第七話:集合時間、それは忘れがちなもの
皆さんこんにちわ。河異です。
今回もすぐに投稿することができました。
次も早く出せると思うので、チラチラ確認してね。
それでは本編です。どうぞ
「選手のエントリーはあちらでおねがいしま~す」
途中で雨が降り、急いで闘技場に来た俺達にかけられた言葉はそんな一言だった。
しかし、傘って便利だったんだな。
振って遊んでた頃が懐かしい。あれって剣みたいにして遊ぶよね。
男は皆通る道。通過儀礼さ。
この世界に傘は無いらしく、レインコートを着るのが主流で、傘なんて発想は無いらしい。
俺のいた世界は凄かったんだな。あんな便利なものを作り出していたんだから。
エントリーを終えた俺達が案内されたのは、ゴツイ人たちがたくさんいる控室みたいなところだった。
「結構人がいるんだな」
「そりゃあ、皆お金に困ってるからね」
「どうして?」
「最近は商店の相場が上がって、質のいいものがなかなか手に入りにくくなってしまったからだよ」
「相場が上がった?」
「しかも、最近は衛兵の数も少なくなって、町の治安も悪くなってしまった」
アリシャの方に人員を割いてたのかな?
『砥石が高かったのはそのせいだね』
普通の砥石は安かったけどな。
『最低限の物はそのままか、少しの値上がりだったんじゃない?』
なるほど。
「ま、闘技場は昔から相も変わらずにぎわってますがね。そんなことしてないで、王に抗議したらいいのに」
金儲けに使おうとしている俺らが言うのもアレだけど、おっしゃる通りです。
「あ、そういえばあなたの名前を聞いていませんでしたね。私はウルスと言います」
「俺はタクだ」
イソラに言われた通り、初対面の奴には偽名を使ってみたが、どうにもスッキリしないなこれ。
『何事も慣れだよタク君』
笑うなよ。俺だって思いつきでこんな名前になるとは思わなかったわ。
「タクさんですか。これから少しの間ですが、よろしくお願いしますね」
「はい」
受け付けもタクで済ませてしまったので、この闘技場で俺の名前は完全にタクになってしまった。
「ウルスさんはどんな武器を使うんですか?」
「私ですか?フフッ、その時にお見せしますよ。人前で使うと笑われてしまうのでね」
笑われるって、どんな武器を使うんだこの人。
「あ、それより見てください!ソフトクリームですよ!私一度食べてみたかったんです!」
『あ、それ僕も食べてみたい!』
しょうがない、ウルスさんには少し待っててもらおう。
「じゃあ俺が買ってきますんで、ちょっと待っててください」
「はい!お願いします!」
この人凄い目がキラキラしてるよ。
少し離れた人目につかないところでエレンを出し、ソフトクリームを三本貰って(一本エレンに持って貰った)、ウルスさんのところへ行く。
「・・・誘拐ですか?」
物凄い誤解をされてしまった。まぁ、当然といえば当然の結果だけど。
「私はソフトクリームをお願いしたのですが、幼女が付いてくるサービスなんて聞いてませんよ?」
「サービスでもないです!これは俺の武器です!」
「武器?あなた子供を武器にするんですか!?見下げ果てました!あなたはなんと恐ろしい人なんだ!」
「だから違いますって!いいから話を聞いてください!ほら、エレンも何か言って」
「お兄さん、助けて?」
「誤解を招く発言をするなー!!!」
その後、俺はウルスさんの誤解を解くのに三十分を必要としたのはここだけの話。
「ソフトクリームはおいしかったですね。また食べたいものです」
「はぁ、満足していただけたのなら良かったです」
「ええ、しかし溶けそうになって取り乱してしまったのはお恥ずかしい」
説教の途中でソフトクリームが溶けてしまいそうになったとき慌てるウルスさんは面白かった。
「君は本当に面白い」
「見てないで助けてくれよ・・・」
「人になる剣だってなかなかに興味深いですけどね」
「僕から見れば人間の方が興味深いね」
そんなとき、放送が流れた。
「そろそろ出番ですね」
「ああ」
「僕は君の中に入っておくよ」
「剣が人に入っていく姿がこんなにシュールなものだったとは・・・」
「俺はもう慣れた」
人前じゃやらんけどな。
そうして、俺達は闘技場の準備室を出て、舞台へと向かうのだった。
◆
さて、
「もしかしなくとも、今俺達、ピンチなんじゃないか?」
確かに、複数メンバーでのエントリーはありだった。
だから俺達も二人で出てるけど、
「十人以上の団体はさすがに卑怯じゃないか?」
なんか常連さんみたいで、ちらほら応援の声が聞こえるし、みんな強そう。
「ウルス!いっきま~す!」
その掛け声はアカン!今の子はそのネタ知ってるのかな?
ウルスさんが駆け出す。
ダメだ!その数に素手で挑むのは危険だ!
「波衝!重複型!」
ウルスさんが突き出した拳から、白いような半透明のような波紋状の何かが出た。
すごい。てか衝撃波って見えるんだ。
今の攻撃で前列にいた奴らは全員気絶している。
強すぎでしょ。あんた一人で十分だわ。俺いらないじゃん。なにが「一人だと不安」だよ。
俺はこっちに流れ弾が来ないか不安だよ。
「私の本気はまだまだこれからですよ?」
怖ェェェェェ!笑顔で言っている部分が特に。
あと、向こうに気絶している人たちがいると怖さレベルUPだ。
「本当に俺いらないじゃん」
『楽できていいじゃないか』
う~ん。そうなんだけどね?
なんかこう・・・気分的な問題だよ。
『君は怪我しない程度に動いてればいいんじゃない?』
う~ん。そうするか。邪魔になりそうだし。
俺はウルスさんが一人で団体様をボコボコにしてるのを見ながら、かなり稼がせてもらった。ありがとうございます。
それからさらに十戦ほど戦って(もらって)二人で分けても家一つ買えるだけのお金が集まった。
闘技場って儲かってんだな。こんなに勝者に払える資金があるんだから。
「そろそろ終わりにしましょうか」
「そうですね」
しかし、観客たちからの強い要望で、最後に一戦だけすることになったのだが・・・
「お前らが新人か?」
「私たちは今日しか出ませんよ?」
「フン。こんな新人にやられるなんて、ここも落ちたな」
あ、俺いないことにされてる。
ま、実際戦ってるのはウルスさんだけで、俺はその辺ちょろちょろしてるだけだし。
今回も瞬殺だろうと思っていたのだが、今回は違った。
「参ります!」
「甘い!」
ウルスさんの拳を左手でがっちり止め、脇腹を蹴り飛ばす。
二回ほど地面を転がり、立ち上がったかと思うと、一瞬で間合いを詰められていた。
闘技場に大きな煙と風が巻き上がる。
二人が速すぎて闘技場内で風が巻き起こり、煙を作りあげているんだ。
『この二人、速い!僕も目で追うのが精一杯だ』
嘘だろ、俺はほとんど見えてないぞ?
煙が落ち着いていき、二人の姿が見える。
相手の蹴りを両手で押さえ、二人が静止する。
「くっ、なかなかやりますね」
「お前もなかなかできるな」
少しの会話を挟みながら、それでも戦いは続く。
相手の拳をあえてくらい、左フックを三発入れる。
相手も動じず、すぐに足払いを掛ける。
互いに技を決めながら、それを気にしてないように技を繰り出している。
実力は多分互角。けど、ウルスさんには俺がいる。
俺は駆け出し剣を抜く。そして、相手に切りかかろうとして、
「邪魔です!」
え~。
怒鳴られた。しかも味方に。
雑魚がでしゃばっても邪魔なだけなのだろうか。
俺も同じ状況ならそうしただろうけど。
邪魔とかじゃなくて、『俺の獲物だ。とるんじゃねぇ』ってな。
二人とも笑顔で戦っている。まるで、ライバルと実力を競いあってるかのような感じ。
「あなたには敬意を払い、私の奥の手を使わせていただきます」
「おう、かかってこい。お前の奥の手なんて、俺が一蹴してやるぜ」
ウルスさんの奥の手?見られると恥ずかしい。って言ってたやつか?
ウルスさんの腕が空を切る。するとそこには一振りの・・・傘?
ウルスさん?この闘技場には屋根がついてるので傘はいりませんよ?
「この武器は物凄く便利なんですよね。容姿が容姿なのであまり使いたくないのですが」
確かに、傘を真剣に振っている人とかあんまりいないだろうね。この世界に傘の存在はないし。
しかし、ウルスさんの持っている傘は俺の知っている傘とは少し違う部分があった。
傘の先端に、棘みたいなものがついていた。
「この武器が便利だと言ったのは、一つで三つの使い方が可能だからです」
振れば鈍器、刺せば槍、開けば盾か。
『あれは興味があるね』
ならあとで見せてもらえ。今はこの戦いを見たい。
『そうだね。実践は大事だけど、研究も大事だからね』
傘を振り下ろす。ひらりと躱されるが、すぐに横に薙ぎ払う。その後に突きを入れ、また横に払う。
今度は相手が拳を打つ。蹴りを傘で防がれるが、逆の足で蹴る。
突きが入り、それを腕と脇腹で止め、固定すると頭突きをかました。
互いが互いに一歩も引かない。一進一退の手に汗握る攻防。
「テメェの力はそんなもんじゃねぇだろ!もっと本気でぶつかってこい!」
「それならあなたも本気になったらどうですか?」
これで本気じゃないのかよ!
『本気と全力は違うものさ。二人は全力で戦っているけれど、この状況を楽しんでいる』
確かに、楽しそうな顔してるな。このまま時間が進まなければいいのにって思う事、あるだろ?
『でも、相手は白黒はっきり付けたいみたいだね。この戦いは次で決まるよ』
二人の本気の一撃。それが重なった時、一体どうなるのか、予想もつかなかった。
「牙牢!」
「刺突!略式連携!」
相手から狼の様な半透明の衝撃が飛ぶ。
それを突き、真ん中から裂く。
突きは相手を貫くことはなく、相手の前で止まった。寸止めだ。
「見事だ」
「あなたはかなりの強敵でした。またいつか、手合わせ願いたいものです」
「ああ、俺もだ。その時はまた、全力で」
お互いが握手して試合は終わった。
どちらも倒れていないが決着は、付いただろ?
◆
「私はこんなにいりませんよ。タクさんが貰ってさい」
「いや、俺は何もしてないですし、こんなに賞金はいりませんよ」
俺が総額の七割をとるのはおかしいだろ?本当だったら貰っちゃいけないものだ。
「う~ん。では、これは私が一緒に出てもらったタクさんへの報酬、というのでどうでしょう?」
「しかし、これだけの額を貰うのは・・・」
「ではそのお金で、」
何をすればいいのだろうか?凄いニヤニヤしてるけど、なんだろう?
「ソフトクリームをたくさん買ってください」
ソフトクリームはウルスさんにかなり気に入られたようだ。
俺はソフトクリームをたくさん買ってあげたが、それでも貰ったお金の1%どころか0.001%も減らなかった。
うん。稼ぎ過ぎた。
『お金はあって困るものじゃないだろう。さ、早くそのお金で高級砥石を、』
買わん。もっと計画的に使わなければ。例えば、食い物とか食い物とか食い物とか。
『君は食べることにしか興味がないのかい?』
失敬な。しっかり味わいますよ。
『うん。そうだね・・・』
なんだか声は疲れていた。
「ウルスさん。ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。私は引き際がわからないので、下手したらずっと闘技場にいたかもしれませんからね」
「そうでしたか」
「もう出発しますか」
「いえ、まだこの町ですることがあるので」
「そうですか。縁があったら、また会いましょう」
「ええ」
こうして俺とエレンは闘技場を後にした。
「ウルスさん。いい人だったな」
『君は武器や運命だけでなく、人にも恵まれている。そのことを肝に命じておくんだね』
ああ、そうだ。今まで会ってきた人たちは皆いい人ばかりだった。
俺は本当に恵まれている。これも神様の加護だったりしてな。
『まったく。君はいつになったら思い出すんだい?』
え、何を?
『集合時間を設定したのは君だろうに』
まるで『やれやれ』とでも言うような声。
集合時間?なんだそれ?
俺は近くにある時計を見た。そして、気づいた。
ああ、俺の言った時間から四時間も過ぎてるや。俺、死んだな。
自分から言っといて忘れるとか、俺はどれだけ非常識な奴なんだよ。
ああ、そうだ。外国だと一時間や二時間の遅刻は笑って済まされてしまうことが多いらしいぞ。
なんでも電車が遅れたりするのが当たり前だからとか。だから日本に来ると外国人は驚くらしい。
電車が遅れずに来る。または遅れても二、三分、だと・・・?
みたいな。
皆は気を付けようね。
俺は言い訳を考えながら集合場所に向かい、町の往来で正座させられ、説教を受けた。
地面に直付けだから余計に痛い。せめて室内とかでしてほしかった。
しかし、俺(ウルスさん)が稼いできた金額を見ると、少しはまともな扱いになった。
それでも説教は続いたけどね。それなりの宿が取れて皆満足だったようです。
まぁ、クズを見るような目で見られなくなったので、良しとしよう。
あれ?最初の目的ってなんだったけ?
まぁ、いいか。
いつも通り、俺は考えもせず、そのまま眠りに就いた。
あの闘技場で目立ってしまったことが、あの出会いが、全ての分岐点だったという事に俺はまだ気付いていなかったんだ。
そして歯車は少しずつ狂い出す。今まで順調だった日々を壊すように。
「準備の方は?」
「抜かりなく。明日には起動します」
「そうか。そのまま監視を続けろ」
残り時間・・・二十四時間
動き始めた針は、止まらない。
はい、改めましてこんにちわ。河異零次です。
今回を投稿して気が付いたこと。それは
・・・俺、投稿ペース上がってね?
一ヶ月に一本とはなんだったのか。
まぁ、授業中に書いてるのが理由の一つなんですがね。
今回のテストは散々な結果になると思う・・・。
そんな後のことはその時の俺に任せるとして、最近投稿ペースが上がってはいるけれど、いつまた遅くなるかわからないので、そこはご理解のほどよろしくお願いします。
さあ、今回のトークはこの二人です!
マ「はい、皆さんゆうばる~。マドカだよ~」
ア「ゆうばる~。アリシャです」
マ「今回はマとアで見にくいね」
ア「ええ。作者自身もわからなくなってるみたいですね」
マ「作者くらいは口調でわかってよ・・・」
ア「さて、今回は私たちの出番がありませんでしたね」
マ「うん。そうだね。今回はタカ君のバトルシーンが多くなる予定だったけど、少し変更があったみたいだね」
ア「ウルスさんがあまりにも強すぎた結果ですね」
マ「今回は最後に凄い怪しい雰囲気の会話があったけど、次回に明かされるのかな?」
ア「最後の、残り時間っていうのも気になりますね」
マ「残り時間だからね。今回の話の・・・おっと、作者からストップがかかっちゃった。この話は次回か、その次に明かされると思うよ」
ア「次回からやっと本題に入るんですね」
マ「当初の予定から随分と変わったらしいけど、それなりに話に関係の出ないようにしたのに苦労したとか・・・」
ア「次回が気になりますね」
マ「次回もすぐに出せると思うよ。・・・作者の成績と引き換えに」
ア「それでは次回も」
マ「お楽しみに!」