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柘榴石の瞳  作者: 美都
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地下室

「名を」


 突然の声に驚きオードリーが声のする方を見ると、そこには黒いローブを纏った魔法使いが2人、石板でできた重厚な両開きの扉を挟むようにして立っていた。


 フードをすっぽりと被っているため顔を確認することはできないが、声と背丈からして2人とも男性のようであった。2人の右手にはそれぞれ 2メートルはありそうな長い杖が握られている。


 白く木製に見えるそれは、上部が丸く曲がっており、片方の杖にはその先端に大きな鈴が、もう片方の杖にはその先端に真っ赤な石がついていた。


 レオンは2人の方に体を向けると、掌を突き出すようにして右手を前に伸ばした。


「第三研究室所属レオン・エリオット、只今調査対象地区ヴォレンティーナより帰還した。彼女はオードリー・クロムウェル。魔力を持たない平民である。今回の調査に関し必要と判断し、連れてきた次第である」

「同じく第三研究室所属ブラッドリー・ティレット、只今調査対象地区ヴォレンティーナより帰還した」


 オードリーたちのすぐ後に転移したのであろう。レオンの口上に続きブラッドリーの声がオードリーの後ろから聞こえた。それから、2人の声に反応したかのようにチリンチリンと鈴が鳴った。


「第三研究室レオン・エリオット及びブラッドリー・ティレット本人がヴォレンティーナより転移されたことを確認しました。オードリー・クロムウェルについては即刻所長への報告をされるよう」


 扉の前に立つ片方がそう告げると、もう片方が左手の掌を扉にそっと当てた。すると、扉が手から離れてゆっくりと外向きに開き始めた。



 3人で扉を抜け地下室から出ると、そこにはやはり石造りの螺旋階段があった。窓の1つもなく、ポツンポツンと蝋燭に火のついた燭台が置かれているだけで、やはり薄暗い。


 地下室と言われていたし、明るいわけがないわよね


 オードリーが階段を眺めていると、後ろで扉が閉まる音がした。振り返ると、先程通り抜けた扉がピタリと閉まっている。


 扉をよく見てみると、この扉には開けるためのドアノブが付いていなかった。手を引っ掛けられそうなところもない。


 扉を開けるのにも魔法を使っているのかしら


 扉の前で立ち止まって考え込んでいるオードリーに、レオンが急かすように言った。


「先を急ぐぞ。すぐに所長室へ行かなければならないんだ」


 階段を上り始めたレオンにオードリーも慌てて付いて行く。オードリーは誰にも瞳を見られぬよう、レオンの側について必死に俯いて歩いていたが、結局上りきるまで誰ともすれ違うことはなかった。


 階段の終わりには、地下室と同じような石造りの扉があった。そこには誰もおらず、扉にもやはりドアノブなどがついていない。レオンが扉に掌をつけると扉は先程と同じ様にゆっくりと外向きに開いた。


 扉の外は明るい空間だった。廊下のようで、扉の反対側には窓が並んでいる。もう既に夕方ではあるが窓からは日差しが入り、丁寧に整えられた庭を見ることができた。


 色とりどりの花が咲き、低木は綺麗な形に整えられている。薔薇で作られたアーチが奥へと続いており、どうやら庭の一部が見えているだけのようだった。それでも初めて見る光景にオードリーが思わず見入っていると、レオンがコホンと1つ咳払いをした。


 あっ、と思いオードリーは慌ててレオンとブラッドリーの元へ小走りで向かう。そのまま2人の後ろについて、俯いたまま静かに歩いた。

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