4 予期せぬお迎え
本日4話目。
ここから物語スタートです。
母さんが死んでから3年・・・僕は13歳になった。
子供一人での生活は思っていたより大変ではあったけど、母さんにベッタリとくっついていたお陰か生活で困る点はそれほど多くなかった。
仕事も母さんの編み物を引き継いで収入を得ている。
割りと要領が良かったのか、母さんが亡くなる前には僕は母さんと変わらない出来のものを作れるまでに腕を上げていたので本当に母さんに感謝だ。
家事も母さんの手伝いをしていたお陰なのか母さんと同じくらいまでには家事の腕も持っていた。
まあ、ある意味前世の記憶があるからこそ、要領良く覚えられるからある意味チートなのかな?地味だけど・・・
母さんが死んだ時には涙が枯れるほど泣いた僕だけど、今はそれも立ち直れた。
勿論母さんのことは悲しいけど・・・前を向かなきゃ母さんに怒られそう・・・いや、拗ねられそうだから頑張っている。
あ、変わったこともあったかな?
幼馴染みの女の子のミーシャが良く遊びに来るようになった。
僕のことを心配してくれているのか結構頻繁に顔を見せてくれる。
ミーシャの両親も僕の母さんと仲が良かったからか、時々僕の様子を見たり何かと世話をやいてくれる。
まあ、他にもいくつか変わったことはあったけど・・・比較的平和な日々を僕は過ごしていた。
一人で過ごすのが少し寂しいとは思ったけど・・・それでも前世で誰もいなかった生活に比べれば一時期母親がいただけでもうれしいものだ。
しかし、そんな平和な日々は唐突に終わりを告げることになる。
それはとある日のこと。
いつものように編み物をしていると何やら外が騒がしくなり僕は様子を見るために外に出て・・・驚愕した。
外にはまさしく貴族の乗るような馬車とその周りに何人もの甲冑を着た騎士と思われる集団がいたのだ。
しかも何故か僕の家の前に・・・
驚いていると、何人もいる騎士らしき人の中から赤い髪の綺麗な女騎士さんがこちらにやって来た。
「レオン様・・・ですね?」
「えっと・・・確かに僕はレオンですけど・・・」
その女騎士の凛々しい声にも驚いたが何より初対面の騎士に様つけで呼ばれたことで戸惑いながらも僕は答えた。
すると女騎士は地面に膝をついて頭を下げて・・・えっ?
「お初にお目に掛かります。私はマスタール王国第三騎士団長のユーリ・フレクジアと申します。お会いできて光栄ですレオン殿下」
「はぁ・・・どうも・・・って、殿下?」
何やら聞き慣れない単語・・・というかあり得ない言葉を聞かされて僕はかなり困惑した。
殿下ってあれだよな?王子とかの呼び方。
「あのー・・・殿下って・・・」
「はい。レオン様はマスタール王国の国王の第7子・・・マスタール王国第7王子なのです。」
「はい・・・・?」
あまりのことに頭がフリーズする。
王子?僕が?
「えっと・・・人違いとかでは・・・」
「いいえ。あなたですレオン様。貴方は確かに我が国王のお子です。お母上の名前はリーゼ様ですよね?」
「そうですけど・・・」
「お母上に聞いていらっしゃらないのですか?」
「えっと・・・母は3年前に他界しまして聞いた覚えはないですが・・・」
「なっ!?本当ですか!」
その言葉に女騎士さんは顔を驚愕に染める。
「ええ。」
「で、では今はどなたと暮らしているのですか?」
「基本は一人ですよ?村の人が良くしてはくれますが生活は自分でしてます。」
「なんと・・・」
女騎士さんは悲しげな表情を浮かべた後に慌てたように・・・土下座した。
「って、え!?な、何を・・・」
「申し訳ありません!私どもがもっと早く見つけていればレオン様にいらぬ苦労をさせずにすんだのに・・・!」
「い、いや大丈夫ですから頭を上げて・・・」
「ようやく・・・ようやく我が主を見つけたと思ったら・・あなたはさぞ苦労をなされて・・・この償いは我が身を持って・・・」
「しないでください!って、主?」
あまりの勢いに流されそうになっけど意味不明な単語が聞こえていた。
「はい。あなたは私達第三騎士団のお仕えするべきお方。行方不明になっていたリーゼ様とあなたを見つけるために私どもは各地を回っていたのです。」
「えっと・・・じゃあ、ほんとに僕が王子なんですか?」
「はい。勿論です!」
半信半疑ではあったけど・・・何やら目の前の女騎士さんがあまりにも真剣なのでマジな話っぽいと感じた。
「とにかく、一度国へお越しください。国王陛下もお待ちです」
「えっと・・・今からですか?」
「はい!」
どうしよっかなーと考える。
今月の編み物の納品分は終わってるし洗濯物も乾いて取り込んであるし、昼はまだ作ってないし・・・まあ、とりあえず大丈夫かな?
「えっと、わかりました。」
「ではさっそくあちらへお乗りください!」
そうして案内されたのはやたら豪華な馬車。
貴族の乗りそうなやつ。
「あの・・・ほんとにこれに乗るんですか?」
「当然です!レオン様は王子なのですから!」
「他には誰が乗るんですか?」
偉く広い馬車は一人で乗るにはあまりにも寂しいのでそう聞いてみたが不思議そうな顔で女騎士さんは返事をした。
「レオン様と・・・お世話に私が乗ります。本日は従者はお連れしてないので私がレオン様のお世話につかせて頂きます。」
「そ、そうですか。えっとじゃあ・・・よろしくお願いします。ユーリさん」
「レオン様。私のことはどうぞ呼び捨てに。敬語も不要です」
「え?でも・・・」
「お願いいたします!」
「土下座は止めてください!わかりました。わかりましたから!」
まあ、そんなこんなで・・・僕は偉く豪華な馬車に乗って王様に会うことになった。
何故だ・・・