3 ナルちゃん
彼に淹れてもらったお茶を一口。ゆっくりと湯呑みをテーブルに戻したわたしは彼と目を合わせた。
「さっきの話だけど……もっと詳しく教えてくれます?」
小首をかしげ、口角は上げておく。両手は湯呑みを握りしめたわたしカワイイ!
おっと、ナルちゃんなわたしが出てきてしまった。ここは真剣な話し合いの場なのだ、ひっこんでおれ!いや、ナルちゃんに任せた方が話が合うのか?厨二ってナルシストだよね?
ちなみに、わたしの脳内と彼に対する口調がくいちがっているのは、ただ単に「年下の恋人」における敬語モエのためである。されるのもするのもモエである。敬ってないわけではないのであしからず。
「うん。実はね、俺は異世界に住んでた記憶があるんだ。
そこで俺は魔界の王子でね。といっても100人くらいいるうちの真ん中くらいの能力的にも平均くらいの目立たない存在だったんだけどさ……」
わたしの脳内がナルちゃんになっているにも関わらず、彼は話し出した。
それはもう、延々と。正直、今ナルちゃんのわたしにはあまり理解できなかった。すまぬ。
要約すると以下のようになる。とおもう。ごめん、自信ない……
1.前世は異世界で魔王の息子やってた
2.魔界の王子としては平凡
3.暇かつ忘れられるようなボッチだったので人間界に
4.冒険
5.勇者と魔王退治
オイオイ……後半端折りすぎだろう。これはわたしが延々と続く話に飽きて聞き流していたからではない。時計で確認すると3時間くらいかかったようだが、4と5は合わせても10分も話していないのではないだろうか。
つまり、ほぼ魔界とやらの平凡な日々の話であった。あとスペック。
魔界で王子やってたときが一番輝いていたのか、それとも冒険から魔王退治までにトラウマでももっていらっしゃるのか……個人的には後者を抉ってみたいが、いかがなものか。
そろそろ顔面の筋肉が痙攣を起こしそうなので、まとめに入ることにしよう。
そうしよう。