閑話 アリシア・マスタールの真実の色
本日7話目です。
アリシア・マスタールという女の子のことを語れといえば誰もが言葉に詰まるだろう。
マスタール王国の第8王女。大人しい姫君。
そんな言葉しか出てこないと言ってもおかしくない。
アリシアが公の場に姿を表すことはほとんどない。
それは夜会の年齢的なものではなく・・・単純に行事などでもあまり姿を表さないということだ。
もちろんその手の王族の参加する行事には出席することもあるが・・・やはり他の兄弟の影に隠れてしまうのでしっかりと姿を見れることがあまりない。
大人しい姫君。恥ずかしがりやな性格。そんな噂があるがそれはある意味正しいだろう。
とはいえ・・・彼女の本質がそこにあるかと問われると・・・答えはNOだ。
アリシア・マスタールという女の子の本質はどこまでも純粋な真っ白なものだと表現できる。
それはありのままの意味でもあり・・・比喩のような表現でもある。
アリシアには昔から奇妙な力があった。
人の感情が色で見える・・・所謂魔法・・・アリシアにはミラと同じように“魔女”の才能が若干あったのだ。
もちろん本人はそんなことは知らずに、ただなんとなく本能的に感じているのたが・・・そんな彼女にとって世界は恐怖しかなかった。
彼女の回りの人間には幸いにもあまり邪な色はなかったが・・・それでもやはり彼女にとって、人の感情が見えるとは恐怖でしかない。
幼い頃からのその現象に妙に聡いアリシアはすぐに気がつき・・・いつしか人間というものがわからなくなった。
父の前で頭を垂れる男が・・・敬愛と忠誠と口にする男が・・・愛してると囁く恋人達が・・どれも真っ赤な嘘でしかないとアリシアにはわかった。
実際の言葉と裏腹な感情ばかりの人間にアリシアは恐怖して・・・特に家族でもそんな感情があるとわかってからは誰も信じられずアリシアは孤独の中で暗い色を見ていた。
それでもアリシアの心が真っ白なままでいられたのは・・・やはりどこかに自分の考えを否定してくれる・・・物語の王子様のような存在がいてくれるーーーいてほしいという願いがあったからだろう。
そして彼女は出会ったーーー運命に。
彼女が最初にレオンに抱いた感情は未知だった。
容姿もどこか人間離れした美しさを持っていたし・・・なにより、彼の色はどこまでも真っ白なままなのだ。
普通なら感情が動いて色が変化するはずなのに・・・レオンの色はどこまでも真っ白なままなのだ。
そのことにアリシアは逆に恐怖した。
未知の存在・・・自分の知らないものに彼女は怯えるが・・・・そんな彼女にレオンが掛けた言葉と感情はどこまでも優しく包み込むようなものだった。
そんなレオンを見て彼女は思った。
ーーーああ、お兄様が私の運命の人なのだーーーと。
今でも世界は怖いとアリシアは思う。
しかし・・・彼だけは優しい色だとアリシアは感じる。
真っ白な銀色の少年ーーーお兄様。




