表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンのある風景  作者: はぐれうさぎ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/41

第11話 釣り出し実験

 佐々木剣術道場から帰った俺は車に積んでいた荷物を片づけ、シャワーを浴びることにした。

 この後、ダンジョンに挑戦することになるので結局は一緒なんだが気分の問題だ。

 シャワーを浴びてすっきりした俺は、防具を着込んでダンジョンへと出発した。


 3度俺は小部屋の扉の前にやって来た。今日の目的は小部屋からスライムたちを釣り出すことができるかどうかの実験だ。

 対複数戦闘に関して龍厳さんにも相談したんだが、とにかく大事なことは囲まれないことらしい。囲まれたところで龍厳さんくらいになると駆け引きから相手を崩して突破することもできるらしいが俺には無理だ。

 なので、小部屋の中に入って4、5匹を相手に対複数戦闘の訓練を実施、囲まれそうになったらそのまま通路まで後退。部屋から釣り出したスライムたちを掃討して次のスライムたちに移る。というのが今日の予定だ。

 正直、部屋の奥にいたスライムたちを通路まで釣り出せるかどうかはやってみないとわからない。まあ、それも含めての実験なのだから気負わず、無理せずに行くことにしよう。


 左手で扉を開けて部屋の中を見渡す。

 昨日と変わらず10匹以上のスライムが思い思いに跳ねているのが見える。昨日5匹ほど削ったはずだが、その分もリポップして補充されたのだろう。というか、よく考えてみると調査の日に自衛隊の人たちが一度全滅させているはずなので今更だ。


 俺は扉から手を放し、部屋の中へと進む。

 厄介なレッドスライムは今日も部屋の奥の方にいる。まだこちらに気付いてはいないようだが戦闘を始めると気付かれるだろう。レッドスライムの動きにも注意しないとな。

 そんなことを考えつつ、まずは扉の右手にいた3匹のグリーンスライムを相手にすることに決めた。


 俺はバットを正面に構え、スライムたちとの距離を詰める。

 通路で戦ったときのように相手の動きを制限することを考え、俺は1番左のグリーンスライムに狙いをつける。左から攻撃を仕掛けて壁との間で動きを制限する作戦だ。


 俺は作戦通り1番左のグリーンスライムに向かって後ろからバットを叩き込む。

 こちらに気付いていなかったため、問題なくバットが直撃する。

 バットを構え直してスライムたちの様子を窺う。

 1番左にいたグリーンスライムは今の一撃で動けなくなっているようだ。

 だが、残りの2匹はこちらを向いて臨戦態勢となっている。

 ひとまず、動かないグリーンスライムは置いておこう。


 2匹のグリーンスライムが飛び掛かってくる。

 俺は焦ることなくバットを使って2匹の体当たりを受け止める。

 スライムたちが地面に落ちたことを確認すると正面に落ちたグリーンスライムに向かって上段から力のこもった一撃を加える。


 正面のグリーンスライムも今の一撃でしばらく動けないだろう。残りは右の1匹だけだ。

 余裕のできた俺は周囲の確認を行う。

 近くにいた数匹のスライムたちがこちらに気付いて移動してきているようだが、問題のレッドスライムはまだこちらに気付いていないらしい。

 それを確認した俺は目の前のスライムたちに向き合い、順番にとどめを刺していった。


 3匹のスライムたちにとどめを刺した俺は、後ろからこちらに近づいてくるスライムたちに目を向ける。

 今度はグリーンスライムが3匹にブルースライムが1匹のようだ。

 次いでレッドスライムの様子も窺う。

 とどめを刺すときに結構な音がしていたと思ったがまだ気づかれていないようだ。相変わらず部屋の奥の方で他のスライムとともにポンポンと跳ねている。


 俺はスライムたちに目を向けたまま壁沿いに移動し、左手に壁が来るように位置取りを変えた。

 スライムたちはブルースライムを先頭にこちらにやってくる。

 先ほどのように壁を使って動きを制限することはできそうにない。ここは移動しながら敵をかく乱するように攻撃してみよう。


 そう決めると俺はスライムたちとの距離を一気に詰め、ブルースライムへと殴り掛かった。

 突然の攻撃にブルースライムの回避が遅れたようだ。直撃ではないが、ダメージを与えた感触が伝わってくる。

 俺はそのままスライムたちの間を駆け抜けると、一番後方にいたグリーンスライムに対して振り向きざまに一撃を放つ。

 不安定な体勢からの一撃はこちらの動きに反応できていなかったグリーンスライムに直撃した。

 だが、威力は不十分だったようだ。まだ動きを止めるまでには至っていない。


 俺はバットを前に構えてやや後ろへと下がり、スライムたちを視界に収める。

 すると、攻撃を加えていないグリーンスライム2匹が飛びかかって来た。

 俺はそのうちの1匹に狙いをつけてバットを突き出し、弾き飛ばす。

 そのまま身体を回転させ、もう一匹の体当たりをかわした。


 攻撃をかわしたことで俺は先ほど攻撃を加えたグリーンスライムの正面へと移動していた。

 先ほどの攻撃で動きが鈍っているグリーンスライムに攻撃を加える。

 直後にその奥からブルースライムが飛び込んでくるのが見える。

 俺はバットを持ちあげブルースライムの体当たりを正面で受け止めた。


 地面に落ちるブルースライムに攻撃を加える。

 続けて隣で動きを止めているグリーンスライムにも攻撃を加える。

 2回繰り返すとグリーンスライムは光となって消えた。

 そのタイミングで位置を入れ替え残りのグリーンスライムを視界に収める。

 先ほどあしらった2匹のグリーンスライムはすでに攻撃可能な距離にまで復帰していた。


 バットを正面に構えて攻撃に備える。

 右のグリーンスライムが飛び込んでくる。一拍遅れて左のグリーンスライムも飛びかかってくるのが見えた。

 俺は右のグリーンスライムをバットを伸ばして弾くとそのままバットを振りまわして左のグリーンスライムを打ち抜いた。

 続いてブルースライムが飛び込んでくる。

 俺は腕でガードしながら後ろに跳び下がる。

 腕に軽い衝撃を残しブルースライムが目の前に落ちる。

 だが、俺の目は部屋の奥から飛んでくる火の矢を捉えていた。


 体の向きを変え、バットを振りかぶる。

 衝撃とともにバットが弾かれた。だが、火の矢を相殺することはできたようだ。

 視線を目の前のスライムたちに戻す。

 ブルースライムとグリーンスライム1匹がこちらの様子を窺っている。先ほど打ち飛ばしたグリーンスライムは転がったままだ。


 さて、どうするか。一応今日の目的は部屋の中からスライムたちを釣り出すことができるかの確認だ。レッドスライムに気付かれた以上、一度部屋の外に出るのもありだろう。

 バットを構えながら考える。

 そこで部屋の奥から火の矢が飛んでくるのが見えた


「立て続けかよ。」


 俺は一度部屋を出ることを決めた。

 火の矢を避けるように扉へと駆けだす。

 すると火の矢が俺の後を追うように軌道を変えた。


「はあ?初期魔法っぽいのにホーミング付きってマジかよ。」


 俺は仕方なく足を止め、バットを構えて火の矢に備える。

 構えたバットに火の矢が直撃した。衝撃によろけそうになるのを必死でこらえる。

 だが、その隙にブルースライムとグリーンスライムが飛び掛かって来ていた。


「くっ。」


 腹部に軽い衝撃を受ける。ダメージは軽微だがうっとおしい。

 俺はバットを振るってスライムたちを振り払うと扉へと駆け、小部屋から脱出した。


 

「ふう。」


 扉を出て少し離れたところで一息つく。

 予想通りであれば、しばらくするとブルースライム1匹とグリーンスライム2匹が出てくるだろう。それまで少し休憩しよう。

 そう思い俺は通路の壁を背に座り込んだ。


 数分後、予想通り扉を擦り抜けてブルースライム1匹とグリーンスライム2匹が出てきていた。

 立ち上がり、スライムたちに向き合ってバットを正面に構える。

 厄介なレッドスライムはいないのだ。一気にけりをつけよう。

 そう決めると俺はスライムたちに向かって駆け出した。


 

「もう少し休憩するか。」


 そうつぶやくと俺は再び扉が見える位置に座り込んだ。

 もともとダメージを与えていたスライムたちは俺にダメージを与えることなくすでに光となっている。


 しかし、あの火の矢にホーミング機能が付いていたのは予想外だった。最悪テキトーに走り回っていればレッドスライムの魔法もどうにかなるかとも思っていたんだが、それも潰された形だ。

 追尾される以上、対応は火の矢を受け止めるか撃たれる前に潰すかのどちらかだろう。

 とりあえず受け止めるものがバットしかない以上、しばらくは撃たれる前に潰せるように動いてみよう。

 どうしてもダメそうなら盾を持つことも考えないといけないかもしれない。


 

 十分に休憩をとった俺は再び小部屋の中へと足を踏み入れた。

 どうやら今度はすでに警戒態勢だったらしい。部屋に入った途端、部屋の中にいたスライムたちが一斉にこちらを向いてきた。当然レッドスライムも同様だ。


 まあいい、どちらにしても今度は奥にいるスライムたちが部屋から釣り出せるかを確認するのだ。気付かれるのが早いか遅いかの違いだけだ。

 そう気を取り直すと俺は奥にいるスライムたちへと向かって、壁に沿って歩き出した。


 右手の壁に沿って歩く。

 このまま進むともう少しでグリーンスライム4匹と接敵しそうだ。

 バットを握る右手に力が入る。

 すると視界の隅でレッドスライムが火の矢を放つのが見えた。


「チッ。」


 足を止め、バットを振りかぶって火の矢を迎撃する。

 衝撃とともに火の矢を相殺したことがわかる。

 だが、視界の隅にグリーンスライム3匹が飛び掛かってきているのが見えた。


 バットを戻して受け止めようとするが、間に合わず腕と腹に軽い衝撃を受ける。

 地面に落ちた3匹に向き直ると横から回り込んでいた最後の1匹が飛びかかって来た。

 少し後ろに下がり左腕で体当たりを受け止める。

 そのまま地面に落ちたグリーンスライムに対して右手で持ったバットを振るう。


 ダメージは与えたが、残りの3匹の動きが早い。

 すでにこちらに飛びかかってきている。

 バットを前に構え、ガードの動きをとる。

 2匹の体当たりを止めたが1匹は足にダメージを受けた。


 ダメージは少ないがやや押されている。ここは一旦距離を取るべきだ。

 そう決めると俺は地面に転がるグリーンスライムに1発入れ、バックステップで後ろに距離を取った。


「ふー。」


 息を吐き出し、前方を見据える。

 3匹がまだ健在で1匹が地面に転がっている状態だ。

 転がっている1匹にとどめを刺したいところだが他の3匹が邪魔だ。


 真ん中のグリーンスライムが飛び掛かってくる。左右の2匹は様子見のようだ。

 バットを突出しグリーンスライムに合わせる。

 直後に左右の2匹も飛びかかって来た。

 左手をバットから放し、左のグリーンスライムの体当たりをガードする。

 右のグリーンスライムには強引にバットを振って対応する。

 ガードは成功したが、右のグリーンスライムには腕で殴りつけた形になった。

 だが、ダメージは入ったようだ。今のうちに追撃といこう。


 壁際に転がった右のグリーンスライムに対して殴り掛かる。

 左手から別のグリーンスライムが体当たりしてくるが左腕でガードだ。


 右のグリーンスライムに2発ダメージを入れたところで左腕に衝撃を受けた。

 HPが結構な量削られている。どうやらレッドスライムの火の矢を受けてしまったらしい。

 左から体当たりを繰り返してくるスライムに隠れて火の矢を見落としたようだ。

 まだHPは8割ほどあるが、このグリーンスライムにとどめを刺したら一度部屋から出よう。

 スライムたちが釣り出せるか確認しなければ。

 そう決めると俺は目の前に転がるグリーンスライムに対して両手持ちの一撃をくらわせて光に変える。

 そのままバットを振ってスライムたちをけん制すると踵を返して小部屋から脱出した。


 

 小部屋を出てから5分ほど経過した。いまだにスライムたちは通路に出てきていない。

 これは失敗かと思い、小部屋に戻ろうとした時だった。

 ついに扉を擦り抜けてグリーンスライムが通路に顔を出した。


 俺は安堵して足を止める。

 そのまましばらく待つと小部屋の中で相手をしていた3匹のグリーンスライムが揃った。

 どうやら部屋の奥にいようとこちらに対して攻撃判定を持ったスライムは通路に釣り出すことができるようだ。

 良かった。これであればレッドスライムに対してもどうにかなるかもしれない。

 実験の結果に気分を良くした俺はそのまま一気にグリーンスライムたちを掃討していった。


 

「さて、どうするか?」


 壁にもたれながらつぶやく。

 時計を確認するとダンジョンに入ってからすでに1時間半近く経過している。

 小部屋の中にはレッドスライムが1匹、ブルースライムが1匹、グリーンスライムが4匹残っているはずだ。

 そして俺の残存HPは8割ほど。


「……帰るか。」


 目を瞑り、しばらく考えて結論をつぶやく。

 今日の目的であった小部屋からのスライムたちの釣り出しが確認できた以上、無理をすることはないだろう。

 これからしばらくは小部屋からスライムたちを釣り出して通路で安全に倒してレベルアップを図ろう。

 もし、その過程でレッドスライムと少数でやりあえる機会ができれば挑戦すればいいのだし。

 そう結論を出した俺はダンジョンを後にした。


本作とは別に短編を投稿しています。

毛色の違う作品ですがよければよろしくお願いいたします。


タイトル:「雨」、ジャンル:ホラー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ