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ダンジョンのある風景  作者: はぐれうさぎ
第1章

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第19話 新しい力の確認

 ダンジョン管理機構のアイテムショップを後にした俺は、空腹を覚えて時計を確認する。見るとすでにお昼時だ。

 せっかくだし昼は外で食べて帰るかと、そう考えて車に戻る前に近くの定食屋に足を向ける。

 店に入ると店の中は近くに勤めているのであろうスーツ姿の人たちでほぼ満席だった。わずかに空いていたカウンターの席に案内され、日替わり定食を注文する。

 定食が来るまでの待ち時間の間、なんとなしに店内を観察する。

 テーブルに座り部下と思しき男性と話している男性、同じようにテーブルで給料が安いと文句を言っている女性たち、カウンターで並んで愚痴をこぼしている男性2人組など、店内には俺が自由を得た代わりに失ったかつての日常風景があった。

 それを見て今日が平日であったことを思いだす。単純に探索者の数が減ったからだと思っていたが、アイテムショップに客がいなかったのはそのせいだったのかもしれない。曜日感覚すら忘れ始めているが、もう少し世間とのかかわりを持つべきなのだろうか?

 まあ、そんなことよりも今はダンジョンの攻略を考えるべきか。老後というにはまだ早いが、今後の生活をどうやって過ごすかはダンジョンが片付いてからゆっくりと考えよう。

 そんなことを考えながら俺は店内の観察を終え、カウンター横の天井近くに設置されているテレビに視線を移す。画面ではお昼のワイドショーが流れ、ちょうどダンジョンに関する特集を行っていた。

 

 やって来た定食を受け取り、メインの焼き魚に箸を付けながらテレビを眺める。テレビのボリュームが抑えられているので音声はよく聞き取れないが、テロップの文字や映像で大体の内容は読み取れる。

 それによると、例の“闇のクリスマス事件”以降のダンジョン攻略の鈍化はかなりのものらしい。事件が起こる前、去年のダンジョン攻略は月に20~30件の成果があったらしいが、事件後の今年の攻略ペースは月に10件もないらしい。

 これは活動している探索者が減った影響で、自衛隊内のダンジョン攻略を行っていた部隊までもがダンジョンの反乱を抑えるための維持管理に回る必要が出たためのようだ。もちろん、ダンジョンが成長していることによってダンジョン攻略のために必要な時間が増えていることもあるのだろうが、攻略部隊の減少が一番の原因だろう。

 そもそもダンジョン攻略の自衛隊隊員に余裕があれば、家のダンジョン程度は調査に来た隊員たちによって1週間もかからずに攻略されていた気がする。そうされなかったということは、今はその程度の融通すら利かないほど余裕がないのだろう。まあ、単にお役所仕事で調査だけをやって後に回されただけの可能性もあるが。

 

 続けてテレビから流れる情報を眺めていると、この状況を憂慮して政府が対策を検討しているらしいと専門家らしきコメンテーターが説明していた。曰く、対策としては自衛隊の攻略部隊への人員の追加投入か、探索者への支援を追加することによる探索者の活動数を増やすことが考えられるらしい。そして、政府としては探索者の活動数を増加させることによる人員確保を考えているらしい。具体的な内容はまだ詰めている段階なので不明とのことだが、近いうちに正式に発表されるだろうとのことだ。

 何というか、例の事件からまだ半年もたっていないというのに、腰の重い政府が対策を検討しているということに驚く。それほどまでにひどい状況なのだろうか?正直、自衛隊の攻略部隊や初期から活動している高レベルの探索者がいれば、時間が必要になるかもしれないが、そんなに心配するほどのことでもないと思っていたのだが。

 まあ、探索者として活動している俺からしてみれば、政府が探索者支援を行ってくれるというのであれば、ありがたくその恩恵を受けさせてもらうだけだ。

 そんなことを考えながら、次の話題に移っているテレビから目を離して店を後にした。

 

 

 

 

 

 次の日、早めの昼食を終えた俺はダンジョン管理機構のアイテムショップへと向かった。

 

 「いらっしゃいませ。」

 

 店に入ると昨日と同じように店員の声に迎えられる。店の中を見るが、今日も俺以外に客は来ていないらしい。そのまままっすぐにレジカウンターまで向かい、用件を告げる。

 

 「昨日スキルスクロールを注文した森山ですが、届いているでしょうか?」

 

 「はい、森山様ですね。確認いたしますので、少々お待ちください。」

 

 そう言うとレジカウンターに立っていた女性店員は店の奥へと消えていった。

 しばらくすると先ほどの女性店員ではなく店長が箱を持って店の奥から出てきた。

 

 「お待たせしました、森山様。取り寄せとなっていた“メイス”のスキルスクロールも問題なく届いています。こちらが商品となりますのでご確認ください。」

 

 そう言うと手に持っていた箱からスキルスクロールとマジックストーンを取り出し、俺の前に並べる。

 確認してくれと言われても、俺は“鑑定”スキルなど持っていないのでスキルスクロールの区別などつかない。スキルスクロールが入れられた袋に貼られているラベルで名称を確認するくらいしかできない。なので素直に質問することにした。

 

 「何かそれぞれのスキルを確認する方法があるのですか?」

 

 「あっ、すいません。ここではラベルで確認してもらうしか方法はないです。スキルを取得する際にはスキル名がわかりますので、そのときに改めて間違いがないかをご確認ください。」

 

 取得時にスキル名が確認できるのであれば問題ないか。そう結論を出すと俺は支払いを済ませて店を出た。

 

 

 家に帰った俺は、装備を整えるとすぐにダンジョンへと向かった。

 といってもダンジョンへ挑戦するためではなく、スキルを覚えるためである。

 残念ながら、スキルスクロールからスキルを覚えるのもダンジョンエリア内でなければできない。不便に思いながらもダンジョンの入り口、ダンジョンクリスタルの前に立ってスキルスクロールを広げる。

 すると、頭の中にスキルを覚えるかどうかのメッセージが現れる。

 

 《スキル:“メイス”を取得しますか?》

 《“はい”“いいえ”》

 

 スキルを覚えるためにスキルスクロールを広げたのだ。スキル名にも間違いがない以上、選択肢は“はい”しかないだろう。

 そんなことを考えていると、頭の中に浮かんだメッセージで“はい”が選ばれ、手に持っていたスキルスクロールが光の粒となって消えた。

 スキルスクロールが消えたことに驚きながらも、スキルを覚えたかどうかを確認するためにステータスを表示する。すると、問題なく“メイス”のスキルが追加されていた。

 それを確認した俺は、続けて残り2つのスキルについても取得していった。

 

 

 「さて、じゃあスキルの確認に向かいますか。」

 

 予想していたよりも簡単にスキル取得を終えた俺は、時計を確認しながらそうつぶやく。いつもよりも遅い時間だが、ダンジョン産武器と取得したスキルの確認だけであれば、そんなに時間はかからないだろう。そんなことを考えつつ、新調した魔鉄のメイスを片手にダンジョンの入り口へと足を向けた。

 

 

 ダンジョンの第1階層へと続く階段を降りた先は薄暗く、相変わらずモンスターがいない。それを確認した俺はここで1つめの確認を行うことを決める。

 確認するのは“壁走り”のスキルだ。

 とりあえず“壁走り”でどの程度のことができるかがわからないので、モンスターがいないところで確認する必要がある。モンスター相手にいきなり使って目の前でこけるなんてことはさすがに勘弁したい。

 

 「よしっ。」

 

 少し歩いた先であらためてモンスターがいないことを確認すると、気合の言葉とともに壁に向かって走り出す。

 目の前にある壁は洞窟などにあるような岩肌だ。ある程度の凹凸はあるが、駆け昇るために足を掛けることができるようなきちんとした足場はない。

 いったいどのようにして壁を走ることになるのか、好奇心と不安を抱えながら壁に足を掛ける。

 

 「うわっ。」

 

 壁を3歩進んだところで俺はバランスを崩して地面に落ちる。幸い、ステータスにより向上した身体能力によって転倒することなく地面に足を付けることができた。

 

 「これは練習が必要か……。」

 

 誰に向けるでもなくつぶやく。

 1歩目は特に違和感もなく足を進めることができた。だが、2歩目からは感覚が異なっていた。

 足が壁に吸い付くのである。下半身だけが壁からの重力に引っ張られるような感覚だろうか。それでいて上半身に関しては通常通り地面からの重力に引っ張られるのである。何とも妙な感覚だった。

 何にしてもこのスキルを活かすためにはこの感覚に慣れるしかないだろう。練習あるのみだ。そう決めると俺は壁を走りながらダンジョンを先に進み始めた。

 

 30分ほど経過した頃、俺は正規ルートから外れた手前の大部屋の前に来ていた。

 “壁走り”の確認をしながら進んできたので、さすがにいつもよりも時間がかかっている。だが、そのおかげで“壁走り”の特性についてはある程度つかむことができた。

 最初に感じたとおり壁を走っている間は壁からの重力により、足が壁にひきつけられるようだ。だが、走っていても進んだ距離か時間経過によって徐々に壁からの重力が小さくなるらしい。なので、足を動かし続けていれば壁を延々と走ることができるというようなことにはならなかった。

 とりあえず、現段階で壁を走ることができるのは5歩というところだ。ただ走るだけであれば10歩ほど進むことができたが、メイスを構えてモンスターを相手にしながらであればこれくらいが限界だろう。

 正直、この程度であればステータスが高ければスキルなしでもできるのではないかという考えが頭をよぎったが、深く考えないこととする。きっとスキルを取得して間もないからうまく使えないだけなのだ。決してこのスキルが使えないというわけではないはずだ。改めて考えると俺に壁や天井を駆けるなんていうアクロバットなことができるわけがないと考えたのも気のせいだ。

 

 ……。

 思わずマイナス方向の考えに傾いてしまったが、気を取り直して他の確認を進めよう。新しく得たものは“壁走り”だけではないのだ。いや、決して“壁走り”を諦めたわけではないが。

 誰に向けたものかもわからない言い訳をしつつ、扉を開ける。部屋の中にはいつもと変わらず、赤、青、緑のスライムたちが飛び跳ねていた。

 

 「さて、どちらから確認するか。」

 

 “投擲”スキル、“メイス”スキル、そして魔鉄のメイスの使い勝手を確認するのだが、“メイス”スキルと魔鉄のメイスの確認は同じことだ。なので“投擲”か“メイス”かということになるのだが、考えている間に近くにいたグリーンスライムに気付かれたようだ。こちらに向かってきている。まずは迎撃ついでにメイスの確認をしよう。

 

 向かってくるグリーンスライムは3匹。真ん中の1匹を先頭に残りの2匹がやや遅れてついてきている。

 俺はメイスを両手で構え、グリーンスライムを待ち構える。

 先頭のグリーンスライムは俺の目前にまで迫るとフェイントや連携もなく、俺に向かって飛びかかって来た。

 俺は慌てることなく構えたメイスを振り抜く。

 

 パンッ。

 

 目の前のグリーンスライムが音を立てて弾けた。

 

 「は?」

 

 意外な光景に思わず間の抜けた声を出してしまう。だが、遅れて迫って来た残りの2匹が視界に入ると俺は慌てて迎撃に入った。

 

 とりあえず、グリーンスライムはメイスの確認に向いていないということが分かった。残った2匹については弾け飛ぶようなことはなかったが、どちらも1撃で片付いてしまったのだ。

 まあ、金属バットの頃でも2、3発で片付いていたのだから当然といえば当然かもしれない。メイスの確認は奥の方にいるブルースライムとレッドスライムに改めてお願いするとしよう。

 だが、そのためには手前の方にいるグリーンスライムが邪魔だ。メイスを使ってさっさと片付けてもいいのだが、ここは“投擲”スキルの確認に付き合ってもらおう。

 

 そう考えて俺は腰に巻いたウエストポーチからここに来るまでに拾っておいた小石を取り出す。ウエストポーチは今回から着けはじめたものだ。投擲のために用意したものを入れている。

 まずは左手にいる2匹だ。幸い、先ほどの戦闘でも特に気付かれた様子はない。

 狙いをつけて1投目を放つ。

 狙い通りグリーンスライムの中心に直撃する。

 が、どうやら小石では1撃で仕留めることはできないらしい。こちらに気付いたグリーンスライムたちが向かってくる。

 2つ目の小石を取り出してすぐさま投げつける。

 2つ目の小石も問題なく命中し、グリーンスライムに対してダメージを与えているようだが、一瞬動きを止めるだけでそのまま迫ってきている。

 3投目、4投目と続けて投げる。

 4投目が直撃したところでグリーンスライムは動きを止め、光となって消えた。どうやら倒したようだ。

 だが、もう1匹のグリーンスライムが目の前まで迫っている。

 後ろに跳び下がって距離をとるが、この距離で投擲は微妙だろう。あきらめてメイスで殴りつける。こちらは1撃で仕留めることができた。

 

 軽く周囲を見回してスライムが迫って来ていないことを確認し、右手にいるグリーンスライム3匹に対しても同じように投擲の効果を確認する。

 こちらも先ほどと同様に小石4発でグリーンスライム1匹を倒すことができた。だが、距離を詰められた残りの2匹についてはメイスで倒している。わかってはいたが投擲だけで倒しきるのは無理そうだ。やはり投擲は牽制に使う程度になるだろう。

 

 さて、次はどうするか。

 部屋に入ってすぐのところでスキルの確認を行っていたので、奥の方にいるレッドスライムたちは今のところ反応していない。それなりに音は出ていたはずなので、気づいているのかもしれないがこちらに対して攻撃を仕掛けてくる気配はない。

 残ったスライムたちは大きく分けて2か所に分かれている。右奥にレッドスライム2匹を含めた10匹の集団。左奥にブルースライム3匹とグリーンスライム2匹の計5匹の集団だ。

 まあ、普通に考えれば数の少ない左側から攻めるんだが、間違いなく右にいるレッドスライムたちにも気づかれるだろう。そうなると結局はいつも通りの乱戦だ。

 ただ、今日の俺には“投擲”スキルがあり、魔鉄のメイスに“メイス”スキルもある。最終的にいつものような乱戦になるとしても、それまでに新しく得たスキルがどれほどの効果を発揮するかを確認させてもらおう。

 

 

 ウエストポーチから小石を取り出し、確実に命中させられるように距離を詰める。まずは左側のスライムたちを狙い、釣り出したところを速攻で倒し、右側のレッドスライムたちへというのが理想だ。

 レッドスライムたちからできるだけ距離をとるような位置取りを考えるが、やはり奥にいたスライムたちにも気づかれていたようだ。レッドスライムの周りにいたブルースライムとグリーンスライムがこちらを囲むように移動を始める。

 実際に囲まれてしまっては面倒なので、すぐさま行動に移すことにする。

 右手に持った小石を振りかぶり、全力で左手にいたブルースライムへと投げつける。

 同時に俺自身もスライムたちに向かって駆け出す。

 投げた小石はブルースライムに命中したようだが、当たった瞬間に小石が砕けるのが見えた。正直、ダメージが入ったかどうかは微妙な気がする。ただまあ、一瞬ブルースライムの動きが止まったので全くの無意味ということはないはずだ。

 スライムたちが目の前に迫る。

 まずは先頭にいた、小石が命中したのとは別のブルースライムに殴りかかる。駆け抜けつつ、他のスライムたちが飛びかかってくるのをかわしつつ殴ることができたが、ブルースライムはさすがに一撃とはいかないらしい。殴った勢いで弾き飛ばされ、転がっていくのが見える。

 スライムたちから距離をとったところでターンし、再び強襲する。俺を待ち構え、正面から飛びかかってきたグリーンスライム2匹をまとめて薙ぎ払い、横から突っ込んできたブルースライムは無視してダメージを耐える。

 グリーンスライムが片付いたかと思ったが、クリーンヒットしなかった1匹が残ってしまったようだ。

 地味に損したような気分になるが、今は動きを止めないことを優先する。

 再びターンし、先ほど殴ったブルースライムを狙いに行く。途中で先ほど薙ぎ払ったグリーンスライムを跳ねるように蹴り飛ばし、消滅したことを確認しながら殴りつける。

 残念ながら2発でもブルースライムはダメらしい。残りの2匹の攻撃をかわしつつ距離をとり、残ったブルースライム3匹と向き合う。

 周りにも目を向けるとレッドスライムのそばにいたスライムたちが囲むように展開しているのが見える。どうやらここからは部屋に残ったすべてのスライムを相手にすることになりそうだ。

 

 乱れた息を整えるために間をとっていると、奥にいたレッドスライムの片方が詠唱を始める。それに合わせるように徐々に距離を詰めてきていたブルースライムが突っ込んでくる。

 俺はダメ元で用意していた小石をレッドスライムに向かって投げつけ、突っ込んでくるブルースライムに備える。タイミング的にレッドスライムからの火の矢が飛んでくるのは、ブルースライムが突っ込んできた後になるはずだ。レッドスライムを視界の隅に収めつつ、正面のブルースライムをメイスではじき、残りを腕と足を使ってガードしようとする。

 

 「!?」

 

 瞬間、意外な光景が見えた。レッドスライムの詠唱がキャンセルされたのだ。

 どうやらダメ元で投げた小石が当たったらしいが、予想外の光景にワンテンポ遅れて突っ込んできた第2陣の攻撃の対処が遅れる。腹に受けたダメージに後退しつつ、近くに着地したブルースライムを殴りつける。

 さらに右から飛びかかってきたブルースライムを弾き飛ばし、そのまま空いたスペースを飛び出して一気に距離をとる。

 だが、スライムたちの追撃は止まらない。今度はレッドスライム側に残っていたグリーンスライムが飛びかかってきた。さらに、今度は奥で2匹のレッドスライムが詠唱を始めているのも見える。

 詠唱がキャンセルされたときのMPがどうなるのかとか、かなりテキトーに投げた小石がなぜあたったのかとか、気になることがあるのに考える時間を与えてくれない。とりあえず、気になることはダンジョンを出てから考えるなり、調べるなりすることにして、今は目の前の状況を片付けるべきだ。

 そう結論付けた俺は、目の前のスライムたちをかわし、いなし、なぐりかかって1匹ずつ片付けていった。

 

 

 「あー、しんどい。」

 

 周囲にいたスライムたちを片付けた俺はそうこぼし、残ったレッドスライムを見る。一応、付き従うようにグリーンスライムが1匹残っているが、1撃で倒せるので無視してもかまわないだろう。

 というか、グリーンスライムを1匹だけ残すくらいなら乱戦時に突っ込ませた方が戦力の使い方としては効果的だと思うんだが、どうなんだろうか。スライムたちも連携をとったりしているのでそれなりの知能がありそうなんだが、個体差があるのか?……まあ、考えても仕方ないか。

 とりあえず、レッドスライムたちからは乱戦中に計6発の火の矢が放たれている。なので、残りは2発プラスαのはずだ。詠唱キャンセルでもMPを消費するのであれば1発プラスαだが、まあ2発は残っていると考えるべきだろう。

 

 ゆっくりとレッドスライムたちに向かって歩き始める。左手にメイスを持ち、右手には投擲用の小石だ。

 俺は右利きだから右手で小石を持っているが、“投擲”スキルを持っていれば利き手ではない左手でも同じように投げられるんだろうか?ふと気になったので、メイスと小石を入れ替える。

 と同時にレッドスライムの片方とグリーンスライムが飛び出してきた。さらに、残ったレッドスライムも詠唱を開始している。

 ……さすがに敵の前で隙を見せるような真似はすべきではなかったな。すでに手遅れであることを理解しつつ反省する。ついでに先行して飛びかかってきたレッドスライムに対して小石を投げつける。

 

 「!?」

 

 本日2度目の驚きだ。慣れない左手で下からトスするように投げた威力のない小石は、予想外にも飛びかかってきていたレッドスライムを止めた。

 驚きで一瞬動きを止めそうになるが、慌ててその場に落ちたレッドスライムをメイスで殴り飛ばす。ついでに無謀にも飛びかかってきたグリーンスライムを片付ける。

 

 「ちっ。」

 

 だが、グリーンスライムの行動にも効果はあったらしい、数瞬遅れて飛んできた火の矢の防御が遅れて体勢を崩される。若干の焦りを覚えるが、残っているのはレッドスライム2匹なので追撃はない。急いで体制を立て直し、メイスを構える。

 構えなおした俺に向かって、レッドスライム2匹が同時に飛びかかってくる。火の矢を放ったレッドスライムもすぐさま距離を詰めてきていたらしい。

 メイスと腕で防御し、バックステップで距離をとる。

 検証のため、右手で小石を取り出して駆け出す。

 メイスが届く直前の距離で、手首のスナップを利かせて小石を右側のレッドスライムへと放つ。

 こちらへ飛びかかろうとしていたレッドスライムの動きが止まった。それを視界の隅で確認すると、左側のレッドスライムに向かってメイスを全力で振りかぶった。

 

 その後も残ったレッドスライム2匹を相手に“投擲”スキルの検証を行ったが、思ったよりも使えそうなことが分かった。というか、命中補正と行動阻害の効果が予想以上に優秀だ。しかも、俺が投擲というか投げるという認識であれば十分なようで割とテキトーな投げ方でもスキルの効果が発揮されていた。さすがに小石を指で弾いて飛ばすのはダメみたいだったが。

 命中補正については、狙った対象に向かって投げていればほぼ100パーセント命中した。さすがにあらぬ方向に向かって投げた場合は当たらないが、おおよその狙いがあっていれば追尾するように軌道が変化して命中するらしい。

 もう一つの行動阻害のほうは、結果からそう思っているだけで、実際には単なる威力の上昇効果かもしれない。なので、一定以上のレベルのモンスターには効果がない可能性があるが、少なくともスライムに対しては命中すれば必ず行動をキャンセルさせることができた。検証する必要はあるが、より上位のモンスターに対しても投擲物を強化することで同じような効果が狙えるかもしれない。

 

 残念ながら、“メイス”スキルと魔鉄のメイスの確認については単に威力が上がったということしかわからなかった。スキルの効果でメイスを扱う技量も上がっていそうなものだが、現状の戦い方がメイスを振り回しているだけみたいなものなのでよくわからない。より強い敵を相手にメイスを振るうことになればわかるのかもしれないが、自分の技量が上がったのかスキルの効果なのかはおそらくわからない気がする。

 

 どちらにせよ、新しいスキルと武器の確認は、“壁走り”効果のに不安を覚えつつもおおよそ成功といえる結果に終わった。

 

 

ひっそりと再開。

もうひとつの作品ともども完結まで書き切りたいんですが、なかなか思うように進められないです。

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