11 提案と一目惚れ
ロイン兄さんの婚約者さんの妹と名乗ったイリナと共に僕は今、場所を変えてお茶を飲んでいるーーーのだけど、正直空気があまり良くない。
その最たる原因は僕の後ろに控えながらいつもより険しい表情を浮かべるユーリとイリナの後ろに控えながらこちらも敵意を丸出しにするリュミエルが原因だ。
あのあと、移動しようとしたところでユーリが僕を見つけてやって来たんだけど・・・リュミエルを見つけてからずっとこの調子で正直居心地が悪い。
イリナは慣れているのか気にしないでお茶を飲んでいるけど・・・この子結構な大物だね。流石公爵令嬢というか・・・同い年のはずなのに大人びて見えるね。
「と、ところで・・・イリナはロイン兄さんとは仲良しなの?」
あまりの空気の重さに耐えかねて僕は自分から話題を出すことにした。
さっき、ロイン兄さんのことを「お兄様」とか呼んでたし結構親しいのかな?
「お兄様・・・ロイン様とはお姉様の婚約者ですから時々会ってお話ししますわ。あなたのこともお兄様は嬉しそうに話しておられましたわよ?」
「僕のことを?」
「ええ、お兄様は『新しく可愛らしい弟が出来た』とそれはそれは嬉しそうに話しておられました。そんなあなたに私とお姉様は興味がありましたの。ロイン様が人のことを語るなんてあまりありませんから」
「そうなんだ・・・」
正直少し嬉しかった。
ロイン兄さんにそんな風に思われていたのか。
「それにしても・・・」
そんな風に照れているとイリナは唐突に立ち上がって僕の方に歩み寄ってきてーーー真っ直ぐに僕の前に立つとそのまま僕の頬に手を添えた・・・・って、え?
「あ、あの・・・?」
「本当に綺麗な肌・・・髪も銀色なんて初めて見たし・・・」
まじまじとこちらを見つめるイリナに僕の頬は赤くなる。
顔が近い!正直、家族以外でここまでの美少女にこんなに接近したことないから照れるんだけど・・・
そんな僕の内心など露知らずイリナは満足そうに頷いた。
「やっぱりあなたがいいですわね・・・決めましたわ!レオン様」
「は、はい・・・」
「私と結婚してくださいまし!」
「・・・・・・はい?」
その言葉の意味が一瞬理解できなかった。
けっこん・・・ケッコン・・血痕・・・結婚?
「あの~・・・・結婚って結婚ですか?」
「そうですわ!男女が夫婦になる結婚ですわ!」
「えっと・・・何故僕に?」
会って間もない男に結婚申し込むとか意味が分からないんだけど・・・
そんな僕の疑問にイリナは少し考えてから答えた。
「色々理由はありますが・・・一番はあなたが私好みの顔だからですわ」
「えっと・・・顔だけで決めるのは止めた方がいいと思うよ?僕が嫌なやつかもしれないし、それに女の子がそんな簡単にそういうこと言うのはどうかと・・・」
その言葉を聞いてイリナはくすりと笑った。
「本当に嫌なお方はそんなこと言いませんわよ?それにこれでも私は、公爵令嬢・・・結婚相手を見る目は鍛えられてますわ。その私が思うに・・・あなたはとても誠実で優しくて・・・可愛らしいお方だと思いますの」
真っ直ぐにそんなことを言われると途端に僕は照れてしまう。
けど、どうしたものか・・・
「ほ、他の兄弟の人は・・・」
「皆さん私より年上ですわ。それに私はあなたと同じ13才ですから年も近いのですわ」
「えっと・・・僕は最近王子になったばかりだからあんまり王族らしくないんだけど・・・」
「大丈夫ですわ。社交界などは私が得意ですし、これでも人脈には自信がありますの。レオン様は私の夫として堂々とされるだけでいいですわ」
どうしよう・・・逃げ道が潰されていく。
悩む僕にイリナは不安そうな表情を浮かべた。
「それとも私ではレオン様には釣り合いませんか?レオン様が私のことをお嫌いなら諦めますが・・・」
「い、いや・・・消して嫌いとはではないよ!イリナは美少女だし、可愛いし」
「そ、そうですの・・・ありがとうございます」
なんか勢いで変なことを口走った気がする・・・イリナも照れたような顔をしてるし・・・
「えっと、とにかくイリナが嫌いとかではなくて・・・僕が結婚とか考えられないだけなんだ。その・・・そういうのはきちんと責任を取らないとダメだと思うし、中途半端な気持ちじゃイリナにも失礼だと思うから・・・」
「レオン様・・・」
そう、本当に情けない理由だけど、僕には結婚の意識・・・覚悟みたいなものがない。
もちろんイリナは美少女だしうれしい話ではあるけど・・・中途半端な気持ちでは相手に失礼だと思うし、僕はまだ誰かを幸せに出来るとは思えない。
僕の下手な説明にイリナは納得したような頷いてくれた。
わかって貰えたのかな?よかったーーー
「分かりましたわ・・・ではとりあえずお父様から婚約の話だけそちらにお願いしますわ」
あまり分かってなかった。
「え?あの~イリナさん?」
「そうですわよね。まずは婚約者として接してゆくゆく結婚ですわよね。私としたことが失敗しましたわ」
「いや、あのそうじゃなくて・・・」
「さっそくお父様にお願いしなくては!ではレオン様ごきげんよう!」
「ちょっ!?イリナ!」
僕の静止の声を無視してイリナは一目散に去っていった。
リュミエルもこちらに頭を下げたあとにユーリを睨んでから去っていく・・・・
「えっと・・・ユーリ。本気だと思う?」
残された僕は先程からリュミエルが去った方向を親の敵のように見つめるユーリに聞いてみた。
ユーリはその声に慌てたようにこちらを見た。
「そ、そうですね・・・あの方は結構な行動力なのであり得るかと・・・」
「そっか・・・どうしよう・・・」
とりあえず届ける途中だったクッキーを届ける方がいいかな?
そんなことを思いつつ僕は残った紅茶を飲んだ。
ヒロインからの先制攻撃!
効果は抜群だ!




