第三話:別れ、それは人を成長させるもの
こんにちは、河異です。
今回はシリアスな回になっていると思います。
シリアスは苦手ですので、今回は少し短くなっていますが気にしない方向で。
本編です。どうぞ
早朝。それは涼しい風が吹き、火照った体を冷まし、集中を高める最適な時間。
「ふっ!はっ!」
がむしゃらに剣を振っている、訳ではない。一応元の世界では剣道は授業の一環として行われていたのだから。しかし、それを覚えているか否かは別の話な訳で・・・
「これであってんのかねぇ」
実際にそれが正しい振り方なのかわからない。
一応二刀流の練習として木刀を左手に、村で貰った剣を右手に振っているが、二刀流なんて習ったことないのでアニメなんかの見よう見まねである。
ただでさえ重いのに片手で持つとかバカじゃねーの?てかなんで白髪の侍は通販の木刀で切れるんだよ。
ただ、今は練習あるのみである。適度に休憩を入れ、また剣を握る。
魔法の練習も程々に、剣術の練習をしているが、実戦はまだまだ使えた物ではない。
しかし、今はとりあえず筋力をつけるところから始める。
時折腹筋や背筋をバランスよくし、剣の重みに慣れるために剣を振る。
そして朝飯の用意ができた声を聞き、ケイナの家に戻ってご飯を食べる。
昼は村の子と遊んで、剣の腕を少しずつ磨き、狩りの仕方を教えてもらったりした。
そんなことをやって二週間ほどが経っていた。
誰に教わったでもない剣術も、それなりに型にはまってきて、そろそろ実戦でも使えるレベルになってきた。
魔法だって少しずつ貯蔵量も増え、キャンプファイヤーくらいの火なら起こせる程度になった。
この世界にも随分と慣れた。村の皆もよくしてくれるし子供たちは皆いい子だ。
「お兄ちゃん勇者なんでしょ!スゲー!」
なんて感じで、悪い気はしない。
しかし、あらかた準備ができれば別れも近づく。
「ねぇ」
「ん?」
マドカが聞いてくる。
「もうそろそろ、この村にいるのは」
「わかってる。でも、もう少し」
俺達はまだ子供なんだ。結局はやりたいことしかやってきてないんだ。
先延ばしすればするほど出にくくなるなんてわかってたのに。
条件さえ見ればこの村にもう用はない。クエストはサブまで終わらせたんだ。
それでも、当事者になればそうもいかない。
「タカさん。まだ出発されないのですか?」
「ああ、悪いけどまだいさせてもらうよ」
ケイナが心配そうにこっちを見ている。
「そろそろ出発された方が・・・」
「俺達は邪魔かい?」
ああ、俺は卑怯だ。こんなことを言えばケイナは絶対に何も言えなくなる。俺はわかっていてそれを言っているんだ。
「っ!そんなことはっ!」
「もう少し、考える時間をくれ」
「・・・わかりました」
ケイナは何も言えなくなる。
「では、ご飯になったらお呼びしますね」
「ああ」
そう言ってケイナは戻っていった。
「・・・クソッ」
「タカ君・・・」
もう行かなきゃいけない。でも、行きたくない。
異世界から来て、英雄なんて呼ばれて、勇者なんて呼ばれたって、この世界に慣れたって、結局はただの高校生なんだ。
「少し、外に出てくる」
それだけ言ってドアに手をかける。
「うん、わかった」
◆
夜風が気持ち良い。朝とは違う冷え込むような風だ。考え事をするにはちょうどいい。
「簡単には割り切れないよなぁ」
ブン!ブン!
ん?何の音だ?
俺は音のした茂みに向かう。
そこにいたのは剣を振っている男の姿だった。
身長は推定百八十オーバー。デカいがムキムキには見えない。普通の背がデカい奴に見えたが振っている剣が普通じゃなかった。
振っていた剣は、二メートルを超える大剣だった。
「スゲェ・・・」
「・・・こんなもんか」
そう言うと大剣が消えた。今のは・・・魔法か?
そう思っている矢先、黒い何かが空から男の肩に降りた。あれは・・・カラスか?
しかし、カラスにしてはおかしい。何故ならカラスの頭が三つあるからだ。
「あれじゃまるで八咫烏だ」
「よくわかったな」
ばれた!?いつから!?いや、初めからか!?もしかしてカラスが見ていたのか!
「ちなみにシーが気付いたんじゃない」
「シーってのはそのカラス(?)のことか?」
「そうだ。俺の使い魔でな、なかなかに可愛いんだぜ」
「そうか」
なんだこの人は。
「そう警戒するなよ。俺は別に敵じゃないぜ?」
「初対面で、しかもあんな大剣振れるような人を警戒するなっていう方が難しいぜ」
「違いねぇ」
そう言って男は笑った。
「あんたは誰だ?見たところ村の人じゃなさそうだが」
「俺はアギト。旅人だ。ここにはたまたま立ち寄っただけさ。お前は?」
「俺はタカだ。勇者やってる」
「勇者にしては随分とひょろっちいな」
「いきなりジョブチェンジさせられたんで」
「ほ~」
アギトは物珍しそうに俺をジロジロと見てくる。
「そこのカラスはなんだ?ただのカラスじゃないよな」
八咫烏って言ってるし。
「コイツは俺の使い魔だ。八咫烏のシーフだ。俺はシーって呼んでる」
シーフと呼ばれたカラスが煙に包まれる。そしてそこにいたのは、物凄い美人だった。
可愛いんじゃなくて、大人な感じで、綺麗といった方が合っていると思う。
「初めましてシーフです。シーって呼んでくださいね」
「ど、どうも、タカです。好きです、付き合ってください」
「おい、何口説いてんだ」
はっ、しまった。つい反射的に。
「いえ、お気持ちは嬉しいのですが、私にはアギトがいますので、その・・・」
「ばか、何言ってんだ」
「だっ、だって~」
おおふ。こんな恥ずかしい現場に突入することになるとは。てか、大柄な男が照れている姿はとてもシュールだった。
「ゴホン。で、勇者さんは一人でなにコソコソしてたんだ?」
「いや、凄い剣さばきだと思ってたんだ」
俺の試合としての剣術じゃ比べものにならない。それは本当の実践を予想した剣術だった。
「俺に・・・」
「ん?どうした?」
「俺に剣を教えてください!」
俺の申し出に面食らったのか、アギトは少し思考を停止させたようだった。シーも驚いたようだった。
「それは俺に仲間になれと?」
ん?そうか。旅人であるアギトと行動を共にするなら、仲間という関係になる。
「他に仲間はいないのか?」
「もう一人、魔法使いがいる」
マドカに聞かないといけなかったかな?仲間が増えることに抵抗は無いと思うけど。
「そうだな。二人くらいなら問題はないだろ」
「では、そろそろ名乗ってもよろしいのでは?」
「え?さっき名乗ってたよね?」
「何言ってんだ、お前。基本偽名なんて当たり前だろ?」
「ぎ、偽名・・・」
完全に騙されてた。人は簡単に信用しちゃだめだね。
「じゃ、改めて、俺はイソラ」
「私はミース。ミーって呼んでください」
「偽名を使う奴、俺の世界にもいたなぁ」
警察に名前を聞かれた時とか、署名するときとか、面倒事に絡まれた時とか。
「そういえばタカさん?」
「ん?なんですかミーさん」
「さっき何か思いつめているように見えましたけど、何か悩み事ですか?」
そんなに悩んでるように見えたか。
「それは歩きながら話しましょう」
・・・
「・・・・・・ってな感じで」
「俺もあったなぁ。そんな時期」
イソラが言う。
「そうなのか?」
「ああ。駆け出しの時に立ち寄った村でな。貧しいところだったけど、いいところだったよ」
そう言ってイソラは笑った。
「懐かしいな。お前みたいに悩んでたら、「こんなところに長居してないで、さっさと修行に出んかい!」って怒られちまったよ」
「あったねぇ。そんなこと」
そしてイソラは続けた。
「別れは辛い事じゃない。そんなに悩んでんなら、「また明日」みたいに、「また来年」っていってやりゃいい。また来ればいい。なにも死ぬわけじゃない。」
「別れはつらい事じゃない、か」
「これもその時言われた言葉だ。『今は大事な時期だ。立ち止まるな。貫き通せ。己の意志を』」
「そうか」
「そうさ。悩むことはない。今は整理をつける時じゃない。清算は最後にしておけ。前払いじゃ楽しめないぜ」
確かに値段が気になって楽しくない経験をすることはあるな。
◆
「ただいま~」
「じゃまするぜ~」
「おじゃまします」
「おかえり~、ってなんか増えてる!」
「初めまして」
「は、初めまして。・・・じゃなくて、タカ君、しっかり説明してもらうよ」
「は、はい・・・」
・・・少年説明中・・・
「・・・てなことがありまして」
「今に至ると」
「そういうことです」
「ふぅん。じゃあ明日にはこの村を出るの?」
「うん。また迷いが出ないうちに出ようと思う」
「もう、行ってしまうのですか・・・」
「うぉ!ケイナ。いたのか」
「ここは私の家ですからね」
そうだった。
「もう少し、もう少しと思っていたら、こんなに日が経ってしまいましたね」
「ケイナ・・・」
「いいんですよ。あなたは勇者でしょう?なら、早く世界を救ってください」
「ああ、わかった」
「じゃあ、明日には出発するか」
「最後は豪華な夕食にしましょうか。あなた方もどうぞ」
ケイナはイソラとミーさんにも勧める。ええ子や。
「じゃあ、」
「ご馳走になります」
この村の最後の食事はとても賑やかで、豪華なものとなった。
改めましてこんにちは。河異零次です。
私は今日から学校が始まりました。
学校が始まったという事は、更新ペースが今までより落ちるという事。
何故学校が始まってしまったんだ。おかげでこっちは宿題を終わらせる羽目になっただろうが!
すいません。本編でふざけられなかった分、こっちでふざけております。
しかし話は戻して、今回はおふざけが少なかったと反省しております。
タ「うん。まぁ、こういうこともあるよな、っていうケースの一つだと思ってもらえれば幸いのタカです」
ケ「今回のトークがたぶん初めで最後のケイナです」
作「今回はキャラが増えたので、厳正なるくじ引きで決めさせてもらいました」
タ「なるほど、いつまでも俺とマドカだけじゃダメだと気が付いたのか」
作「ダメじゃないけど、やっぱりマンネリ化は否めないと思ってな」
ケ「今回は少しシリアスな回でしたね」
タ「何だろう、本当にくじで決めたのか?それにしてはできすぎだろう?」
作「俺も友人にくじを引かせたときはビックリだった。ケイナは幸運の持ち主だな」
ケ「そんな///」
タ「しかし、学校が始まってしまったか・・・」
作「ああ、そうなんだ・・・」
タ「俺にもわかるぜ、その気持ち」
ケ「そんなに沈むことなんですか?」
作「ああ、とてつもなく鬱になる」
タ「随分と早い五月病だな」
作「それなら俺は年中五月病だよ」
ケ「そういえばイソラさんとミースさんは始めから出す予定だったんですよね?どうして前回予定が変わったと言ったんですか?」
作「イソラは決まっていたが、ミースは決まっていなかったんだ」
タ「そうなのか?」
作「カラスの使い魔であり、イソラの相棒としか考えてなかった」
タ「それがまさか擬人化するとは・・・」
作「その場のノリとは恐ろしいものだ」
ケ「更新ペースが落ちるのは鬱になるからなんですか?」
作「それもあるけど、俺の行動回数が学校で消費されることが原因の七割を占めている」
ケ「なんか学園もののゲームみたいですね」
タ「ケイナ、コイツの話をまともに受け取っちゃいけない」
作「もうちょっと村で伸ばそうと思ったんだが、これだとイソラが出てくるまでかなり話数を取る気がしてな、無理やり村から出したんだ」
タ「名残惜しいぜ」
ケ「またいつでもいらしてください」
作「次回はタカのサブウエポンでも出そうかと思っているんだ」
タ「マジでか」
ケ「まだ強くなるんですね」
作「一応設定では魔物しか倒せない雑魚ってなってるけどな」
タ「そうなの!?」
作「では、次回もお楽しみに~」
タ「おおい!ちょっと話聞かせろや」
ケ「最初から最後まで空気だったような・・・」