23 心に残るその言葉に・・・
「はぁ・・・疲れた・・・」
僕はベッドに寝転がりながらため息をつく。
結局あのあともまともに話ができることはなくて・・・仕方ないので後日もう一度ちゃんと僕に二人を紹介するということで解散になった。
というか・・・僕とユーリの妙な空気とか、僕の体力的なものが限界だったのがまあ、解散の理由かな?
体力的な消耗も中々だけど、精神的な消耗も凄いな・・・
ベッドの心地よさと疲労によって、自然とそのまま瞼が重くなって僕の意識は途切れてーーー。
「おう!レオン!風呂に入るぞ!」
ーーーしまう前に何やら凄い音で扉を開けて入ってきた爺ちゃんに起こされた。
ダルい体をなんとか起こしてみると・・・そこには満面の笑みの爺ちゃんとそんな爺ちゃんに呆れてるお祖母様がいた。
「あなた・・・もう少し静かに扉を開けなさいよ。レオンが驚いてるでしょ?」
「ん?ああ、すまんな。それよりも・・・レオン風呂だ!」
「お風呂・・・ですか?」
まったく分からないけど・・・一緒に入れってことかな?
爺ちゃんに話が通じるか分からないので隣のお祖母様に視線を向けてみると、お祖母様はやれやれと言わんばかりの表情を爺ちゃんに向けてから僕に言った。
「レオン。折角なので私達とお風呂に入らない?ここでは話しにくいこともあるだろうし・・・」
お祖母様の言わんとすることをなんとなく察してから僕は頷いた。
「わかりました。行きましょう」
「そう?ありがとう」
「じゃあ、行くぞ!」
嬉しそうに笑う爺ちゃんとお祖母様に連れられてお風呂へ向かう。
失敗した・・・
「ふう・・・やっぱり本邸の風呂はいいわねぇ・・・」
「そ、そうですね・・・」
湯船に浸かりながらそう呟くお祖母様に僕は視線を向けないようにして答えた。
本気で今あんなにあっさり返事したことを後悔してるよ。
よく考えたら、お祖母様の外見はめちゃめちゃ若いんだからもっとよく考えたら良かったのに・・・!
しかも、タオルだけでも巻いてくれたら良かったのに、そこはやっぱり家族という感じからか、日本と同じように「湯船にタオルを入れるのはマナー違反」らしくて若々しいお祖母様が全裸で僕の隣にいる。
ハッキリ言って目茶苦茶気まずい・・・母さんと風呂に入ったことはあったけど、母さんの全裸は幼い頃からの慣れでなんとかなるが、他の女性だとそうはいかない。
こんな時に夫である爺ちゃんがいれば壁にも出来たのに・・・爺ちゃんったら入って早々に「筋肉の手入れをせねば!」とか言ってどこかに行っちゃうし・・・筋肉の手入れってなんだよ!
そんな僕に構わずお祖母様が会話を続ける。
「あっちこっち飛び回ってると家が恋しくなるからねぇ・・・特に魔国は風呂の文化があんまり浸透してないから・・・」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、魔族には魔法があるからいらないのよね・・・まあ、私たち“魔女”もその気になればいらないけど・・・まあ、そこは人間だからね」
その言葉に思わず反らしていた視線をお祖母様に向けてしまい・・・再びお祖母様の裸が見えると慌てて反らして聞いた。
「やっぱり、お祖母様も“魔女”だったんですね」
「そうよ。まあ色々噂にはなってるから知ってるかと思ってたけど・・・聞いたわよ?ミカエルと婚約するって話。」
「知ってましたか・・・」
「まあね。色々私たちも情報が入ってくるし、ミカエルとはそこそこ長い付き合いだからね・・・ミカエルったら嬉しそうに報告してくるし・・・まあ、今にして思うと可愛い孫をそんな簡単にやるのは釈然としないけどね」
くすりと笑ってそう言ったお祖母様。
ある程度予測してはいたけど、やっぱりお祖母様は“魔女”だったのか・・・しかもミカエルさんのことまで知ってるなんて・・・
「お祖母様はリーゼお母様のことは・・・」
「リーゼのこと?まあ、あの子に“魔女”としての教育をしたのは私だからねぇ・・・色々知ってるわよ?」
「そうなんですか・・・あの・・・どうして“魔女”のお母様がマリア母上の侍女をしていたんですか?しかもお父様と結婚までして・・・」
ずっと気になってたことだ。
どういう経緯で“魔女”である母さんが母上の侍女をしていたのか・・・どうしてお父様と結婚したのか。
お祖母様は僕の問いに対して「うーん」と少し唸ってから答えた。
「元々は、ミカエルから話を聞いたのが始まりかな?昔からの知り合いのミカエルが嬉しそうに『可愛い“魔女”の友達が出来た』って話してくれて興味を持った私が調べてリーゼを見つけた・・・それから、次の国王になる予定のレイスの婚約者の侍女がリーゼだって知ってから時間を見つけて色々教えてあげたのよ。あの頃のリーゼも可愛いかったわねぇ・・・」
「つまり、お母様は元々マリア母上の侍女だったんですか?」
「ええ、そうよ。面白い偶然・・・だったのかな?まあ、まさかミカエルと友達になるなんて私としては予想外ではあったけどね」
「予想外?」
ミカエルさんが母さんと友達になるのがそんなに変なのかな?
そう思ってるとお祖母様は少し悲しげな表情をしてから口を開いた。
「ミカエルは・・・かなり特殊な立ち位置にいるからか、あまり他人に興味を抱かないのだけど・・・そんな彼女が『友達』とまで認めるリーゼ・・・私はそんなリーゼが本物の自分の子供と同じくらいに愛しかった・・・」
「お祖母様・・・」
「リーゼの話を聞いてね、私はかなりの悲しみに襲われたけど・・・それでも一つだけ良かったこともあるのよ」
そう言ってお祖母は僕に笑みを浮かべた。
「あなたよレオン。あなたが生きていてくれる・・・それが私達にとってかなりの希望になったの。リーゼの息子・・・リーゼの子供というのはそれだけ貴重な存在な上に特殊ではあるけど・・・それでも、可愛い孫だと思ってるわ」
そう言って頬笑むお祖母様はどこまでも慈愛に満ちた瞳をしていた。
こんな瞳を以前も見た気がする。
そう・・・初めて会った母上や母さんも似たような慈愛に満ちた瞳をしていた気がする。
これが母性的なものなのかな?
そんなことを考えていると、お祖母様はゆっくりと僕に近づいてきてそのまま僕を抱きしめ・・・って、ええ!!
「あ、あの・・・お祖母様?」
裸なのを意識してしまう程に柔らかい感触を感じてしまうが、お祖母様は構わずそのまま僕を抱きしめる。
「いいことレオン。リーゼの息子であるあなたにはいずれ様々な困難があるかもしれない。あの子はなんでか人を惹き付ける魅力があったし、事実あなたにもあるから。でもね・・・」
優しく抱きしめながら僕の頭を撫でるお祖母様は・・・どこまでも優しく言葉をかける。
「あなたは望まれて・・・愛されて生まれてきたの。それだけは忘れちゃダメよ?」




