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ダンジョンのある風景  作者: はぐれうさぎ
第2章

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第13話 第3階層へ

「えっ、ダンジョンに挑戦できない!?

 探索者になるのをやめたの?」


 モンスターハウスをクリアしてから数日。

 いつも通り龍厳さんとの稽古に出向き、一緒になった美冬ちゃんから聞かされた言葉に驚きの声を上げる。


「いえ、探索者になるのを諦めたわけじゃないです。

 ただ、会社を辞めるのにちょっと時間がかかりそうなので、しばらくダンジョンには挑戦出来なさそうだなと。

 なので、達樹さんが他の方を探すのであれば、パーティーはあきらめようかなと思ったんです。」


「ああ、そういうことか。

 とりあえず、他にパーティーを組んでくれそうな人に心当たりはないから、美冬ちゃんを待つよ。

 別に年単位で時間がかかりそうとかじゃないんでしょ?」


「ええ、それはまあ。

 私の代わりに入ってきた人の教育を頼まれてしまったので、予定よりも1、2か月遅くなりそうというくらいです。」


 その程度ならおそらく問題ない。

 以前聞いていた話では、そろそろ会社を辞める時期だったはずだが、まあ中小企業の人手不足は俺にも心当たりがある。幸い俺の場合は、特に引き留められることなくやめることができたが、美冬ちゃんは無理だったということだろう。


「まあ、別に会社を辞めてからじゃないとパーティーを組めないというわけでもないし、余裕ができたら週末に試しにダンジョンに挑戦してみるのもいいんじゃない?」


「そうですね。

 引っ越しの準備とかもありますけど、良ければどこかのタイミングで一度試してみたいです。」


 そんな流れで、美冬ちゃんとパーティーを組むのはしばらくお預けということになった。

 一応、余裕があれば週末にでもパーティーを試してみるという話にはなったが、話を聞く限りではひと月くらいは待つ必要があるだろう。

 なので、しばらくは変わらずソロでの挑戦となりそうだ。




 さて、美冬ちゃんとパーティーを組むのが延期になったことで、こちらの予定も考え直さないといけない。

 元々、美冬ちゃんと合流するまでは第2階層でレベル上げをして、合流してから連携を確認しつつ第3階層へ進むことを考えていた。

 ただ、これが1、2か月遅れるというのであれば、おそらく合流する前に第3階層は余裕をもって攻略できるようになっているだろう。

 そうなると問題は第4階層だ。この階層には迷宮エリアがある。


 そもそも、誰かとパーティーを組みたいと考えた理由の一つにこの迷宮エリアの存在があった。

 なぜなら、迷宮エリアが高レベルの探索者であっても手間取ることが多いという話を聞いていたからだ。


 単純なモンスターの群れならばレベルさえ上げておけば対応することができるが、迷宮エリアにおいては自身の強さはあまり関係ない。

 もちろん最低限の強さは必要になるし、高レベルであればそれだけ危険性も減る。だが、迷宮エリアでは広範囲、長時間の探索を耐えるだけの精神力こそが必要になるそうだ。

 あくまでインターネット上の情報になるが、迷宮エリアの規模によっては探索だけで数日かかるケースもあるらしい。

 さすがに家のダンジョンの迷宮エリアがそんな大規模だとは思わないが、最悪日をまたぐくらいのことは考えておくべきだろう。

 そうなると、やはりソロでの探索は危険だという話になってくる。


 で、予定の話に戻るが、おそらく美冬ちゃんと合流する前に第4階層へと挑戦できるようになっているはずなので、そのときにどうするのかという話だ。

 一応、週末であれば美冬ちゃんと一緒に第4階層へ挑戦することも可能になっているかもしれないが、さすがにろくに連携の確認もできていない状態でそれを行うのは無茶だろう。

 つまり、ソロで第4階層に挑むかどうかという、これまで散々悩んでいた問題に行き当たってしまうわけだ。


「……さすがに第3階層の確認すらしていない段階で、第4階層のことを考えるのは不毛か。

 普通に第3階層で手間取る可能性だってあるんだしな。」


 色々悩んだが、結局はそのときになってみなければわからないということで先送りにすることにした。






 美冬ちゃんの話を聞いてから数日。第2階層のトロールやモンスターハウスでのレベル上げにも慣れ、レベルも上がったことで第3階層へと進むことを決めた。



「通路の見た目は今までと変化なしか。」


 第3階層へ降りてすぐの通路を確認してみるが、目の前に伸びる通路はここまで通ってきたのと同じ岩肌の通路だ。代わり映えしないとは思うが、逆に言えば環境が変わらないということなので、動き慣れた戦いやすい環境ということになる。

 念のために通路の壁を実際に触って確認してみるが、第1階層、第2階層と特に違いがあるようには感じられない。

 そのことを確認して、通路の先へと足を進めることにした。




「……さすがにこれは考えていなかったな。

 まさかここまで簡単に第3階層が突破できるとは。」


 目の前には第4階層へと続く階段が見える。

 確かに第2階層でのレベル上げが十分だと判断したからこそ第3階層へ進んだのだが、意外なほどあっさりと突破できてしまった。

 一応、まだ確認していない通路もあるが、こうして次の階層への階段が見つかっている以上、それもあまり重要ではない気がする。


「しかし、どうしたものか……。

 いつも通り数日は階層の確認に時間を取られるだろうから、そこから階層ボス的なモンスターの攻略とレベル上げをやればいい感じに美冬ちゃんとの合流時まで時間が稼げると思っていたんだが。」


 まあ、レベル上げについては数日は時間をかけることができるだろう。というか、レベル上げに関しては、やる気さえあれば何日だって続けることは可能だ。

 ただ、この階層でレベル上げを何日もやりたいかと聞かれれば否と答えるが。


「スケルトンはともかく、ゾンビの相手はしたくないんだよなぁ。」


 この階層で出てきたモンスターはスケルトンとゾンビだった。どちらもノーマルなタイプと上位種の2種類が存在していたが、上位種も特別強いというわけでもなく、多少手こずる程度で比較的簡単に倒すことができた。

 まあ、スケルトンが第2階層のゴブリンと同じソルジャー、アーチャー、ソーサラーの3種、ゾンビがソルジャー1種という形だったので、ゴブリンと同じように対応するだけで良かったのが大きい。

 それに、スケルトンについては俺が使っているメイスが有効だったようで、かなり楽に倒すことができていた。

 ゾンビの方も同じように大した強さではなかったのだが、見た目と匂いが精神的につらいものがあった。

 なので、スケルトンはともかくゾンビの相手をしたくない。

 かといって、ゾンビだけを上手く避けることもできないので、この階層でレベル上げをやろうとすれば必然的にゾンビも相手にしなければならなくなる。

 一応、ゾンビだけ無視してやり過ごすということもできなくはないが、スケルトンと同時に遭遇すると視覚的、嗅覚的なダメージが入ってしまうのであまり意味がない。

 そう考えると、覚悟を決めてレベル上げを行うか、この階層でのレベル上げを諦めるかということになる。


「はぁ、そこまでグロ耐性が低いとは思ってなかったんだけどなぁ。」


 先ほどまで相手をしていたゾンビたちの姿を思い出し、思わずため息が出る。

 そもそもダンジョン適応の効果でグロ耐性も上がっていそうなものだが、効果があった上でこの状態なのであれば実はグロいモノがとことこんダメだったのかもしれない。


「……まあ、一応確認していない通路もあるし、結論を出すのはそれからでいいか。」


 結局、そんな風に先送りにすることに決め、今日のダンジョン挑戦を終えることにした。


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