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ダンジョンのある風景  作者: はぐれうさぎ
第2章

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第5話 買い物

 第2階層への初挑戦から一夜明けた。

 昨日の反省で改めて自身の力不足が確認できたので、今日はダンジョン挑戦を休みにして今後のダンジョン挑戦のための準備をするつもりだ。

 とりあえず、すぐにできることとして買い物と龍厳さんのところへ行って稽古日の追加依頼をしようと思う。



 というわけで、今日はいつもより遠出して繁華街の方まで足を延ばしてみた。

 通販でも良かったんだが、特殊警棒を扱ったことなんてないので実店舗で実際に説明を聞きたかったからだ。まあ、どこまで参考になるのかはわからないが。


「らっしゃーせー。」


 雑居ビル内の小さな店内に足を踏み入れると、気怠そうな声に迎えられた。声の主はカウンターの中で座る金髪の若そうな店員だ。


「すいません、特殊警棒を探しているんですが。」


 ひとまず、店員のやる気については気にしないことにして、狭い通路を抜けた先のカウンターで尋ねてみる。

 彼はいじっていたスマホを仕舞い、こちらへと顔を向ける。さすがに対応してくれないということはないようだ。


「特殊警棒っすか。護身用?それともダンジョンっすかね?」


「一応、ダンジョンで使いたいと思っているんだけど……。おすすめとかあります?というか、ダンジョン用に使われているような特殊警棒とかあったりしますか?できるだけ丈夫なのがいいんだけど。」


「ダンジョン向けの特殊警棒っすか。ダンジョンが公開されたころに一瞬だけ流行ったらしいっすけど、最近はさっぱりでそういうのはないっすね。そもそも、ダンジョンにはダンジョン産の武器以外は向いてないらしいっすからね。なんで、おすすめっていっても、一般の護身用とかにおすすめしてるのと同じ感じっすね。」


 そう答えると、彼はカウンターを離れていくつかの特殊警棒を持ってきてくれた。


「おすすめというか、売れ筋の商品はこのあたりの奴っすね。護身用だと軽いアルミ合金の方が人気なんすけど、ダンジョンで使うんであればカーボンスチールの方が良いんじゃないっすか?」


 カウンターに並べられた特殊警棒を順に見ていく。

 見た目だけでは違いが判らないので、なんとなく眺めているだけだったのだが、それを察してくれたのか店員の彼が順に簡単な説明をつけてくれた。

 基本的には材質の違いで、一部はロック機構の違いやメーカーの違いがあるらしい。正直、メーカーについてはどうでもいい。


「丈夫なのはどれですか?」


 俺にとって一番重要なことを聞いてみる。ストーンゴーレム相手に金属バットを持っていかれたのは、個人的に結構な衝撃だったのでこれは外せない。


「この2つっすかね。左の奴はとにかく硬い奴で、右のは耐衝撃性を高めた奴っす。」


 そう示してくれた2つを手に持って確認してみる。

 どちらも黒いので、見た目の違いは特にないように見える。重さについても、多少違いがあるかな?という程度で、大して差を感じられない。

 試しに先ほど紹介してもらったアルミ合金の物を手に持ってみると、さすがに重さの違いが感じられた。説明の通り、アルミ合金の方が軽いらしい。カーボンスチールの方はずっしりとした重量を感じる。

 確かに護身用として使うのであれば、軽いアルミ合金の方が扱いやすそうではある。だが、ダンジョン内で使用することを考えると、ある程度の重さが必要な気がする。そういった意味でもアルミ合金の物よりも、丈夫だと勧められたカーボンスチールの物の方が良いのかもしれない。


「軽く試してみます?」


「試せるんですか?」


 何度か2つの特殊警棒を持ち替えていると店員の彼がそう提案してくれた。試せるなら試してみたいが、この狭い店内にそんな場所があるのだろうか。


「まあ、試すっつっても軽く振ってみてもらう程度っすけどね。この店狭いっすから。」


 疑問が顔に出ていたのか、彼は苦笑しながらそんなことを付け足す。

 俺もなんとなく苦笑を返すと、彼は店内の奥の片隅にあるパーテーションで仕切られた空間へと案内してくれた。まあ、案内するというような距離でもないが。


「ここっすね。見た通り、棚とかをどけただけの狭い場所なんすけど、軽く振るだけなら十分っす。」


 そう言って、俺に手に持っていた特殊警棒の1本を渡してくる。第一印象こそアレな感じだったが、接客自体はきちんと対応してくれるらしい。


 勧めに従っておすすめの2本とついでにアルミ合金の1本を試してみた。

 うん、正直違いが良く分からない。さすがにアルミ合金の奴との違いくらいは分かったが、カーボンスチールの2本の違いについてはさっぱりだ。

 他にも振り出しと収納についても試させてもらったが、こちらについては慣れるしかないという印象だ。ただ、この場では苦労したが、ダンジョン内のステータスであればどうにかなるだろうという気もしている。


「他の長さも試してみます?」


 交互に何度か試しているとそう提案されたので、ありがたく提案を受けることにする。最初に出してくれたのは中間の長さだったらしい。

 短いものと長いもの、そして中間のサイズと試してみたが、正直判断に困る。

 どのサイズであっても普段使っているメイスよりも短いサイズだ。用途としては、予備、あるいは敵の攻撃を捌くための物なのでそこまでの長さはなくてもいい気がする。

 ……少し悩んだが、深く考えずに中間のサイズを選択した。


「ありあっしたー。」


 結局、最後まで崩れたままの言葉遣いだった店員に見送られて店を後にした。購入したのは、おすすめされたカーボンスチールの2本。とにかく硬いという奴と耐衝撃に優れているという奴だ。

 値段は2本で3万円と安くはなかったが、必要経費と割り切る。この調子でどんどん費用がかさんでいきそうな気がするが気にしない。きっと探索者支援でどうにかなると信じよう。






 次に向かったのは、地域で一番大きな公開ダンジョンだ。正確には、そのダンジョンに併設されているアイテムショップだが。


「いらっしゃいませ。」


 先ほどの店とは違い、普通の声で迎えられる。さすがに地域で一番大きいだけあって、客がいないということはないようで、店内には2組の客がいた。

 何度か買い物に出かけたアイテムショップのように店員が接客に来るかとも思ったが、この店ではそういうことはないようだ。それならと、のんびりと店内の見て回ることにする。


 

「……。」


 一番大きな店ということでそれなりに期待していたのだが、残念ながらめぼしいものはなかった。

 いや、消耗品や剣や槍などの一般的な武器なんかは結構並んでいたんだが、期待していたようなスキルスクロールはなかった。魔法スキルはもちろん、有名な補助スキルなどもなかった。以前もらった取り寄せ可能なリストに載っていなかったのだから、当たり前といえば当たり前なのかもしれないが。

 結局、いくつかのマジックストーンを購入して帰ることにした。






「というわけで、どうにかなりませんか?」


「何が、というわけでじゃ。どうにもならんわ、修行しろ。」


 買い物前に連絡を入れていた通りに龍厳さんの家を訪ねて相談してみたわけなんだが、すげなく切り捨てられてしまった。

 まあ、てっとり早く集団戦闘がうまくなる方法はないかと聞いたらそういう回答にもなるだろう。こちらとしても本気で期待していたわけではない。


「まあ、そうですよね。では、稽古日を増やしてもらっていいですか?」


「それであれば構わんよ。前にも言ったように、儂は基本的に暇をしているんでな。」


 そう言って目の前の湯飲みに手を伸ばす龍厳さん。つられるように、俺も自分の湯飲みに手を伸ばす。


「しかし、そんなことを言うんであれば、今日も稽古の用意くらいしてきてほしいもんじゃがな。」


「……ハハハ。」


 半目でこちらを見つつそんなことを言う龍厳さんに乾いた笑いを返す。その通りだとは思うが、今日は休息を兼ねてのんびりとするつもりだったのでそこは勘弁してほしい。


 

「ひとまず手数を増やしてみようかと思うんですけど、どう思います?」


 出してもらったお茶とお茶菓子でまったりしつつ、考えていたことを聞いてみる。

 すでに特殊警棒を買ってしまっているので、ダメと言われると微妙なのだが、その場合は完全な予備としてリュックに入れておくことになるだろう。


「手数を増やす?どうやってじゃ。」


「一応、両手に武器を持つことを考えています。とりあえずは、メイスを攻撃用に持って、特殊警棒を防御用に使おうかなと。無理そうなら素直にメイスと盾でもいいんですけど、機動力が落ちそうなのが嫌だったんですよ。」


 龍厳さんの疑問に簡単に答え、そのまま昨日の第2階層の小部屋での話と反省点について伝える。


 

「ふーむ。基本も出来てないもんが余計なことをするのはあまり賛成できんのじゃがなあ。儂じゃあ、ダンジョン内でのステータスとやらがどの程度影響するのかもわからんし、試してみるしかないんじゃないかのう。まあ、刀と違ってメイスのような打撃武器であれば、お前さんの言うように振り回すだけでも多少はマシかもしれんしな。」


 龍厳さんからの回答はこんな感じだった。消極的な賛成といったところだろうか。

 ダンジョン内での俺の様子というか、“ダンジョン適応”によるステータスの影響がわからないので確かなことは言えないらしい。ただ、「どちらにせよ、基本を身に着けないとどうしようもないがの。」という言葉ももらったが。


 

 その後は追加の稽古日の日程を相談したり、最近話題の探索者支援の話をして過ごした。相変わらず、龍厳さんのダンジョン挑戦の欲求がすごかったが、それについてはご家族と相談してくださいとしか言えない。


 稽古日については、毎日稽古をつけるという龍厳さんと、とりあえず1日追加でという俺との間で激論が交わされた。いや、お茶を片手に少し熱くなっただけだが。

 結局、お互いに譲歩する形で月、水、土の週3の稽古ということになった。


 まあ、週3であれば許容範囲だろう。たぶん。



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