第12話 モンスターハウス
正直、モンスターハウスという罠に反応しなかった“罠探知”スキルに思うところは色々とある。
外からわからなくても、せめて部屋に入ったときには反応しろとか、少なくとも発動前には反応しろとか。
だが、反応しなかったスキルのことは置いておいて、今は目の前のモンスターだ。
モンスターの召喚自体は終了したようで、部屋の中心付近で光を放っていた召喚陣は消えている。
岩のせいで全体としてどれだけの数がいるのかはわからないが、見えている範囲にいるモンスターは5体。見えていない分を考慮すると、少なくとも10体以上はいるだろう。
で、肝心のモンスターだが、どうやらゴブリンらしい。
ファンタジーの定番であるゴブリン。
最弱から最強まで色々な描かれ方をされるモンスターだが、この世界に現れたダンジョンの場合は弱い部類のモンスターだ。もっとも、ゴブリンにも階級があるので上の階級のやつは相応に強いそうだが。
とりあえず、見える範囲では岩の上にいるゴブリンアーチャー以外は最下級のゴブリンだけのようだ。ゴブリンアーチャーにしても、ゴブリンより1つ上の階級なので強さ的にはそこまで絶望的な相手ではない。せいぜい、スキル持ちだという点を気を付けるくらいだろう。
なので、ただただ、モンスターハウスという罠に引っかかった今の状況が厳しいというだけだ。
「ハッ!」
飛んできた矢を左手の盾で弾く。
扉を背にゴブリンたちの襲撃に備えているが、目の前にいるゴブリンたちが突っ込んでくる様子はない。今のように時折ゴブリンアーチャーから矢が飛んでくるだけだ。
「飛び込むしかないのか?」
部屋の中心付近、岩の隙間で並ぶゴブリンたちを見てつぶやく。
あいにくと、思いつく手段はそう多くない。というか、自身の手札を考えても“メイス”か“投擲”かの2択にしかならない。そして、岩という遮蔽物が立ち並んでいる環境的に、実質“メイス”一択だろう。
そうなると、結局は両手にメイスを持ってゴブリンたちの中に飛び込むということになりそうだ。
基本的にゴブリンの強さはコボルトと大差ないという話なので、目の前にいるゴブリンを相手にするだけであればそう難しくはないはずだ。
問題は、相手の総数がわからないこと、立ち並んでいる岩という障害物の中でうまく立ち回れるかがわからないこと、ゴブリンアーチャー以外の上位個体がいるかどうかがわからないことだ。
まあ、最後のゴブリンアーチャー以外の上位個体についてはいると考えておいた方が無難ではあるんだろうが。
「結局、突っ込んで確認するしか方法がなさそうなのがな……。」
再び飛んできた矢を弾きながらつぶやく。
正直、自身の手札の少なさがつらい。気配を察知する系統のスキルを持っていれば、敵の分布や種類の確認も簡単にできるのだろうが、あいにくそういったものを持っていないので自分自身の目で確認するほかない。
で、岩で見通しの悪くなっているこの部屋の場合は、自らの足で確認に行くしかない、と。
一応、壁際を回るようにすればある程度の安全性を確保した状態で確認できるだろう。だが、周囲からの確認だと、岩に隠れられて碌に成果が得られないという未来しか思い浮かばない。
「でも、やらないよりはやったほうがましか?」
ネガティブな考えを声に出して否定してみる。
岩に隠れられるとしても、その際に移動するなりの動きは出るはずだ。そのことを考えるとやらないよりはマシかなと思わなくもない。
「……いや、やっぱり無理か。」
目の前に広がる光景を見て、再び考えを改める。
左右や奥にある岩の配置はわからないが、見える範囲の岩はまるでゴブリンたちが隠れるために用意されたかのような配置になっている。それを考えると、外周を回るだけではゴブリンたちの数はおろか、その動きすら十分に確認できないだろう。
まあ、部屋の中の岩の配置を確認するという意味では無駄にはならないだろうが。
そんなことをうだうだと考えるが、相変わらず向こうに動きはない。
焦って動くのもどうかと思うが、かといっていつまでもここで様子見を決め込むわけにもいかない。思い出したように飛んでくるゴブリンアーチャーの矢のせいで気を抜くことができないのだ。遠くない未来に集中力の限界が来て隙をさらすことになるだろう。
ただ、さすがに無策で突っ込むだけというのもバカな話なので、何らかの対策は打っておきたい。
まあ、そうはいっても俺にできることなんて限られているんだが。
投擲スキルを使ってけん制しながら突っ込むか、壁走りスキルを使って岩を利用しながら立体的に突っ込むかというところか。
いや、さすがに壁走りスキルをぶっつけ本番で試すのはなしか。
何度かダンジョンの通路で練習はしているが、この部屋のように岩から岩へと飛び移りながら戦うなんてことはできそうにない。
これは、次回以降に余裕を見ながら練習という方向だな。
となると、結局変わり映えのない投擲スキルを使いながらの突撃か。
我がことながら本当に芸がないな。
「まあ、行くしかないか。」
もはや何度目かもわからない矢を弾きながら覚悟を決める。
だが、さすがに上から狙われている中に突っ込むのは気が進まないので、硬球を取り出して岩の上に陣取るゴブリンアーチャーを狙う。
倒すことはできないだろうが、岩の上から落とすことができれば上々だ。ただ防がれるだけに終わると困るが、岩の上のスペースは狭そうなのでおそらく大丈夫だろう。
「ふっ!」
気合と共に大きく振りかぶって硬球を投げる。
投擲スキルとダンジョン内のステータスによる強化でプロ顔負けの速度と威力で一直線で向かっていく。
ゴブリンアーチャーが反応して身体をずらして回避行動をとる。
だが、狭い足場で取れる回避程度では投擲スキルによるホーミング機能は防げない。
ボールは変化球のように鋭く変化し、とっさに腕でかばったゴブリンアーチャーに命中、そのままバランスを崩したゴブリンアーチャーを岩の上から落とすことに成功した。
それを見た瞬間にゴブリンたちに向かって駆け出す。
右手にメイスを装備しなおし、今度は左手に小石を握る。
岩が邪魔なせいでどこまで効果があるかは不明だが、初手でばらまくくらいはいいだろう。
そう思い、ゴブリンたちとの距離が詰まったところで勢いよく投げつける。
岩の陰に隠れているせいで2体にしか命中しなかったが、そいつらは一瞬とはいえ硬直している。
「らぁっ!」
硬直した1体を狙って勢いに乗ったままメイスを叩きつけた。
ゴッという音と共に吹き飛ぶゴブリンを見送り、次のターゲットへと足を動かす。
硬直していたもう1体へと向かうが、あいにくと相手は既に動き出していた。
こちらへと振りかぶってきたこん棒を左のホルダーから引き抜いたメイスで受け止める。
こん棒をいなし、すれ違いざまに右手のメイスを叩きこむ。
そのまま足を止めず、むしろ駆けるペースを速めて岩の間を駆けぬける。
初手で岩の陰に隠れていたゴブリンたちがこん棒を手に飛び出してくるが、左右のメイスで弾き飛ばす。
そして1列目の岩を抜けて正面から見えなかった位置へと飛び込んだ。
瞬間、目の前に銀の物体が突き込まれた。
「くぉっ。」
無理やり体勢を崩すように体をひねり、目の前に突き込まれた物体をかわす。
同時にそれをしてきた相手へとメイスを振るうが、不安定な体制で振るったそれはあっさりと躱された。
「ゴブリンソルジャーか。」
一度バックステップで距離を取ってから、目の前に立つ相手を見返す。
そこには、粗末なこん棒を持つゴブリンよりも一回り大きなゴブリンが鈍く輝く長剣を構えていた。
ゴブリンソルジャー。
その名の通り、ゴブリンの兵士だ。さっき見たゴブリンアーチャーと同じく、ゴブリンよりも1つ上のランクのスキル持ちと呼ばれるゴブリンになる。
目の前にいるのは長剣を持ったゴブリンソルジャーになるが、槍や斧を持ったゴブリンソルジャーもいるらしい。
だったらゴブリンソルジャーではなくゴブリンランサーとかになるんじゃないかと思ったりするが、こいつらはまとめてゴブリンソルジャーという扱いだ。
近距離のゴブリンソルジャー、遠距離のゴブリンアーチャー、魔法のゴブリンソーサラーという分類なのだとか。
一度距離をとったためか、目の前のゴブリンソルジャーはこちらの様子を窺うだけで攻撃してくる気配はない。かといって、こちらから攻めようにも隙を見せているというわけでもないので動きづらい状況だ。
だが、待っていても他のゴブリンたちに囲まれて不利になる未来しか見えないので、にらみ合いを続けるわけにはいかない。
「らあっ!」
自らを奮い立たせる意味も込め、叫び声とともに小石を投げつける。
予備動作なしに太ももの小石をすくい投げるように目の前にばらまいて自身も突っ込むが、悲しいことにゴブリンソルジャーは小石のことなど一切気にした様子はない。振りかぶってから殴りつけたメイスをその手に持った長剣であっさりと防がれた。
右手がダメならと連続で左のメイスも叩きつけるが、そちらも長剣で流される。
ならばと連続で右、左とメイスを叩き込んでいく。
最初の内こそ長剣でうまくしのがれていたが、見た目の体格差通りに力はこちらが上らしい。
次第にメイスをさばく動きが遅れだし、ついに長剣を大きくはじくことに成功した。
「おらあっ!!」
気迫と共にがら空きの胴体にメイスを全力で叩き込む。
狙い通りの一撃がまともに入るかと思ったが、インパクトの瞬間にゴブリンソルジャーは後ろに飛ぶようにして衝撃をそらした。
メイスの一撃が届いた感触はあったが、残念ながらそこそこのダメージどまりだろう。
さらに悪いことに、遠巻きに見ていたゴブリンたちが距離を詰めだしている。
「くそっ。」
そう吐き捨て、ゴブリンソルジャーが飛んだ方向とは逆のゴブリンを蹴散らして一時離脱を選択した。
「ゴブリンアーチャーにゴブリンソルジャーと来たからには、やはりゴブリンソーサラーもいるのか?」
壁際まで退避したところで思いついたことを口に出す。
確認できているのはゴブリンアーチャーとゴブリンソルジャーだけだが、この2体にゴブリンソーサラーを加えた3体がゴブリンの上位種としてワンセットにされている。なので、このモンスターハウスでもこの3体がワンセットになっている可能性は高いだろう。
そうなると、近接に遠距離、魔法の組み合わせというなかなかに厄介な構成になるのではないだろうか。
若干、近接が弱い気がするが、そのあたりはノーマルのゴブリンが数で補うと考えれば、バランスが取れている気がする。
「はあ。」
いつの間にか岩の上に復帰していたゴブリンアーチャーから飛んできた矢をメイスで打ち払いつつ、ため息をついてしまう。
トロール戦については基本的に近接のみだったし、ストーンゴーレム戦は魔法を使うレッドスライムを先に排除してから本格的な交戦に入っていた。
今回については、さすがにそういった連携を取らせないようにするというのは難しいだろう。
まあ、1体ずつ排除していくという形にはなるだろうが、岩という障害物が邪魔だ。相手の射線を塞ぐと考えられなくもないが、目の前のゴブリンアーチャーのように岩の上に陣取られると、ただ地理的な優位をとられるだけになってしまう。
これがゴブリンソルジャーとノーマルのゴブリンだけであれば、いつも通りにテキトーに数を削っていくだけで良かったのだが。
「まあ、どうしようもないことを考えても仕方ないか。」
とりあえず、ここからどうやって攻めるかを考えないといけない。
敵の構成としては、予想も含むがゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチャー、ゴブリンソーサラーにノーマルのゴブリンが複数という感じだろう。
さすがに上位種3種が複数いるとは考えにくいが、万が一のことも想定しておくべきだろうか。いや、ゴブリンアーチャーからの狙撃が1体だけということを考えると、やはり上位種3種は1体ずつと考えるべきか。
まあ、いざというときに慌てないよう、その可能性を頭の片隅に置いておけばいいか。あまり考え過ぎても身動きが取れなくなりそうだ。
「結局、数を減らしていくしかないのか?」
正直、ノーマルのゴブリンであれば多少の攻撃はそのまま受けても無視できる気がする。問題はそのような状況で上位種に追撃を受けた場合だ。
いくらノーマルのゴブリンが弱いと言っても囲まれた状態になれば、その包囲から抜け出すのはそれなりに手間取るだろう。そこに上位種の連携を食らうとおそらく危ない。
さっきやりあった感じでは、ステータス的には結構余裕がありそうだが、一方的にやられて大丈夫だと言えるほど圧倒的な差はないはずだ。ノーマルのゴブリンの攻撃でもカスダメージが入るのだから、上位種の攻撃が積み重なってしまうとどうしようもない。
「まあ、結局はいつも通りにやるしかないのか……。」
いい加減うっとおしくなってきたゴブリンアーチャーからの矢を叩き落し、悲しくなるような結論を出す。
ダンジョン攻略ともなれば、物語のようにもっと華々しいものを想像していたのだが、実際にやってみると泥臭いというかなんというか。
はっきり言って地味としか言いようがない。
これで魔法スキルでも持っていればもう少し違ったのかもしれないが、メイスと投擲ではファンタジー感がないからな。やはり、次は魔法スキルを増やしたいところだ。
「これを片付ければ宝箱も出るかもしれないし、それに期待したいところだな。」
まあ、宝箱が出たとしても魔法スキルのスクロールが出る可能性は限りなく低いのだろうが。
そんなことを考えつつ、目の前のゴブリンたちに向かって再度の突撃をかけた。
あれから数度の突撃を敢行して、ノーマルゴブリンの数を減らすことには成功した。だが、その結果としてすぐにゴブリンソルジャーとかち合うことが多くなった。
まあ、ノーマルゴブリンの数を減らしていけば、ゴブリンソルジャーから離れた場所にいる奴らが少なくなるので仕方ないのだが。
で、そんな状態でとうとう懸念していた最後の上位種が出てきてしまった。
ゴブリンソーサラーがゴブリンアーチャーと同じように岩の上から魔法攻撃を仕掛けてきたのだ。
使ってきたのが見慣れたファイアアローだったのは幸いだったかもしれない。比較的動揺することなく対処できた気がするから。
ただ、その対処で体勢を崩したのはいただけない。
やりあっていたゴブリンソルジャーが一気に攻め立ててくる。
「ぐっ。」
二刀流装備のメイスで受け流そうとするが、崩れた体制では上手くいかない。
しかも、そんなこちらの状態を好機と見たのかゴブリンアーチャー、ノーマルゴブリンの追撃が入る。
飛んできた矢をメイスで払い、ノーマルゴブリンの攻撃はそのまま身体で受ける。
常に表示させているウィンドウでHPが減ったのが見えるが、微々たるものなので気にしないことにする。
ノーマルゴブリンが追撃に来たことでできたスキをついて大きく後ろに下がって体勢を立て直しに図る。
ゴブリンソルジャーが反応するが、間にいるノーマルゴブリンのおかげでどうにか一気に畳み込まれることは回避できた。
「ふう。」
目の前のゴブリンたちを見ながら一息つく。
周囲を囲まれた状況は変わらないが、体勢を立て直せたので危機は脱したと考えていいだろう。
ゴブリンアーチャーだけでなく、ゴブリンソーサラーからも追加の攻撃が来るかと思ったが、さすがに連続して魔法は打てないのか。あるいは、MPを節約している可能性もあるが。
まあいい、距離を取ったことで背後に岩を背負うような形になってしまったが、ゴブリンソルジャー以外であれば突破は容易だ。何なら攻撃を受けながらの突破でも大した問題にはならないだろう。
半ば膠着したような状況で相手側の様子を確認する。
正面にゴブリンソルジャーが陣取り、その左右にノーマルゴブリンが2匹ずつ。その背後の岩の上にゴブリンアーチャーとゴブリンソーサラーが控えていると。
この場から脱して、先ほどまでのようにノーマルゴブリンを削るべきか否か。
ここまでのダメージから考えると、おそらくこのまま乱戦に持ち込んでも勝つことはできる。岩の上の2匹が若干不安ではあるが、さすがにHPを削りきられるほどのダメージを受けるとは考えにくい。
それに慎重にノーマルゴブリンを削っていたのは、姿の見えないゴブリンソーサラーを警戒していたという側面もある。
ならば、このまま乱戦からのせん滅に移行してもいいんじゃないかと思ったところで、左右のノーマルゴブリンたちが動いた。
同時に頭上からは矢が飛んでくる。
「……やってみるか。」
迫る矢をメイスで払いのけ、向かってくるノーマルゴブリンに対して逆に攻撃を仕掛けにいった。
乱戦に持ち込んだことでノーマルゴブリンはあっさりと片が付いた。すでにダメージが溜まっていたこともあったのだろうが、少し拍子抜けするくらいには早々に脱落していった。
だが、目の前にいるゴブリンソルジャーをはじめとした上位種にはかなり粘られている。
実力差というかステータス的にはかなりこちらが有利なはずなのだが、ゴブリンソルジャーは守りを固めて、頭上のゴブリンアーチャー、ゴブリンソーサラーと連携を取りながらチクチクと攻撃してきている。
さすがにうっとおしかったのと状況を変えるために投擲スキルで落としにかかったのだが、岩の上を狙おうとしてもゴブリンソルジャーが詰めてくるし、ならばと距離を取ったところから投擲して岩から落としても徹底的に守りを固められてこちらが攻め切る前に復帰される。
だが、さすがに何度も繰り返すことで岩から落とした2体が復帰するまでのタイミングやゴブリンソルジャーの攻めやすいところなどがわかるようになった。
そもそもステータス的にはこちらが有利なのだ。
であれば、わずかにでも隙ができればそこから強引にこじ開けることは可能だ。
「いい加減に倒れろっ!」
そう声に出して、体勢を崩したゴブリンソルジャーへと殴り掛かる。
そろそろ先に落としたゴブリンソーサラーが復帰しそうだが、あちらは攻撃する前に詠唱という名のタメが必要だ。
その前に一気に押し切る。それができる程度にはゴブリンソルジャーも削れているはずだ。
「!?」
連撃の後にひと際気合を入れた一撃を入れようとしたタイミングで矢が降ってきた。
それに驚き、後ろへと飛び下がる。そのせいでゴブリンソルジャーを倒し切ることができなかったのだが、岩の上にゴブリンアーチャーの姿はない。
「ここにきて曲射かよ。」
そうつぶやき、念のためにさらに距離を取ってから奥を警戒する。
とりあえず、2射目はやってこない。
どうやって先ほどの矢を射ってきたのかと疑問に思うが、おそらく岩の上にいるゴブリンソーサラーからの指示があったのだろう。
魔法ではなくそういう行動をしてきたことについてどう考えるべきか。
楽観的に考えるのであれば、単純にMP切れのために魔法を撃つことができなくなったので戦法を変えてきたケースが考えられる。
逆に嫌なのは、まだ魔法が撃てるのに攻撃のバリエーションを増やすために戦法を変えてきたケースだ。
ゴブリンがそこまで頭を使うのかとも思うが、正直、ダンジョンのモンスターが単なるバカとも思えない。普通に連携はとってくるし、囮を使ってきたりするケースもあるのだから。
「まあ、深く考えても無駄か。」
あいにくと今の俺には有効な対策がない。
一応、投擲でけん制することは可能だが、それは結局先ほどまでと同じことをするだけになる。だったら、ゴチャゴチャ考えずに一気に押し込んだ方がマシな気がする。
そう考え、再度ゴブリンソルジャーへと突撃を敢行した。
「結局、ゴブリンソーサラーはMP切れで良かったのかね?」
あの後の突撃であっさりとゴブリンソルジャーは落ちた。その後はゴブリンアーチャー、ゴブリンソーサラーをそれぞれ個別に距離を詰めて片を付けるだけだった。
こちらは後衛のモンスターだけあって、そう時間がかからずに倒すことができたのは良かった。
そのときにゴブリンソーサラーは魔法を使ってこなかったのだが、それを素直にMP切れだったからと考えてもいいものかどうか。
若干、ひねくれすぎという気もするが、どうなんだろう?やはり考え過ぎなのだろうか。
「まあ、これから挑戦を続けていればわかるか。」
部屋の中心、召喚陣が発生したであろう場所に現れた宝箱を前にそうつぶやく。
この宝箱を見つけたからという理由もあるが、しばらくはこの部屋でレベル上げをするつもりだ。
終わってみれば割と楽勝だったと思えるが、今回のモンスターハウスに引っかかってすぐはかなり焦ってしまった。
その焦った状態でも余裕をもって対処できたのは出てきたモンスターよりもレベルが高く、ステータスが上だったからだろう。
つまり、レベルを上げておけば余裕をもってダンジョンに挑むことができる。
うん、普通のことだな。というか、単にビビっているだけな気もする。
ただまあ、ソロでダンジョンに挑戦している以上、レベルによる安全マージンは必要だ。
そんな言い訳をしつつ、明日以降の予定をモンスターハウスでのレベル上げに決める。
ちなみに、宝箱の中身はいつもの銀貨5枚だった。




