2 小さいが確かな幸せ
本日2話目
異世界に転生してからかれこれ5年・・・僕は何事もなく平和に暮らしていた。
この世界での僕の名前はレオン。
貴族とかなら家名があるらしいけど、平民の僕は名前だけらしい。
母親の名前はリーゼと言って、年齢は今年で25歳になるらしい。
ハッキリ言おう。メチャメチャ若いです。
母さん(心の中の呼び方はこれで、本人の前では《ママ》と呼ばないと拗ねるのでママと呼んでいる)は昔はどこかの貴族の家でメイドをしていたらしくて、平民とはいえ立ち振舞いも上品で、誰にでも優しくて、僕達が住んでいる村では人気だ。
残念ながら父親は何か事情があるらしくていないけど・・・前世で一人も家族がいなかった僕にとって、母さんだけでもとても嬉しかった。
そんな母さんは僕のことを大層可愛がってくれている。
いや・・・ハッキリ言って溺愛されているようだった。
「レオン大好きよ~!」
そう言われて抱きつかれるのは日常茶飯事。
この年になっても一緒にお風呂に入るし寝るのも一緒。
村に近い年の子供が少ないのも理由かもしれないけど、僕は一日中母さんと一緒にいることが多い。
仕事も母さんは編み物を得意としていて、それで収入を得ているようで、家にいることが多いので僕は側で母さんの手伝いをしたり、疲れた母さんのクッションにされることがほとんどだ。
「はー・・・やっぱり、レオンは抱き心地がいいわね~癒されるわ~」
ホッコリとした顔でそんなことを言う母さんを見ていると不思議と嬉しくなる。
まあ、少しだけ過剰なスキンシップかもとは思うけど・・・誰かに愛されているというのはなんとも心地良いと思えて自然と笑顔で受け入れられた。
これが仮に前世で普通に親がいたとかなら違和感があったりもするかもしれないけど、僕にとって記憶にある初めての母親ともなればある意味新鮮な気持ちになれた。
まあ、とはいえ勿論時には友達と遊びにも行くよ?
ただ、近所には僕より年上の子供か赤ちゃんしかいない上に、年上の子供もほとんど女の子なのであまり遊ぶ機会がないのだ。
一応、同性の年上のお兄さんのラスティーという少年がいるのだけど・・・彼はなんというか・・・僕のことを女の子のように扱うというか・・・こないだ会ったときも、「レオンは将来は俺の嫁になれよな!」とか訳のわかないことを言われたのであまり遊びたくはない。
た、多分冗談だと思うんだけどね?
やたら熱の籠った視線とか、妙に僕の体を触ってきたりとかするけどきっと大丈夫!なはず・・・
ま、まあ、あとは近所には年上の女の子が何人かいるけど、彼女達も僕のことを着せ替え人形のように扱ったりするので少し苦手だ。
うっかりその事を母さんに話した時には後で後悔したほどだ。
「レオンは女の子の格好も似合いそうね~!」
そんなことを言われて女装させられた時には流石に半泣きで止めてと懇願しましたよ。
母さんの頼みなら聞いてあげたいけど女装は流石に・・・
まあ、自分で言うのもなんだけど、確かに似合っていた。
まだ5歳だからかもしれないけど、幼い顔立ちに母親譲りの銀色の髪・・・瞳は鮮やかなエメラルドグリーンの瞳なのでそこは似なかったけど、全体的に母親譲り美貌を貰った僕はハッキリ言ってぱっと見男には見えない。
幼馴染みのミーシャからは「レオンが女の子に生まれなかったのは悲劇よね」と言われたくらいだ。
初対面の人には間違いなく、「可愛い娘さんですねー」と言われるくらいだ。
まあそう言われる度に母さんが「そうでしょう!可愛い息子なんです!」と言って相手を驚かせることがしょっちゅうなのだが・・・
まあ、それはさておき、僕は平和に過ごしていた。
これが前世で読んだ異世界転生ものなら、前世の知識や転生して得た力でチートしてハーレム作ったり、あるいは魔法とかがあればそれを研究したりするんだろうけど・・・残念ながら僕にはチートな力も生かせるほどの知識もないので出来ない。
魔法についてもこの世界には一応あるみたいだけど・・・使えるのは一部の人間のみでそれも“魔女”と呼ばれる女性しか出来ないらしい。
まあ、少し残念ではあったけど・・・正直僕はそれは対して気にしてはいなかった。
優しくて美人な母親と一緒に過ごせる・・・それだけで僕は満足だった。
こんな生活がずっと続けばいいのに・・・そんなことを考えていた頃にそれは起こった。
母さんが病気で倒れたのだ。