5 二段構えとは・・・
何故かお前は王子だと突然言われて馬車に乗せられたレオンです。
現在僕はマスタール王国に向けて馬車に乗っている。
うん。ハッキリ言って意味不明な状況ですね。
「えっと・・・ユーリ。ユーリはお母様のことは知ってるの?」
一緒に広い馬車に乗っている女騎士のユーリにせっかくなので母さんのことを聞いてみた。
「リーゼ様ですか?はい存じておりますよ」
「そ、そうなんだ。僕最近のお母様しか知らないから出来れば教えて欲しいんだけど・・・」
「なるほど・・・わかりました。」
ユーリは頷いてから母さんの話をし始めた。
「リーゼ様は昔、現在の王妃さまの侍女をしておりました。」
「現在の王妃・・・一応僕の義母にあたるのかな?」
僕は間違いなく母さんの子供だし、王様なら本妻と側室くらい持ってそうだから僕は側室の子供ってことかな?
「はい。その通りです。ちなみに現在マスタール王国には王妃さま以外は側室などはおりません。一応リーゼ様は側室という扱いになっておりますが・・・なにしろ行方不明になっておられたので実質いないのです」
「その・・・行方不明にってどういうことなの?」
「ことの発端は13年前・・・私どもも詳細は把握しておりませんが、その頃に当事国王陛下は王妃さまとリーゼ様以外を妾られること拒否しておりました。それをよく思わない者がリーゼ様に危害を加えようとしたのです。まあ、幸い未遂で終わりましたが・・・その事にリーゼ様はお心を痛められたらしく、自分から側室を降りて姿を消したそうです。おそらく自分がいなくなれば側室を誰も取らないということに出来ると考えてのでしょう」
えっと・・・つまり母さんは王妃さまと王様に申し訳なくて姿を消したのかな?
「お母様らしいというか・・・」
「ええ・・・お心が優しい方ですから・・・」
ふと、懐かしい表情を浮かべるユーリ。
「あのさユーリ・・・」
「レオン様。到着しました」
もう少し深く聞こうかと思っていたタイミングでどうやら到着してしまったらしい。
仕方ないから今度聞くか・・・
正直、この世界の地理とかは詳しくないからここが本当にマスタール王国なのかどうか判断はつかないが・・・ちらりと見えた限りでは確かに立派な街並みだった。
外に出ると物凄い数の兵士がいて・・・正直普段着の僕の場違い感が半端ないんだけど・・・
「どうぞ、お進みくださいレオン様」
ユーリに促されて並んだ兵士の間を歩く。
なんていうか・・・本気で自分が重要人物のように思えてくるのが不思議だな・・・
そんな感慨に捕らわれながら大きい城の中に入る。
そう城なんですよ。
まさしく王宮と言われて納得できる立派な概観の城は圧巻の一言に尽きるけど・・・本気で僕がここにいていいのかわからない・・・
しばらく進むと一つの扉の前で兵士さんに止められた。
「レオン様。こちらになります」
「えっと・・・ここに王様が?」
「はい。最初はご家族のみで・・・とのことなので我々はこちらで待機します。何かございましたらお声掛けください」
ユーリはそう言ってそこで頭を下げた。
あれ?じゃあ、ここからは僕一人なの?
戸惑いつつも僕は仕方なく扉に手をかけて開けた。
中はやはりというか豪華な作りであちらこちらに高そうな物が並んでいる広い部屋だった。
そして、室内には壮年の男性と若い女性・・・そして、僕より少し年上に見える男女と僕より年下に見える幼い女の子の5人がいた。
「えっと・・・失礼します?」
最初の言葉が思い付かずに僕はそう言ってから後悔した。
やべ・・・不敬罪とか大丈夫かな・・・?
そんなことを考えてはいたが誰も気にした様子はなく、壮年の男性が笑顔を浮かべてこちらを見た。
「よく来てくれたね。君がレオンだね?」
壮年の男性は優しげな声でそう聞いてきた。
薄い茶髪と髭の似合うダンディーなおじさん・・・そして瞳の色は僕と同じエメラルドグリーンの色。
もしかしてこの人が・・・
「そう・・・本当に・・・」
そんなことを考えていたらそのダンディーな男性はわなわなと震えてからがっと立ちあがり、勢いよく・・・僕に抱きついてきた。
「はぁ・・・?」
「会いたかったぞ~!レオン~!母さんに似て美人だな~!!男だと聞いてたのにこんな美人だとはな~!!」
「あ、え、あ、あの・・・?」
「ああ・・・リーゼそっくりだ!!瞳は私の色だが、髪と顔・・・それに声も昔のリーゼを見ているようだ・・・可愛いな・・・!!」
なんだろうこれ・・・見ず知らずのダンディーなおっさんに抱きつかれている僕。
まあ、でもハッキリとわかったのは・・・この人が僕の父さんなのだろうってことかな?
♪♪♪ピロリロリン♪♪♪
父親からの溺愛フラグが立った
お父様はレオンくんのことが大好きなのです。
まあ、リーゼにそっくりだからでもありますが・・・