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EP.1 魔測の儀

「やっと…。この日が来たんだ!」

魔法使いの少女、エナがひとり呟く。

今日は彼女の住む村の成人の儀式が執り行われる。

この国の住人たちは15歳で成人を迎え、大人の仲間入りを果たす。

成人後は、親から職を引き継ぎ田畑を耕しても良し、冒険者として過ごすも良し。

特に規定がないところがこの国の良いところでもある。

しかしこの村の者は外に出ることが禁止されている。

それはもちろんこの村の者たちが一般人が使えない「魔法」を使うことができるからだ。

魔法、それは魔物や魔族など人間の敵となるものが使う技であり、魔法を使う者は殺せというのがこの国、いや全世界共通の認識である。

恨むべきではない同属の人間が魔法を使ったと知られれば、国軍が動きその存在が消されてしまう。

現にもう幾つもの魔法使いの村が消されてきた。

しかし、魔法が使えることを黙っておけば殺されることもなければ、普通の人間として暮らすことができる。

知られなければの話だが…。

その為この村では、成人の儀式の日にどんな魔法が使えるのかを見極める、「魔測の儀」が執り行われる。

そしてエナもその一人として参加するのである。

「私はいったいどんな魔法が使えるんだろう…」

この村にいる人間は適性や使える魔法さえ違うが誰でも魔法を使うことができる。

エナはその儀式を楽しみに過ごしてきた。

ようやくその時が来るとウキウキしながら準備を始める…。


「やぁ、エナ。その服すごく似合っているね」

「ありがとう、ジュン。あなたも様になっているわよ」

「ありがとう。なんだか照れるな」


話しかけてきたのは親友の男の子、ジュエンであった。

ジュエンも今日、成人するのだ。

今ジュエンとエナは儀式用の服に着替えている。

エナは純白のドレス、ジュエンは黒のタキシードに身を包み式に臨もうとしていた。

「なんか私たち、結婚するみたいね」

「ブッ!」

「えっ、どうしたのジュン?体調悪いの?」

「い、いや何でもないよ…。誰も聞いてないかな」

「そんなことより早く儀式上に行きましょう。もうみんな待っているわ!」

「あ、うん。」

そう言い二人はかけていく。

この先に不運が待ち受けているとも知らずに…。



「それでは、此度15歳となった二人の成人の儀と魔測の儀を執り行う!」

村長のガスフトの声により式が始まる。

二人は前々から練習していた通りに成人の儀を行う。

エナは早く魔測の儀を行いたくてそわそわしている。

一方ジュエンはエナが何かしないかハラハラしていたがそんな懸念は必要なく、無事に式を終えることができた。

そしていよいよ魔測の儀が執り行われるのである。

まず始めは男、ということでジュエンが行う。

奥から出されてきた透明で煌びやかな装飾が施された水晶が出てくる。

ジュエンはその水晶の上に掌をかざす。

すると不思議な表示とともにジュエンの力が目の前に映し出された。


≪種族 人間(魔法使い)ジュエン 15歳

 ステータス HP:100

       MP:1000

       SP:200/200

 スキル   「魔力操作」 「火魔法」≫


「おお…、火魔法がもう使えるとは…」

村長の感嘆の声が響く。

火魔法が使える魔法使いは少ないために、驚くのは普通だ。

その点から見てジュエンはかなりの魔法の使い手ということになる。

「続いて、エナ。前へ」

「はい!」

いよいよエナの番が回ってきた。

水晶に手をかざす。


≪種族 人間(魔法使い)エナ 15歳

 ステータス HP:1000

       MP:0       

       SP:200/200

 スキル   「身体能力強化」LV.MAX 「腕力強化」 LV.2≫


「なっ!?なんだこれは!」

ガスフトの声が響き渡る。

ステータスを見ての通りエナには全く魔法が使えない体質なのだ。

魔法使いの娘が魔法が使えないことがあるのか?

ガスフトや周りの人々は不安に駆られた。

しかし一番不安なのはエナ本人だった。

「私魔法が使えないの…?」

エナの声だけが響き渡った。

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