というわけで、こいつらが持ち込んだ素材でどれだけの魔物かは理解できるだろ?

 後ろのゴッドアリアのねーちゃんも参加したが、ロックワーム討伐はほぼこの嬢ちゃんの実力だ。

 護衛の冒険者たちも認めている。

 有害魔物討伐の常設依頼扱いで、彼女の冒険者ランクの成績に加算できるだろ。」


 「は、はい、問題なく・・・少々お待ちください・・・

 あ、これ・・・もうランクアップできますねって・・・

 先月デビューしてここまで・・・

 なるほど、感知と攻撃それぞれ可能・・・、素晴らしい。」


うーん、それだけ聞くとそうなのかなって思うけど、

あたし自身に肝心の体力ないからなぁ、

レベルアップしても、ストレングスとか器用さとかいったステータスは、1から2ぐらいしか変化しないんだよね。

相変わらずMPだけはめっちゃ伸びてるけど。


 「おめでとうございます!

 伊藤麻衣様!! これであなたはDランクです!!

 ソロによるダンジョン探索も、護衛の依頼受注も可能になりました!

 ただ、冒険者カードの更新はキリオブールで行ってください。

 このカードと証明書をキリオブールの冒険者ギルドに出していただければその場でカードを更新いたします。」

 「はい、ありがとうございます。」

・・・ついにDランクか・・・。



 「すごいな、麻衣・・・。

 登録して一月でDランクって・・・。」

後ろでゴッドアリアさんが気が抜けたように呟いていた。


 「そう言えば、ゴッドアリアさんはその魔石で杖を作るんですか?」

 「あ、ここの街じゃ無理だな、

 キリオブールの魔道具ギルドで作成依頼しようと思っている。」


魔道具ギルドなんてものもあるのか。

じゃあ、あたしもローブとか杖とかそれっぽく用意した方がいいのだろうか。

む、いけないいけない、完全にこっちの世界に順応していってる気がする。


 「既製品なら商人ギルドでいい店を紹介してやるんだが、

 その魔石を使って作り込むならその方がいいだろうな。」

 「あは、デミオさん、ありがとうございます。

 その時はお願いします。」


さすがに濃密な時間を共有したせいか、会話もスムースになったね。

でも問題が一つ残ってる気がする。


 「だが、ゴッドアリアの嬢ちゃんよ、

 お前、その魔石を使って杖を作る資金はあるのか?」

 「うぐっ!?」


やっぱりか、借金有るんだもんね。

 「ま、麻衣・・・。

 だから、キリオブールに着いたらアタイとパーティーを・・・。」

またそこに話が戻ったか・・・。


 「せっかくなので、ゴッドアリアさん、

 それにデミオさんも聞いてください・・・。

 あたしは冒険者カードに記載されてるように、

 この世界の人間じゃありません。

 そしてあたしの目的は早く自分の世界に戻ることです。

 何よりもそれを第一優先にしています。

 そして、その為の手掛かりや、自分の世界に戻るのに条件があるなら、

 その条件をクリアするために活動してるんです。

 その意味で、いつまで次のキリオブールに留まっているかもわからないんですよ?

 ハッキリ言って先の事は何の約束も出来ないんです。」



そこでゴッドアリアさんはようやく理解したんだろう。

 「ま、麻衣・・・じゃあ。」

 「そういうことです、わかってくれればいいんです。」

 「じゃ、じゃあ、アタイが嫌いってわけじゃないんだな!?」


はぁ?

なにがどうしてそうなった!?


 「だってろくすっぽ口を聞いてくれなかったし・・・。」

あ、そ、それは単にゴッドアリアさんが痛すぎて・・・いや、それは言えないな。


その辺りで冒険者のリーダーさんが乱入してきた。

 「おい、話はその辺でいいだろう!?

 それより、お前らも今夜一緒にメシどうだ!?

 稼がせてもらったからな、全部おごるぜ!!」



おお、

そういう流れか。

普段なら丁重に断るところだけど、

今回、この人たちに一切邪念なさそうだし、単にバカ騒ぎしたいだけみたいだね。

せっかくなのでお呼ばれしますか。


 「・・・そ、それってあたしも・・・?」

 「借金魔法使いか! いいぞ!

 お前も役に立ったじゃねーか、こっちは殺されかけたけどな!!

 ワッハッハッハ!!」


確かに。

ゴッドアリアさんの顔が引きつっている。

でもまぁ、食べられるときに食べた方がいいよ、ゴッドアリアさん。


 「おいおい、お前ら護衛はあと一日残ってるんだからな、

 あんまりハメ外すなよ?」

デミオさんがジト目で突っ込む。


 「わかってるわかってる!

 酒は飲み過ぎないようにするって!!

 騒ぐのはキリオブールに着いてからだな!!」


連日騒ぐつもりか。

まぁ、後で聞いたら今回のロックワームの素材で一人あたり5万ペソルピーくらい貰えたらしい。

二日分の飲み食いには十分だろうということだ。


・・・冒険者って宵越しのお金を持たない人たちが多いのだろうか。




夕食会はこの街で一番大きい飲み屋を借り切って行われた。

別に話は割愛しても良かったのだけど、

静かにごはんを食べてるあたし達の所に、

一人、意外な人が寄って来た。


 「ちょ、ちょっといいかな?」




 

麻衣ちゃん編は次回の更新でまたお休みです。

ここまで来たら虚術第四・第五の術も大体想像つくかな?



そして第百七話において、新キャラ・・・

「私メリーさん」緒沢タケル編において名前だけ登場したあの方が登場します。



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