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孤児院を脱退(成人を迎えた)した人は冒険者となって孤児院のためにお金を稼ぎに出かける。
世話になった孤児院(家)に恩を返すためである。
あるとき、冒険者は竜退治を任された。竜はこの世の頂点に君臨する巨大な生物で人がそうそう立ち向かうにもそれなりの準備と人数が必要となる相手だ。その冒険者は五人のパーティを組んだ孤児院の脱退者たちで構成されていたメンバーだった。
お金が多く稼げるといわれ、嫌々ながらも孤児院(家)からの仕送りがまだだったこともあり、渋々承諾した結果、パーティは全滅し、亡骸が町の外れに転がっていたという。
その冒険者は剣士で装備は剣と服、竜の首(子供と思われるほどの大きさ)をつかんでいた。約束通り竜を討ち取ったものの、帰らぬ人となってしまった。
依頼通り達成し、資金は孤児院に贈られたが、そのとき、一緒に運ばれた剣士の顔は幼い自身に恐怖を植え付けさせた。
とてつもなく脅威にさらされ、仲間が死に、ひとり生き残り、孤児院(家)のためにと帰ってきたものの力尽き、最後はどう思っていたのだろうか。
剣士はきっと最後は悔しさと絶望の果てに顔は恐ろしく歪みきっていた。
剣士の亡骸の腰ポケットには生前、仲間たちで撮ったであろう記念写真がくしゃくしゃの状態で入っていた。