閑話 面影と思い出と愛情の狭間で
本日2話目
お父様と母上の話。
作者は以外と母上が好きです!
夜・・・仕事を終えたマスタール王国国王のレイス・マスタールは妻のマリアと自室で酒を楽しんでいた。
レイスは元々お酒が好きでよく飲んではいるが・・・この日は普段は飲まない妻のマリアも一緒に飲んでいた。
「しかし・・・本当にそっくりだったな・・・」
グラスに口をつけてからレイスは頬笑みながらそう言った。
マリアはそれが何のことか主語がなくても伝わっていた。
ひと口グラスの酒を飲んでから微笑んで頷く。
「そうね・・・レオンは本当にリーゼにそっくりだったわ・・・」
レオン・・・それは二人の大切な家族でありーーー愛する人の遺した大切な存在だ。
赤ん坊の頃に一目見てから何年も経過してからの再会にはなったが・・・レイスとマリアにはそれがレオンであるとハッキリとわかった。
「本当・・・俺の遺伝子なんて目にしか現れてないようだったしな・・・」
「あら?そんなの当たり前でしょ。あのリーゼの子供なんだからあなたの遺伝子じゃ勝てないわよ」
酔いが回ってきたから口調が砕けて一人称も「俺」になったことに苦笑しながらも当たり前の事実を告げるマリア。
妻のあまりにもな言いようにレイスは何か言うか悩んだが・・・よく考えると紛れもない事実だから必要ないと判断した。
「まあな・・・本当に可愛いかったよ」
代わりに再会した息子を思い出してデレデレとだらしない顔をするレイス。
子供がいれば注意するはずのマリアもそれを受けて頷く。
「本当にね・・・私も我慢が辛かったわよ。あなたばっかりレオンに抱きついていて・・・ずるいわよ?」
拗ねたような表情の妻にレイスは苦笑する。
元々マリアはレイス以上にリーゼのことが大好きで・・・時々レイスが寂しくなるほどに二人の仲は良好だった。
生まれた時からずっと側にいて支えていた存在であり・・・同じ人を好きになった同士でもある彼女達の絆はレイスにもわかっている。
そんなリーゼの子供であるレオンをマリアが可愛いと思うのは至極当然のことだった。
「だからお前も意地を張らずに素直になればいいのに」
「そんなことしたら子供達にだらしないところ見せちゃうでしょ?まったく・・・」
マリアは確かに必要以上に意地を張ることもあるが、彼女なりに子供の前では凛々しい母親であろうとしている。
だからこそ、夫のように素直には行動できないが・・・そんなマリアのことをレイスは愛しく思っている。
「今日だって、ミラったらレオンとアリシアと一緒に寝るそうなのよ・・・ずるいわ!」
「そうなのか・・・俺も一緒に寝たいが・・・アリシアに嫌がられそうだな・・・」
「あなたはね。私はレオンが一緒に寝てくれるか心配だわ・・・」
アリシアは父親・・・というか男の家族にそもそもあまりなつかない。
だからこそ、最初にレオンがあんな短時間でアリシアになつかれたことがその場の人間にとってはかなりの衝撃だったのだ。
「レオンは凄いわ・・・本当にかつてのリーゼを見ているみたいで・・・」
「なあ、マリア。そろそろいいんだぞ?」
その言葉にマリアは凍り付く。
「何のことかしら?」
「俺を騙せると思ったのか?わかってるんだぞ・・・そろそろ我慢の限界なのは」
そう、マリアは常に気丈に振舞うが・・・レイスはそんなマリアの無理を見抜いていた。
その言葉にマリアは体の力を抜いてレイスに抱きつく。
「まったく・・・あなたは凄いわね・・・」
「まあな。それに・・・俺も辛いからな」
その言葉に・・・マリアはとうとう我慢出来なくなり涙を溢す。
溢れていたものを・・・抑えていたものを解き放つように。
「・・・・・リーゼ・・・なんでなの・・・・なんで・・・私を残していなくなっちゃったの・・・・なんで・・・なんでレオンを一人にしたのよ・・・・」
レイスの腕の中でマリアは涙を流す。
子供達の前、レオンの前では見せないでいた悲しみを夫にだけ明かして・・・
レイスは何も言わずにただマリアを抱き締めた。
彼の瞳にも涙を浮かべて・・・愛しい人の訃報に悲しみを感じながら・・・
決して子供には見せない悲しみで涙を流して・・・全部出し終えてから二人は新たに決意する。
愛しい人の忘れ形見・・・大切な家族を守ろうと・・・




