第22話 ストーンゴーレム
「いい天気だ。」
家を出て、晴れ渡った空を見上げてつぶやく。ダンジョンに入ってしまえば外の天気など関係ないんだが、今日はストーンゴーレムに挑戦しようという日だ。じめじめとした雨が降っているような天気よりはよっぽど良い。
ストーンゴーレムを倒し、晴れ渡ったこの空と同じようにすがすがしい気分でダンジョンから帰ってきたいものだ。
そんなことを考えながらダンジョンへと向かった。
昨日と同じく、ストーンゴーレムのいる最奥の大部屋へと一直線に向かう。途中でグリーンスライムに2度ほど遭遇したが、軽く蹴散らしている。かつては地味にてこずっていた相手だが、今となってはグリーンスライムが雑魚だと言われている理由がよくわかる。
「……ふーっ。」
扉の前に立ち、心を落ち着かせる。昨日、一昨日もこの部屋に挑戦しているので今更な気もするが、今日はストーンゴーレムを倒すつもりなのだ。一当てするのではなく、倒すために挑むのであれば多少は緊張してしまうのも仕方ないだろう。
まあ、危なくなれば撤退すればいいだけではあるんだが、やはり心構えとしてそれは違う気がする。
やると決めたからにはやりきる。
何の準備もなしに臨んだ前回とは違い、今回は事前に十分な準備を行っている。そして、実際にストーンゴーレムを倒すだけの目途も立っている。
となれば、あとは覚悟を決めて挑むだけだ。
俺は扉に手をかけ、部屋の中へと踏み込んだ。
まあ、気合を入れて部屋の中に入ったはいいものの、ダンジョンがこちらの気持ちを汲んでくれるはずもなく……。当然のことながら、いつも通りに周囲にいるスライムの対処からこなすことになった。
部屋の中にいるモンスターの配置は、今までとほぼ変わらない。せいぜい、ストーンゴーレムから離れた位置にいるスライムたちの数が変わる程度のものだ。大半のスライムがストーンゴーレムに従うように集まり、少数のはぐれグループが扉寄りの位置に存在している。
まずは準備運動がてら、離れたスライムたちを片付けよう。
そう決めて、一番近くにいるブルースライムとグリーンスライムのグループへと駆け出した。
やはり、ブルースライムとグリーンスライムだけのグループはもはや敵ではないらしい。部屋の扉側に存在した3つのグループが10分もかからずに片付いてしまった。部屋の外に少しずつ釣り出してから倒していたころからは考えられない進歩である。
だがまあ、余裕を出していられるのもここまでだろう。次からはストーンゴーレムの周囲にいるレッドスライムを含むスライムたちが相手だ。一応、昨日の時点でストーンゴーレム以外を倒し切ることができるようになったとはいえ、油断できるような相手ではない。
ストーンゴーレムたちから離れた位置で呼吸を整え、相手の様子をうかがう。やはり、ちょっかいをかけずに離れている分には向こうから攻撃してくることはないらしい。これが一度でも攻撃を仕掛けると周囲にいるスライムたちが反応してきたり、ストーンゴーレムが向かってきたりするのだが。
昨日の挑戦でわかったことなんだが、どうやらゲームでいうところの“ヘイト”的なものが毎回挑戦するごとにリセットされているらしい。それは、前回の挑戦でこちらが仕掛けた攻撃について学習したことについてもリセットされるというわけで。
つまり、何が言いたいかというと、最初の一撃については相手の警戒が薄い状態で仕掛けることが出来るということだ。要は、こちらの狙ったとおりの効果的な攻撃ができるということである。
一応、ストーンゴーレムについては、俺は倒せていないし、自衛隊の巡回でも倒していないはずなので同じ個体なはずなんだが。
なんにせよ、最初の一撃についてはストーンゴーレムの保護下に入る前のスライムたちに投擲し放題ということだ。
メイスを左手に持ち替え、右手にもてるだけの小石を持つ。
ストーンゴーレムたちが反応しないことを確認し、一気に駆け出す。
可能であればレッドスライムにも小石を叩き込みたいが、奴らはストーンゴーレムの陰にいる。あまり欲をかかずにまずはスライムたちの数を減らすことを考えるべきだろう。
距離が近づき、手前にいるブルースライムとグリーンスライムが迎撃態勢に入る。だが、投擲による遠距離攻撃には備えてはいない。
10メートルを切ったところで向こうからもこちらへと向かい始めてくる。
ここだっ!
俺はすかさず右手に持った小石をスライムたちに向かって山なりに放り投げる。
そのまま空いた右手で素早く追加の小石を取り出し、さらに近づいた位置ですれ違いざまに今度は上から思いっきり投げつけた。
ストーンゴーレムの左に抜けつつ、後ろを振り返る。
後から投げた小石で動きが止まったスライムたちに、先に投げた小石が降り注ぐのが見える。
正直、こんなのでダメージになるのかとも思うんだが、スキルの力とはすごいものだ。軽く山なりに投げただけでも、きっちりと命中と威力に補正がかかるらしい。視界の隅でグリーンスライムが2匹、光の粒になるのが見えた。
さて、ここで止まるわけにはいかない。
ここにいるスライムたちは仕掛けるごとにストーンゴーレムの影響下へと逃げようとする。なので、できる限りばらけた位置にいる最初のうちに削っておきたい。
メイスを右手に持ち替え、軽く弧を描くようにしてUターンする。
次の狙いは先ほどはストーンゴーレムの陰に隠れて狙えなかったレッドスライムだ。
左手で小石を取り出しながら駆け出す。
どうやら、まだスライムたちの行動は守勢には回らないらしい。レッドスライムの1匹がストーンゴーレムの陰に入るように移動したが、残る2匹はこちらへの迎撃態勢を見せている。さらにブルースライムもストーンゴーレムの陰から出てくるのが見える。
今度は先ほどよりも近くまで近づく。
残念ながら、レッドスライムが相手になると小石ではほとんどダメージが望めない。なので、メイスでの一撃を叩き込みたいところだ。
飛び出してきたブルースライムたちの射程距離に入る。
こちらに飛びかかろうとしているところに小石を投げつける。
狙い通り、飛び上がりかけたところに命中し、地面へと落ちる。
その光景を無視して、ブルースライムの背後にいたレッドスライムへと殴りかかる。
どうやら、1匹が迎撃、1匹が回避を選択したらしい。
とりあえず、こちらへと飛びかかってきたレッドスライムへメイスを合わせる。
だが、同時にストーンゴーレムの右腕が飛んできた。
「くっ。」
一応、その動きも視界の中に入ってはいたんだが、相手が大きいとなかなかタイミングがつかみにくい。
上体を屈めて潜り抜けるようにその攻撃をかわす。
うまくストーンゴーレムの攻撃はかわすが、下から先ほど回避を選択したレッドスライムの体当たりが来る。
幸いそれほど大したダメージにはならない。
だが、体勢が微妙に崩されて走る勢いが落ちる。
再度の突撃はあきらめ、ストーンゴーレムたちから距離をとったところで立ち止まる。
振り返って、ストーンゴーレムの方をうかがうと、ばらけていたスライムたちがストーンゴーレムを中心に集まっているのが見える。
できれば、相手が落ち着く前にもう2、3度突撃を仕掛けたかったところなんだが。
そんなことを考えるが、今更どうしようもない。昨日までと同じように少しずつばらけるように突撃し、1匹ずつ倒していくしかないのだろう。
ようやく、お供として寄り添っていた最後のレッドスライムを倒すことができた。さすがにレッドスライムともなると、牽制目的の小石でチマチマと削って倒すなんてことはできず、直接メイスを叩き込みに行く必要があった。だが、これでようやく目的であるストーンゴーレムと一対一だ。
「うわっ。」
最後のレッドスライムを倒し、一息つくために距離をとろうとしたところにストーンゴーレムの拳が飛んでくる。
ここまで細かい休憩をはさむだけでスライムたちを相手に走り続けていたので、一呼吸置きたかったんだが、さすがにそれは許してくれないらしい。
メイスを構えてストーンゴーレムの拳を流すようにはじく。
少し後ろに弾き飛ばされるが特にダメージはない。だが、まともに受け止めたわけでもないのに、腕にはかなりの衝撃を感じている。
そのまま2発目3発目を叩き込んできそうなストーンゴーレムから急いで距離をとる。
レッドスライムを倒したタイミングでも、それなりの距離があったはずなんだが、さすがの巨体というべきか、リーチの差がひどい。俺の方からは懐に飛び込まないとメイスが届かないというのに、向こうはこちらの攻撃範囲外からでも余裕で攻撃できる。
ストーンゴーレムの動作が特に速いわけではないのが救いか。まあ、かといって遅いわけでもないので油断していると普通に食らってしまいそうなのが問題だが。
ストーンゴーレムの様子をうかがいながら、ゆっくりと後ろへと下がる。
今のところ、ストーンゴーレムが駆けるという姿は見ていないが、歩幅が大きいので普通に歩くだけでも移動速度はそれなりにある。俺が走るほどの速度ではないが、速足程度の速度ならありそうだ。なので、このままではすぐに距離が詰まってしまうだろう。
背後を確認し、壁までの距離が十分に開いている場所で止まる。
ストーンゴーレムはその歩みを止めず、一定の速度を変えることなくこちらに向かってきている。さっきまで散々近くでその巨体を見ていたはずだが、改めてこちらに迫ってくる姿を見ると思った以上の圧迫感を受ける。
一応、ダメ元で小石を握り、巨体を支える足に向かって投げつけてみる。だが、予想通りというかなんというか、ストーンゴーレムは何の意に介すことなくこちらへと向かってきている。
「……ですよねー。」
そんなあきらめの言葉をつぶやきながら、小石による牽制を諦めてストーンゴーレムへと突っ込む。
“ブンッ”
まるでそんな音が聞こえるようなストーンゴーレムのラリアットのごとき腕の振り抜きを、足を止めずに身をかがめてかわす。
そのままストーンゴーレムの左に抜けるように駆け抜け、すれ違いざまにその脇腹へとメイスを叩き込む。
だが、返ってくる感触は地面でも叩いたのかというような強烈な衝撃だ。正直、攻撃したはずのこちらがダメージを受けているのではないかと思ってしまう。
駆け抜けた先で振り返り、ストーンゴーレムの様子を窺う。ちょうどあちらも振り返るところだったようで、攻撃した側の腹を見せるように回転していた。
まあ、外見としては何の変化もない。昨日までの経験やネット上の情報からわかってはいたが、傷や打撃の痕跡すらないというのは不安になる。
ネット上の情報を信じるのであれば、打撃を叩き込んだ際にストーンゴーレムを動かすための魔力のようなものが散るらしい。で、それがダメージとなっているはずである。
ただ、この魔力のようなものが散る現象については、魔力を感じることが出来なければ当然察知することはできない。“魔力感知”スキルや高レベルの魔法スキルがあれば分かるらしいんだが、俺はどちらも持っていないのでダメージが入っていることを信じるしかない。
レベルやらスキルやらでゲームみたいになっているのであれば、モンスターのHPも見えるようにしてくれていればよかったのに。こちらも残念ながら“鑑定”スキル持ちしか見ることはできないので、俺には無理な相談だが。
まあ、さすがにダメージが蓄積してくるとストーンゴーレムであっても身体が欠けたりといったような傷がつくようになるらしい。なので、とりあえずは目に見える変化が現れるまで地道に削っていくしかない。
再びこちらへと歩を進め始めたストーンゴーレムへ再度突撃する。
先ほどと同じくストーンゴーレムの左に抜けるように進路をとり、今度はその巨体を支える右足を狙う。こういった巨大な相手に対して足を狙うというのは定番だろう。
ストーンゴーレムの正面に近づいたとき、ストーンゴーレムが両手を組み、振り上げた腕をハンマーのように叩きつけてくる。
正直、動きがおおざっぱで余裕をもって回避できるレベルではあるんだが、その破壊力に肝を冷やす。
普通に地面がえぐれているのだ。ストーンゴーレムの両手は無事だというのに。
横目に見えるその光景にビビりつつ、狙っていた右足へとメイスを叩き込んで距離をとるために駆け抜ける。
一撃くらいであれば食らっても立て直せるかと思っていたが、さっきの攻撃を見るとそんな考えは吹っ飛んでしまう。さすがにアレを食らうとしばらく動けなくなる気がする。そうなると、いくら動きの速くないストーンゴーレムといえど、タコ殴りにされるのは目に見えている。
ということは、これからストーンゴーレムを倒すまでに一撃ももらってはいけないということか。
……きついな。
まだ、体力に余裕がある今であれば十分に回避ができるが、これから先、時間をかけていけばその余裕がなくなってしまう。回復するために休憩をとろうにも、向こうは体力という概念があるかもわからない存在だ。今もこちらに向かってきているように、これからもこちらに休む暇を与えることなく攻め続けてくることだろう。そうなると部屋の外に撤退するという形でしか休息が取れない気がする。
「ははっ。」
自嘲気味に笑う。
何を弱気になっているのだろうか。そんなことは、挑戦する前からわかっていたじゃないか。それでも挑むと決めたからこの場にいるのだ。
さすがに死ぬつもりがあるわけではないので、ヤバくなれば撤退するが、まだ一撃ももらっていない状態で弱気になるべきではない。正直、弱気と慎重の境界がいまいちはっきりしないが、まあいい。
最悪、一撃いいのをもらっても即死にはならないはずだし、その場合は遠慮なく奥の手を切って逃げよう。それだけ決めていれば十分だろう。あとは思う存分ストーンゴーレム相手に今の俺の力を試すだけだ。
考え事をしている間に目の前にまで迫っていたストーンゴーレムの右ストレートをメイスで受け流す。さっきと変わらず、かなりの重さだが問題ない。
そのまま続く左のパンチを潜り抜けるようにかわし、再び右足へとメイスを叩き込んで後方へと走り抜ける。
ここからは我慢比べだ。
俺の体力が尽きるか、ストーンゴーレムの体力が尽きるか。まあ、ヤバくなれば俺は逃げるので公平な勝負とはいいがたいが、ダンジョン自体が非常識な存在なので問題ない。
メイスを両手で構え、こちらへと振り向くストーンゴーレムの様子をうかがう。
石の塊であるその顔からは、何の感情もうかがえないが俺のことをうっとおしく感じたりしているのだろうか。それとも単に機械的に排除しようとしているだけか。
こちらへと向かってくるストーンゴーレムに対し、こちらも駆けていく。
こちらが駆ける様子を見て、ストーンゴーレムが足を止める。その場で両腕を広げ、まるで俺を抱きとめようとするかのような姿だ。
だが、実際にはそんな平和な状況になるわけがない。俺が射程距離に入った瞬間、左右から挟み込むように両手をたたきつけてくる。
なかなかにいやらしい攻撃だが、直前で急ブレーキをかけ、バックステップでその攻撃をかわす。
あいにくこの距離ではメイスが届かないので、ダメ元で硬球を右足に向けて投げつける。
相変わらず、ダメージが入っているかわからないが、命中はした。
そのままストーンゴーレムを中心に円を描くように走り出す。
すぐにストーンゴーレムが腕を振り回すように体を回転させてくるが、腕の射程を外れた距離を走っているので当たることはない。近くに感じる風圧に若干の恐怖を覚えるが、それだけだ。
2周ほどしたところでうまく背後をとることができたので、ひざ裏を狙ってメイスを叩き込みに行く。人間と同じようにバランスを崩すかどうかはわからないが、ものは試しだ。結構な確率で無理な気はするが。
だが、近づいた瞬間にストーンゴーレムは回転を止め、逆回転でバックブローを放ってきた。
「くっ。」
隙を突かれたような形になってしまったため、かわす余裕がない。慌ててメイスを構えて防御するが、その威力を殺し切れず後ろへと吹っ飛ばされる。
慌ててステータスを確認すると、HPが少し削られている。
そういえば、ストーンゴーレムの攻撃を正面からまともに受け止めるのは、装備を更新してから初な気がする。今まではかわすなり、受け流すなりしていて、ダメージを受けることはなかった。だが、正面から受け止めるとメイスで防御していてもダメージが通ってしまうらしい。
まあ、動けなくなるとか、HPの減少量が危険なレベルというわけでもないので問題はないか。むしろ、正面から受け止めても問題ないということがわかってよかったかもしれない。
ただ、問題は受け止めてもその場でとどまれないことか。そうなると、マンガやアニメよろしく正面に立って殴り合うみたいなことはできない。まあ、相手は両腕が使えるのにこちらはメイス1本という状況では、どう考えても殴り負けるのでやらないが。
考え事をしつつ、背後の壁までの距離に余裕があるところまで後退する。ストーンゴーレムも向かってきているので、止まって休む余裕はないが、後退していれば少しは間をとることができる。
とりあえず、疲れた場合はこんな感じで一息つくことにしよう。ただ、緩慢と同じようなことをしていると隙を突かれそうなのでそこは気を付けないといけないが。休もうと後退しているときに、急に走ってこられたりするとやばいし。まあ、ストーンゴーレムには遠距離攻撃がないのでそこは救いだが。
ストーンゴーレム相手にヒットアンドアウェイの戦法で攻め続ける。時折、タイミングよくカウンターを合わせてきたりするので油断できない。まあ今のところ、うまく受け流したり、防御したりできているので大丈夫だが。
ただ、体力的なものや集中力的なものがそろそろ辛い。徐々にストーンゴーレムの攻撃を正面で受ける頻度が上がってきている気がする。一応、HPはまだ7割近く残っているので、一撃でどうこうと言うことはないはずだ。しかし、集中力が落ちてきていることを考えると撤退も考慮すべきなのか。
そんなことを考えつつ時間を確認すると、ストーンゴーレム相手に戦い始めてから1時間近く経っていた。道理で、色々ときつくなるわけだ。
しかし、いまだにストーンゴーレムに外見的な変化はない。さすがにここまでやって、何の変化もないというのは不安になる。
撤退か続行か。
安全策をとるのであれば、当然撤退ということになるのだろう。しかし、撤退するというのは気分的に微妙だ。1時間もかけて何をやっていたんだという気分になる。実際には1時間かけても倒せないということが分かったので無意味ではないんだが、やっぱりモヤッとしてしまう。
とりあえず、HPが半分を切るまでは続行してみるか。ストーンゴーレムの攻撃をノーガードで受けた場合、おそらくHPの2割くらいを持っていかれると思われる。そう考えると、5割あれば2発は大丈夫という計算になるのでどうにかなるだろう。
いい加減に見飽きたストーンゴーレムの進撃に合わせ、こちらもメイスを構えて突撃する。
殴りつけてくる拳をかわし、すれ違いざまに右足へとメイスを叩き込む。
この戦いの間、可能な限りストーンゴーレムの右足を狙うようにしていたが、よくよく考えるとダンジョン産防具のように全体を防御するようなシステムになっているのであれば意味のない行動なんじゃないだろうか。
ストーンゴーレムから離れた位置で振り返りつつ、いやな考えを頭を振って打ち消す。
仮に右足を狙わなかったとしても、体格的な問題でメイスが届く位置はせいぜい胸の位置程度だ。頭部が狙えるというのであればまだ違うかもしれないが、胸の位置程度であれば狙いが定まっている分足の方がやりやすいと思っておこう。
こちらへと足を進め始めたストーンゴーレムに対し、今日何度目かわからない突撃を行う。
「いい加減に壊れろっ!」
いろいろと溜まってきた鬱憤を言葉にし、すれ違いざまにメイスを叩き込む。
「!?」
言葉にしたことが良かったのか、あるいは願望が見せた幻か、視界の隅で石の破片が飛ぶのが見えた。
それを目で追おうとして足が緩み、いつもより近い位置で止まってしまう。
気づいた時にはストーンゴーレムの拳が目の前にまで迫っていた。
「くそっ。」
メイスを掲げてガードしようとするが間に合わず、腕を使ってガードする。合わせて衝撃を受け流すために軽く後方へと飛ぶ。
自ら飛んだこともあり、結構な距離と吹き飛ばされて地面を転がる。だが、そのおかげでストーンゴーレムが近づいてくるまでに体勢を立て直すことができるはずだ。
立ち上がり、メイスを正面に構える。予想通り、ストーンゴーレムと接触するまでにまだ余裕がありそうだ。その猶予を使ってステータスのHPを確認する。
さすがにメイスでガードした時よりもダメージが大きいみたいだが、一応腕でのガードが間に合ったのだろう。まだ、HPは6割をキープしている。
そのことに安堵し、正面のストーンゴーレムを見据える。
先ほどの破片が見間違いでないのであれば、もう少しでストーンゴーレムのHPを削りきれるはず。ネット上の情報を信じるのであれば、残り1割を切っているはずだ。
単純計算でどれくらいだ?
早ければ5分程度か?まあ、かかっても順調に削れば10分くらいか。……10分と考えると、まだそれなりにかかりそうな気がするな。
まあどちらにせよ、まずはさっきのが見間違いじゃないことを確認すべきだろう。
程よく距離を詰めてきたストーンゴーレムに対して駆け出す。
足を止め、両腕を広げた状態で待ち構えるストーンゴーレムの懐へと飛び込む。
いつも通り左右から両手を使ってつぶしに来るかと思っていたが、その気配がない。
その違和感に警戒しつつメイスが届く距離まで詰める。
瞬間、ストーンゴーレムの右足が飛んできた。
「うおっ。」
驚きつつも、警戒していたおかげでメイスを使って受け流すことに成功する。
そのまま通り過ぎた右足にメイスを叩き込む。
今度ははっきりと右足から破片が飛び散るのが見えた。
「よしっ。」
喜びを声に出しつつ、追加で飛んできた腕をバックステップでかわす。そのまま後退し、ひとまず距離をとる。
とりあえず、ストーンゴーレムのHPが残り1割を切ったのは間違いなさそうだ。いきなり蹴りという新しい動作を繰り出してきたのには驚いたが、対処できないような理不尽な攻撃ではない。これが、HPを削ったことによる特殊行動なのかはわからないが、まあ問題ないだろう。このまま、今までのように削り続けるだけだ。
ようやく見えた終わりに、テンションを上げながらストーンゴーレムのHPを削っていく。
先ほどまでとは違い、文字通りストーンゴーレムの身体が削れていくので、今までの疲れを忘れたかのように気持ちよく身体が動く。足に胴体、腕と狙いやすい部位にメイスを叩き込み、その都度破片が飛んでいく。
数分繰り返した今では、目で見てわかるくらいにストーンゴーレムはボロボロの姿になっている。
あともう一息。その思いを胸にストーンゴーレムへと駆ける。
ストーンゴーレムから放たれた右ストレートをかわし、その胴体へとメイスを叩きつける。
同時にストーンゴーレムが動きを止め、一瞬の後、力なく崩れ落ちた。
「っしゃああああっ!!」
俺は柄にもなく喜びの叫び声をあげた。
書き終わったつもりだった次話が途中だったので、次の更新は未定です。
一応、今月中には更新するつもりですが。




