24 想いを宿す力
本日2話目です。
翌朝・・・いつものようにベッドでミラお姉ちゃんとアリシアに枕にされているはずの時間帯・・・僕は何故か朝日が昇る直前の空を見ながらランニングしていた。
というのも・・・昨日うっかりにも、お祖母様と話した後に爺ちゃんが「一緒に朝走るか!」と言ってきた時に、あまりのお祖母様の話の内容の衝撃が大きかった僕はそれに生返事してしまい・・・後で気づいた時にはすでに決定事項になっていて、そのまま次の日、ユーリに静かに起こされて今走っている。
「いやー朝はやっぱり清々しいなー!」
前を走る爺ちゃんがそんなことを言っているが・・・僕としてはこの時間は本来寝てるので非常に眠い・・・
思いの外スペックの高い僕の体は鍛えてなくてもそこそこ運動神経がいいらしくて、足もそこそこ速いけど・・・朝から走るのはキツい・・・
爺ちゃんは僕のペースに合わせているらしくて全然余裕そうだ。
流石に筋肉がついてるだけはあるけど・・・この人の年齢でこんなに元気なのは多分爺ちゃんくらいだろう。
そんなことを考えていると爺ちゃんは「ところで・・・」と走りながら余裕そうに聞いてきた。
「レオンは剣は使わんのか?」
「剣ですか・・・包丁かナイフしか持ったことないですね・・・!」
僕もなんとか返事をするけど・・・結構ギリギリの速度なので少し口調も荒くなる。
そんな僕に爺ちゃんは「ほほう・・・」と頷いた。
「まあそうだろうな・・・剣に興味は無いのか?」
「興味・・・ですか・・・?」
「男なら剣を見れば格好いいと思うだろ?」
その質問に確かにと少し思った。
まあ、全ての男がそうとは言わないが・・・やっぱり少なくとも僕はそこそこ憧れもしたし、異世界というワードには剣がつきまとった程に興味はあるけど・・・
「僕には・・・早いって・・・リーゼお母様に・・・止められました・・・!」
前に一度村に住む剣の扱いが上手い人に教わってたみたけど、一日で止められた。
「レオンには早い!」って、珍しく慌てていたし、過保護なのは知ってたけど母さんがその時はかなり強めに止めたので諦めた。
それからは特に気にしたこともなかったけど・・・
そう思っていると爺ちゃんは「やはりか・・・」と呟いてからこちらをチラッと見た後に言った。
「なら、少しやってみんか?」
「やるって・・・」
そこで爺ちゃんは歩幅を少しずつ緩めてから止まってこちらをみてニヤリと笑ってから言った。
「剣の扱いをだよ」
それから数分後・・・僕は場所を移動して爺ちゃんがどっからか持ってきた剣を握っていた。
西洋風の柄の剣で、長さも僕に丁度いいくらいのものだけど・・・刃物は包丁かナイフしか持ったことないから不思議な気持ちだ。
「じゃあ、とりあえずワシの動きを見て真似てみな」
そう言ってから爺ちゃんはふうと・・・息を吐いてから途端にスイッチが変わったように視線を鋭くした。
そこからの爺ちゃんの動きはまさに圧巻だった。
一つ一つの動きが力強く、まるで本当に相手がいるかのように剣をふる爺ちゃんの姿に・・・僕はただ見つめることしか出来なかった。
剣の演舞などを少し見たことはあったけど、それとは違う。
優雅さなどではなく、そこにあるのは力強く必死な動き。
ただ、生き残るために培われたような一撃一撃が芯に届いてそうな剣の動きを見ていると、やがて爺ちゃんは息を吐いてからこちらを見た。
「よし、今度はレオンの番だぞ?」
・・・・うん。それって、今の動きをやってみろと?
無理ゲーだろ・・・いや、真似るだけなら出来るかもしれないけど、なんていうか・・・
「なんか・・・今の爺ちゃんの動きを真似しかできませんが・・・それでもいいですか?」
「どういうことだ?」
「なんていうか・・・僕には今の爺ちゃんみたいなことは出来ない・・・というか、さっきの爺ちゃんみたいな剣の力強さは出せないような気がして・・・腕力とかじゃなくてなんていうか気持ち的なものというか・・・」
上手く言えないけど、爺ちゃんのさっきの剣に何かを守ろうとするような必死なものがあったように見えた。
形だけなら僕にも出来るだろうけど・・・気迫的なものが僕には到底真似できないように思えた。
僕の要領の得ない答えに、しかし爺ちゃんは嬉しそうに頷いた。
「ふむ・・・確かにワシは剣を振るときは常に己の大切なものを意識して降っている。守りたいものを強く意識することにより、剣には力が宿るからな」
「大切なもの・・・」
「そう・・・まあ、今はそこまでは考えなくてもいい。とりあえず形だけで構わない。いずれそれは見つければいいからな。でも・・・」
そこで爺ちゃんは僕に近づいてくるとぽんと僕の頭に手を乗せて力強く撫でながら誉めてくれた。
「よくそこまで見抜いたな。流石はワシの孫だな!」
二カッと笑いながら誉めてくれる爺ちゃんに僕は少し恥ずかしくもあったけど・・・それよりも嬉しかった。
「まあ、とにかく真似出来るならしてみろ」
ひとしきり誉められてからそう言われて僕はとりあえず爺ちゃんの動きを思い出しながら剣を降ってみる。
慣れない剣の重さに戸惑いながらもなんとか爺ちゃんの動きを真似てみるが・・・やはり筋肉のつき方が違うせいもあって、全く同じには出来なかった。
なので、僕はできる限り体に負担の掛からない・・・腕力を使わないように全身を柔らかくして剣を降ってみた。
必死になってやっていると、一通りの動きが終わり、僕は一つ息を吐いてから爺ちゃんを見ると・・・少し驚いた表情をしていた。
「どうかしたの?」
不安になって聞いてみると爺ちゃんは珍しく慌てたように「なんでもない」と言ってから二カッといつもの笑みを浮かべた。
「少し驚いてな・・・ここまで呑み込みが早いとは・・・順調に行けばその内ワシ以上に強くなれるだろう」
「爺ちゃんはどのくらい強いのですか?」
「うーん・・・まあ、魔族と剣でやれるくらいかのぅ・・・」
それなんて化け物?
魔族には魔族があるのに、それと剣で戦えるとか・・・やっぱり爺ちゃんもかなり強いんだねぇ・・・
でも・・・
「なら・・・あんまり僕は剣を振らないでおきますよ」
「ほう・・・何故か聞いてもいいか?」
面白そうにそう聞いてくる爺ちゃん。
それはもちろん・・・
「僕が強くなるのはもちろん良いことなのかもしれないけど・・・それ以前に僕は争う気持ちもないですから。それに・・・守ってくれる人がいるのに強くなるなんて、守ってくれる人に対して失礼ですから」
頭のなかでユーリの姿が浮かんでくる。
彼女は僕を守ると誓ってくれた。
なら、僕はそれを信じて彼女に全てを任せる。
勿論力は必要かもしれないけど・・・そんな事態にならないようにするのが一番だろう。
そう思ってそう言ってみると、爺ちゃんは懐かしいものを見るような視線を向けてきた。
「そうか・・・やはり親子だな・・・よし!なら、とりあえず自衛は出来るようにしておけよ?今から教えてやるからな!」
「はい!」
それなら確かに必要かもしれない。
もしもの時に多少知っていれば違う知識は貰っておいて損はないだろう。
そうして、その後で僕はしばらく爺ちゃんに護身術を教えてもらったけど・・・疲れた体でその後に待ち受けるアリシアとミラお姉ちゃんへのご機嫌とりのことをすっかり忘れていて後悔することになるのはもう少し後のことだった。
※度々になりますがこの作品はあくまで平和な王子生活メインの話です。主人公がいきなり覚醒してバトル展開には・・・多分なりません。




