新規追加絵③ 浮かぶじいさん頭
地上から遥か深い海の底、数多もの遺失技術と仄暗い実験の産物が存在する忘れ去られた場所にいた、宙舞う人間の頭部。少年とリールの前でまるで生きているかのように振る舞ったそれは、ホログラムでしかない。限りなくリアルな、実体無き虚像である。そして、少年たちは、そういう概念を知らない。
そんな彼は自身が、バウムクーヘン・マークス・モラー、であると少年とリールに自称した。それはマークス家の初代当主の名。最早、一部の者のみが知るところとなった、過去の人物の名である。
そして、何やらの手段を用いて、彼は、シュトーレン・マークス・モラーの体を奪った。まるで幽霊の憑依のように。そして、彼はその状態では、憑依した肉体の脳内の情報を深度や精度や消耗度合は不明だが、読み取ることが可能であるらしい。
体を手にしたことが久々のことであるらしく、舞い上がってしまい、リールの精神を折り愉しんでいるうちに、少年を見誤った彼は、思い通りに折れない少年に苛立ちを感じて、暴に訴えたところ、逆に一撃で仕留められることになる。それは、器であるシュトーレンの体の魄砕く程に強力無比な一撃で、彼はそうして体を失った。
霊体のようなものであると考えると、生死は不明である。




