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柘榴石の瞳  作者: 美都
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ミラー室長

 研究所は歴史を感じるような古い石造りの建物で、廊下には紺色の絨毯が敷かれている。そのため、歩いても足音はあまり響かない。


 廊下にはいくつも扉があるが、窓は外に面しているところにしかなく、扉の向こうに何があるのかは見ることができなくなっている。さらに、扉にはドアノブのついていないものが多く、ドアノブのある扉は数えられる程度にしかない。


 オードリーがレオンとブラッドリーについて歩いていると、何人もの黒いローブを纏った魔法使いとすれ違った。


 そこにはレオンやブラッドリーのようにフードを被っている者はおらず、皆3人を、特に明らかに魔法使いでないオードリーを珍しそうに見ては、すぐに興味を失ったかのように視線を逸らして通り過ぎていく。


 しばらくそれを繰り返しながら、廊下を曲り階段をのぼりと進んでいくと、レオンとブラッドリーは1つのドアノブのある扉の前で立ち止まった。コンコンコンッとノックをする。


「ミラー室長、レオン・エリオットです。ご在室でしょうか」

「入りなさい」


 女性の声が聞こえ、レオンはすぐにドアノブを回して中に入った。続いてブラッドリーがオードリーに中に入るよう促し、3人が入室すると静かに扉を閉めた。


 部屋の中は既に蝋燭が灯されており、大きな窓はカーテンが閉められていた。部屋の右手一番奥には立派な机があり、そこに20代後半くらいの女性が座っていた。やはり魔法使いのローブを身に纏っている。


 長い茶色の髪は頭の後ろでしっかりと纏めており、翡翠色の瞳はやや鋭く、銀色のフレームでできた眼鏡をかけている。なにか作業をしていたようで、手には羽ペンが握られていた。


 部屋の中央には応接台があり、レオンはそれを避けるようにして女性の元へと近づいていく。オードリーもブラッドリーにつれられ、レオンのように女性の前へと向かった。


 オードリーが2人の間に挟まる形で3人が並んだところで、レオンとブラッドリーは今まで被っていたフードをとった。ミラー室長と呼ばれた女性は、部屋に入ってきた時とは異なり和やかな笑顔で見ている。


 オードリーは、今ここでフード脱いでいいのか、むしろ脱いだ方がいいのかと悩みレオンの方を見たが、レオンはオードリーの方を見ることなく口を開いた。


「ミラー室長、只今ヴォレンティーナより戻りました。ただ、問題が発生しまして彼女、オードリー・クロムウェルを連れてくることとなりました。その問題の報告と滞在許可の申請のため、一緒に所長室に行っていただけませんか。個別に報告をしますと時間がかかりますので」

「わかったわ。ではすぐに所長室に向かいましょう。この時間は所長室にいらっしゃるはずだから。オードリーさん、私は第三研究室室長のグレイス・ミラー。この2人の上司です。よろしくね」


 グレイスはオードリーに向かってニコニコと笑いかけ、立ち上がって握手を求めてきた。結局オードリーはフードを取ることもなく握手を返したが、グレイスは気にも止めていない様子でそのまま扉へと向かっていく。


 レオンとブラッドリーは再度フードを被ると、オードリーを促してグレイスの後に続いて廊下へと出た。


 さらに階上へと上がっていくと、またドアノブのある、今度は立派な両開きの扉の前で、一行は立ち止まった。レオンが丁寧にノックをする。


「ルイス所長、第三研究室所属、レオン・エリオットです。ご報告があって参りました。ご在室でしょうか」

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