第十五話:生きる意味、死ぬ意味
朝に吐く息が白くなりましたね。っていう前振りを一か月以上前に思いついた河異零次です。
前書きって何書けばいいんですかね?
分かんなくなったんで本編です。どうぞ
アリシャの話から三日が経った頃。
結局話は解決せず、神を人体に宿す技術は慎重に経過を見つつ続行。
新たに別の方策も考えていく結果になり、俺は大国からの襲撃に備え力を付けよ。とのことだった。
さらに現状で俺の腕は意識をしないと無意識に燃やしてしまうし、燃やさないためには腕を消さないといけない。
最近は腕を出さなくても動かせないように魔法で物を持つようにしているが、いかんせん不便だ。
だって安定しないんだもん。ユラユラするもん。たまに顔面に当たるし。
しかし、慣れてくると意外と普通に生活できるようになってくる。
しかし問題があったのはここから。
「マドカ、お前なんかオーラ纏ってね?」
「え?そんなの知らないよ?え、何タカ君何か見えてるの?」
「普段は何も見えないんだけど、目をつぶったときに何かオーラが見えるよ」
「え?本当?何それ」
「イソラもミーさんも見えるぞ?」
「マジか。どんな感じなんだ?」
「なんかこう、紫色のがユラユラと」
と、何か変なものが見えるようになってしまった。
「今日も今日とて変わりの無い日常が流れてくだけか・・・・・・」
「何かあるよりは良いだろ?」
イソラが苦笑しながら言う。
「退屈は人を殺すって本当なんだな」
「まだ引きずってるのか?」
「なぁイソラ。人はいつ死ぬんだろうな」
「そんなの人それぞれだろ。そいつがいなくなったとき。そいつのことを忘れたとき。そいつのことを死んだと思えるようになったとき。ま、いろいろあるな」
「そうか・・・・・・」
「自分の中でケリをつけな。それは俺たちにはどうしようもできない」
「ああ」
「お前のいた世界がどうかは知らないが、この世界じゃ人が死ぬのなんて意外とよくあることだ。本当にケイナのいた村で言われたように、割り切らないといつか潰れるぞ。今の問題は今のうちに解消しておくべきだぜ」
「そうだな。少し一人にしてくれるか?エレンのこともあるし」
「そうしたほうがいい」
「ありがとな」
「気にすんな。死に慣れられても困る。なにせ両腕吹っ飛んでんだ。お前も死んでもおかしくなかったんだぞ」
「分かってる。エレンのおかげだ」
「まさか伝説の武器がお前に吸収されるとはな。他にも伝説の武器はいくつかあるが・・・・・・。まぁその話はいいか」
「じゃあちょっと離れるわ」
「しっかり魔道具は持っとけよ。アレがないと連絡取れないから」
「ああ、しばらくしたら戻る」
そういって俺は少し離れて開けた平地よりも、木の生い茂っている森に向かった。
だって自然の中のほうが考え事するには良さそうじゃん?
「考え事をするにしてもなぁ・・・」
森の中を進むこと数分。何も無くボーっとしているだけである。
「考えがまとまらない・・・・・・」
「どうしたんだい?」
「いえ、ちょっと」
「ふーん」
ん?
「え?ちょっ、どちらさま?」
「ん、ボク?ボクはねぇ、名前が無いんだ。ああ大丈夫気にしないで。忘れてしまっただけだから」
「記憶が無いのか?」
「そうじゃないけど・・・・・・。まぁあまり名乗ることが無かったからね」
自分の名前って人に名乗らなくても忘れないと思うんだけど。
「名前なんてどうだっていいじゃないか。名前なんて個人を確立する要素の一つでしかない。ここにいるのはボクと君だけなんだから」
「そうか?それもそうか」
「そうだよ、気にしない気にしない」
まぁいいか。別に悪い奴じゃなさそうだし。
「で?君は何しに来たの?」
「ちょっと考え事をしにな・・・・・・」
「へぇ、どんな?」
「人の命についてな」
「なにかあったの?」
「目の前で助けられなかった子がいて」
俺は一度死んだ。けど、この世界に来た。勇者として。なのにこのざま。何一つ助けてないし救ってない。迷惑しかかけてない。
「俺、勇者なんだよな・・・・・・」
「何か勘違いしてないかい?」
「どういうことだ?」
さっきまでニコニコしていた顔が一瞬で真面目な顔になっていてちょっと焦った。
「勇者っていうのは確かにみんなのヒーローであるべきなんだろう。全てをまるっと解決できるべきなんだろう。みんなのために自らを犠牲にするものなんだろう。でもね、そんなのは本人が救われてないんだ」
「本人が・・・・・・?」
「そもそも君だって酔狂に勇者を名乗ってる訳ではないだろう?信念があって、それに準じて動く。己が善と決めたものを守り、悪と定めたものを倒す」
その言葉を受けて、俺は思う。
「それは一方からの見方に過ぎないよ。そもそも正義があったとしても、悪なんて、それこそ神様なんてものから見たときには存在しないんだろう」
「そうかい?一つの正義の反対はまた別の正義であると?」
「違うよ。よくよく考えれば正義も悪も存在しない」
「?」
俺は言おう。俺は語ろう。俺の考えを。俺の答えを。
「所詮は全て己の欲である。欲無き者は居らず、居たとしてもそれはもう人ではない。欲を捨てたとき、人は己の存在を見失う。己の在り方を損なうことになる」
そう思うから決意しよう。証明しよう。表明しよう。これからの俺の在り方を。俺の欲を。
「俺は、やっぱり勇者を名乗れないよ・・・・・・。俺は、俺自身のために戦う。人を傷つけないという、俺のわがままのために」
それを聞いて彼はニコリと微笑み言う。
「君は勇者というものを少し取り違えているねぇ」
「どういうことだ?」
「勇者とは勇気のある者のこと。誰しもが成し遂げぬものを成しえようとする者。あるいは成しえようと努力する者のことだ。決して人の為でなくとも、それが誰かを傷つけることであったとしても、勇気のあり信念があればそれは勇者なんじゃないかな」
「その勇気は蛮勇では?」
「それでも勇者だ」
「・・・・・・」
「君が否定をするならばボクは肯定しよう。否定することを否定しよう。物事には表と裏があるように、光と影があるように、君の反対を、ボクは歩もう」
「・・・・・・」
「君が間違えたならボクが正そう。ボクが間違えたときには君が正すだろう。君の示した答えを、ボクはボクなりに考えるとしよう」
「・・・・・・」
「それが神の役目だからね」
「は!?」
今なんて言ったコイツ!?
「お、お前は・・・・・・」
「君があまりにも落ち込んでいるんで心配して見にきたんだよ」
「神様は随分と暇なんだな・・・・・・」
「まっさか~。これでもかなり仕事を切り詰めてきたのに、そんなことを言われるのは心外だ」
存外心配されてるのかもしれない。というかされていた。
「悩める子羊を導くのは神の役目だけれど、その先を創っていくのは君たちの役目だよ。あっ、そうそう」
「なんだよ・・・・・・」
「初めて会った時に言った確立三人に一人が勇者ってのは嘘だから」
「はぁ!?」
「そんなにほいほい生き返らせてたまるか。てか、そもそも君は死んでないし」
「いや、だって俺はあの日・・・・・・」
「ボクは死にかけてた君を回収しただけ。正確には死んでないよ」
「そうだったのか・・・・・・」
「騙して悪かった。お詫びといってはなんだが、君にチャンスをあげよう」
「チャンス?」
「今の君には願ってもないチャンスだ」
「なんのチャンスだよ」
「過去に戻るチャンスさ」
「過去に・・・・・・戻る・・・・・・」
「過去に戻って全てを変えるんだ。ボクはおそらく騙したお詫びに与えたものだと理解できるはずだ。介入することはない」
過去に戻れば、何かが変わるのだろうか。俺は、やり直せるのだろうか。
「違うな。過去に戻っても、全てが思い通りになんてならない」
「当然だ。君の思い通りに世界が動くわけがないだろう?当然、僕が思うようにも」
「きっとアリシャを助けられても、俺の中に残るアリシャは死んでいる。俺が乗り越えなきゃいけない壁が、越えられない壁になる」
「このチャンスを捨てるのもまた一つの選択だ。さっきも言った通り、この先を創っていくのは君たちなんだから」
チャンスを捨てる。機会を失う。失うことで得る。
何かを得るために何かを失うのならば、今回の場合は何かを失うために何かを得る。
プラスとマイナス。バランスをとる。中間をとる。
なのに答えはゼロ。それが世界の真理である。
上りがあれば下りがあるように、並行もあるのだと。
山があり、谷があるならば、平坦な道もあるだろうと。
「俺はアリシャを助けられなかった」
救えなかった。きっと別の世界があるのなら、そこの世界の俺は救うことができたかもしれない。
はたまた、過去に戻って救ったかもしれない。
でも俺は救わない。死者は弔わないといけない。
いつまでも縋り付いていちゃいけない。
「俺は強くなるよ。肉体的な意味じゃなく、精神的な意味で」
強く、強く、綻ばぬように。
「エレンに貰ったこの力を、無駄にしないためにも」
正確には死んだわけじゃないけれど、むしろより深くで、深層で結びついたわけだけれども。
それでも言葉を交わせなくなったのは、悲しむべきものであるに違いはないのだから。
「最後に一つアドバイスをあげるよ」
「神からのアドバイスとか、お告げかよ・・・・・・」
ありがたいけどさ。
「ガキの倫理観は捨てて残酷な大人になれ」
◆
「あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
まただ!また殺したんだ!
「俺が!俺が!この手で!この力で!」
腕を思いっきり木にぶつける。メキッ、と音がしたようにも聞こえたが関係ない。
「また笑顔だ!どいつもこいつも笑顔で死にやがる!なぜだ!?なぜ笑う!?どうして俺を責めてくれないんだ!?」
責められた方がましだ。こんなにも苦しいのなら。お前のせいだと、怨まれた方がよっぽどましだ。
「どうして誰も、俺を責めないんだ・・・・・・」
「それはあなたが一番分かっているんじゃないの?」
後ろから声を掛けられる。
「ミーか。俺だって解ってる、解ってるつもりだ」
「でも理解できない?」
「・・・・・・いや、これは俺の気持ちの持ちようの問題だ」
どうして理不尽に死ぬことを受け入れられるのだろうか。
それを最近になって解るようになってきた。タカが弟子になってからだな。
まだまだ俺よりも弱いけど、いつかはきっと俺を超える弟子。
俺だって同じ状況に置かれたら、多分だけれど、きっと、笑うのだろう。
『殺してくれるのがお前で良かった』と、もっと複雑で不可解で難解な気持ちが混ざり合いながら、それでもなお、笑うのだろう。
「結局、俺が弱いのが原因なんだ」
「あなたはあなたのできることをした。それは決して弱いことと直結することではないと思うわ」
「でも俺の力では及ばない。もっと強く、守りたいものを全部守る力を」
「イソラ。守りたいものをすべて守りきるなんて力は、人の手には余る力よ」
「そのときは人をやめるさ」
俺の覚悟の前にはそんなものどうでもよく見えるな。
「きっと辛い道になる」
「ああ」
「途中で投げ出したくなるかもしれない」
「かもな」
「それでも手に入れたいの?」
「ああ」
ミーは何かを考えて、一つ頷いた。
「一つだけ当てがあるわ」
「なんのだ」
「全てを守れるような力を手に入れる当てよ」
「どんなだ!?」
「私たち使い魔を従えるあなたは常時、微々たる量だけど魔力を消費する」
「まぁ戦闘とかになると物凄い減るけどな」
「そこ。使い魔がこの世界で魔法を使うには、契約者の魔力が必要になる。でも、もっと深く繋がれば使い魔は自分の魔力で魔法を使えるようになるの」
「なんでそれを初めに言わない」
「ちゃんとした条件があるからですよ」
「条件があるのか」
「一つは互いが信頼し合っていること、これはクリアです」
「そうだな」
「もう一つは『時と空間の狭間』で一週間過ごすこと」
「『時と空間の狭間』だと!?あそこに行くのか!」
「時の流れを感じない無限に広がる無の世界。そこにいるのは形を持たないモンスター」
「空腹も睡魔も無い代わりに、謎のモンスターが無数にいる世界・・・・・・か」
「そこで一週間。生き残れる自信はある?」
「ある、と言えば嘘になるが、生き残らなくちゃ強くなれない。なら俺が取るべき道は一つしかない」
初めから選択肢は一つしかなかったな。
「タカの修業メニューだけ残しておくか」
「また二人ね」
「すぐに四人に戻る」
俺は覚悟を決めた。殺すなら殺される覚悟がいる。
もう一つ必要なのは、殺す覚悟。
・・・・・・怖いな。でも、支えてくれる奴がいる。それだけで俺は進める。
◆
「あ、タカ君。遅かったね」
「ああ、ちょっとした考え事が、ものすごい考え事にジョブチェンジしてな。神様にも会ったぜ?」
「え、神様に?」
マドカは少し驚いているようであったが、しかし、彼がそういう人物であることを知っているかのような顔をして一つ頷いた。この場合は神様なのだが、まぁ言葉の綾だ。
「なんかわかってました、みたいな顔だな」
「そんな感じなんだろうなって想像できちゃったから。そういうことをする人だからね」
これも言葉の綾である。
「ふーん。想像できるのか」
「過去に戻る提案とか受けてそうな想像」
「的中しすぎ!女の勘っていうより見てたみたいな的中率!本当は見てたんじゃない?ねぇ?」
「見てないよ見てない。感じただけ」
「それはそれで怖い!」
顔に出るとか出やすいとか、そういう次元じゃなかった。
感じ取られたらどうにも対処ができないじゃないか。
感じ取ると言えば、
「そこに誰かいるな?」
「ん、どうして気づかれたかな。しっかりとステルスモードはオンにしてあったんだが」
「最近気配に敏感なもんでな」
気配というかオーラなんだけど。
「ふーん。それは俺の落ち度がなかった証明だな。相手が一枚上手だっただけだから俺は悪くないな。うん、報告には問題ない。だって俺悪くないし」
「そう簡単に逃がすわけないだろ」
「相手と自分の格の違いにも気づけないのか?」
「だからこそあんたは動けない」
プロだからこそ、素人と少しかじった素人の違いは分かるはず。確実に仕留めたいなら隙を伺ってくるはずだ。向こうの姿がオーラでしか視えない以上こっちは動けない。どんな速さで動くかわからないからな。
「ま、視えてるんだったら隠すだけ無駄か。本当に無駄に電力食うしな。電気代もバカにならねぇ」
姿が視えてきたが、なんかゴテゴテしてんな。あれで機敏に動くとか思えないわ。
「あんたよくそれで動けるな。普通はそんなゴテゴテしいのを着て動けるはずがない」
「あ?これはな、イギリスで作られたステルス迷彩服だよ。言ってもわかんねーだろうけどな。以外に関節部とか曲がりやすいし、見た目の割には軽いんだぜ?これ」
イギリス、だと・・・・・・。
「お、お前は、どこから来たんだ」
「日本だよ日本」
「日本?じゃあお前が来たのは異世界なのか?」
「お、日本を知ってるとは、お前も異世界を渡ってるな?科学で発展した俺らの国とは違って、魔術で発展したこの世界の資源は貴重なものが多い。その上魔術なんて錬成術まであるとなっちゃぁ、非枯渇資源とほぼ変わらん。日本はな、偶然発見できたこの世界の資源を狙ってる。当然他国にバレないように綿密にな。この世界の存在のことには各省庁にも極秘で一部の人間しか知らない」
「どうやってこの世界に来たんだ。日本はおろか、その世界には異世界に行く技術はないはずだ」
「テレポート技術と偶然の賜物さ」
「日本はテレポートの研究までしてたのか」
「いろんなところでしてるぜ?テレポートはな、物体を移動させることを主に言う。物体を移動させるのには当然動力がいる。ま、動力なしで動かせるのが目指すところなんだがな、日本の技術は凄いぞ?その動力さえあればテレポートをすることが可能になった」
「その動力ってなんだ?」
「そのままさ。動く力だよ。人間が一歩踏み出すエネルギーをそのまま使うのさ」
「どうやってテレポートするんだ?」
「それは機密事項なんだが・・・・・・言ってもわかんねーだろうし、まぁいいか。簡単な話よ。今いる地点とテレポート先の地点を座標軸で表して、そこにある物体の位置情報を置き換えるんだ。座標には二進法と十進法の二通りで割り出したパターンを照らし合わせて行う。テレポートには向こうの世界に存在するとされている次元の世界、まぁ十一次元を介してその一歩先の座標を今の地点と繋げれば、ほい!アッと言う間にテレポートが完了よ。な、簡単だろ」
「その技術が異世界にどう関係するんだ」
「だから偶然の賜物なのさ。化学者が打ち込む数値を間違えてな、向こうの世界にない座標で転送しちまった。そんで、この世界に来たってわけよ。どうやら世界はある程度管理されてるみたいに与えられている数値の上限があるみたいだな」
まぁ地球であれなんであれ、大きさがある以上座標にも限界はあるだろうけれども。
「ああ、あともう一つ日本が誇る古来からの技術があるんだが、知ってるか?」
「なんだよ」
「降霊術だよ。ま、亡者の霊を器に入れるのは変わらないんだが、今回は死んだ『人』じゃなくて『神』なんだけどな」
降霊術自体は別に日本だけが誇るわけではないと思うが・・・・・・。
まぁ、物にまで神が宿るって発想の日本なら神の数はそれこそ数知れずってことか。
「てか、死んだ神ってなんだよ」
「死んだっていうか、忘れ去られたって感じだな。存在を知るものがいなくなったから、事実上生きていたとしても、存在していたとしても『死んだ』ことになるだろ?そういう神様を使った降霊術さ」
「まさか神を身に宿すっていう術式は」
「そう、俺たちの技術さ。全部をまるっきり教えたんじゃ上手いように使われちまうから、所々をそれっぽくして教えてごまかしてるけどな」
全部裏で手を引いてたのは日本かよ・・・・・・。
「基本的には友好的な交友を目的にしてるけどな。別に侵略したいわけでもない。いうなれば親日国を増やそうぜ、って感じだな」
「今後も大陸の連中とよろしくやっていくための後ろ盾を作っておきたいって感じか」
「そうそう、そんな感じ。この世界には魔法なんてもんがあるわけだが、紐解いちまえば一種の学問だ。そいつをさっさと解明して、応用する研究も進んじゃあいる」
「そんなことまで・・・・・・」
「魔法を使う感覚は俺らには与えられてないからな。一度使う感覚を外部から与えられれば自由に使えそうなんだが」
覚えがあるな。確か回復魔法のおかげで俺は魔法を使えるようになったが、要は足や手を動かす感覚を身につけるのと同じことだな。義手や義足なんかでも、事故で失った人と元から無かった人とでは慣れの速さが違うって聞いたことがある。
「どこまで研究は進んでるんだ」
「別に君たちに教える必要はないだろう?」
「そりゃそうか」
「邪魔になるなら戦うしかない。友好的なら利用しあうだけさ」
「今の段階じゃどうも言えないな」
「ま、今回は俺は帰らせてもらうよ。もともと君との出会いは想定外だった。厳密にいえば日本を知る異世界渡航者との出会い、かな」
「他にもいるのか?俺みたいに異世界から来ているのが」
「さぁ?俺は詳しくは知らん。が、少なくとも俺は会ったことはない。じゃあな」
そう言って男は背を向けた。
邪魔になるなら戦うしかない。友好的なら利用しあうだけ。
友好的なら利用できるのか?利用されるだけな気がするが・・・・・・。
「あ、そうそう」
男はニ、三歩歩いてからこちらを向きなおした。
「耳寄りな情報を教えてやるよ」
「これも利用しあう。の一環か?」
「そうさ。で、情報ってのは、降霊術はすでに何度か行われていて、この前NO.013が壊滅的な破損で回収されてたんだが、お前ら知ってるか?」
「no.013ってのはなんだ?」
「あー、確か名前は、『アリシャ』って言ったかな?この世界の人間らしいけど、身寄りのない孤児でな。暴走する副作用があるんだと。上司が治療に苦労するとかぼやいてたのを聞いたのさ。ちょうど近くで火事で半壊した町があったらしいし、なんか知らねえか?」
「それは人払いに使われたのさ。その、no.013の実験にな。生きてるのか?」
「知ってるのか?」
「知り合いさ。少しの間。ほんの少しの間だけだったが、仲間だった。死んだはずだった」
俺たちが殺したはずだった。
「ほぉ。ま、助かるんじゃねーの?大切な被検体だ。無下にはしないだろう」
「そうか。助かるよ」
「別に助けたわけじゃないんだけどな」
「あんたの名前は?」
「圭介だ。スケさんって呼んでいいぜ?」
「あんたの顔見えないんだが・・・・・・」
主にヘルメットのせいで。
「ああ、悪い悪い。で、お前の名前は?」
ヘルメットを外して顔を見せるスケさん。
「俺は藤野高明。タカでいい」
「オーケータカ。これからもよろしく。・・・・・・していけたらいいな」
そう言って今度こそ振り返る、かと思ったら消えた。
あれぇ?オーラ的なものも見えない。完全に消えた?
う~ん。たぶんテレポートしたんだろう。
「生きてたのか。アリシャ」
「良かった・・・・・・のかな?」
「良かったんだろ」
まだ付かなかった心の整理も、じっくり考えられるようになったことだし。
一応結論というか、今回のまとめは、
『一度下げられたものが上がってきたときの喜びは異常』
ってことだな。
アリシャが生きてて良かったよ。本当に。世界変えることろだったし。
しかし、まさか日本が絡んでるとはな。・・・・・・さすが日本と言わざるを得ない技術。
テレポートに降霊術。敵に回すには強大過ぎないか?
人体実験については苛立つところもある。
確かに技術の発展には必要な犠牲だけれども、納得はできないな。
「ガキの倫理観は捨てて残酷な大人になれ、か」
「もしかして神様から貰ったアドバイス?」
「そうそう。やっと意味が分かった気がする」
世の中の理不尽に慣れろってことだろうな。
「だからって、平気で人が死ぬのを受け入れるようには、ならないでね」
そう言ったマドカの顔は、なんだか少し悲しそうで、そして遠い何かを見ていた。
※この物語はフィクションです。実在する人物及び団体とは一切関係はございません。
はい、改めましてお久しぶりです。河異零次です。
一応ね、日本とか名前出しちゃったから、始めの奴は必要かなって。
さて、今回投稿は約一か月ぶり。本編の更新は約四か月ぶりという酷いありさま。
話が思いつかない。そのうえテストがある。艦〇れのイベントがある。
リアルでも疲れて書ける時間も無かった。っていうのが今回の言い訳です。
それと、今回のラジオトークはなしです。
今回の話は何せ四か月もの期間をかけたものですから、私自身、どういった経緯で書いているのかわからない部分とかもありまして、作者としてそれはどうなのかと思いつつ書き上げました。
本当に話がひっちゃかめっちゃかで申し訳ない限りです。
中高一貫校なのに何故かある高校入試試験。時々やってくる数学のテスト。
クラス編成のテストやらなんやら。
テスト多すぎぃ!
という訳で、次回もまた遅れそうな気がしますが、待っていていただけたら嬉しいです。
次回もお楽しみに!




