20 チョコ一粒
さてさて、トウサマの言い付け通り、学園に来ましたよ〜っと!
わたしは今、海を渡ったところにある王立魔法学園に来ている。魔法学園は魔法学園である。他の名はない。面倒だったのか、センスがないのか……わたしは後者だとおもっている。
この魔法学園、王立であるが、ウィーツのものではない。
つまり、ここ、他国!
まさか留学することになるとはね〜。
前の世界では海外旅行もしたことなかったのに〜。あ、沖縄って海外?
トウサマ曰く、わたしが手の届くところにいたらいつまでも諦められないっていうことらしい。
まあね、姫は休みのときはうちに来てたもんね。地続きの隣国だし、友好国だし、姫だしね、検問も王宮の門番も突破できるよね。しかも毎週のようにだもんね。
その点、この魔法学園には気軽に来ることは出来ない。
海を渡らなければならないし、検問も厳しい。魔法学園は列島である国の大陸から一番遠いところにある島を丸々ひとつ所有していて、外部との接触をほとんど断っている。
わたしは魔法学園を卒業するまで帰ることは出来ないのだ。
なんか、わたし、姫から逃げられたっていうより、遠くに閉じ込められたってかんじがするんだけど。
でも魔法を学べるし、別にいいかな?元々インドアだしね。
ここに来るにあたって、婚約者たちには大層嘆かれた。
週に一度のベルと月に一度の魔石で懐柔することになった。
魔石とは魔力を固めたもののこと。わたし、魔力そんなに多くないから親指の先くらいのしか送ってやれないけどね、それでもいいってさ。
月に一度のマーブルチョコ一粒で懐柔される婚約者たち……これってチョロイン?
魔力そんなに多くないけど、一日の終わりに残ってる分を絞り出せば一粒作れる。ひと月で30粒。
これを婚約者三人に一粒づつでしょ?トウサマ、カアサマ、サブレ、クッキーに、妹のビスケ、四人の先生たちにも一粒づつ送ると、18粒しか残らない。
魔法使いは魔石を非常食として常に貯めておくことを推奨されているから、ひと月に18粒のマーブルチョコしか貯めておけないわたしは魔法使いとしては結構ダメなやつだ。
でも、みんなからのお返しがあるからね!しかも量的には比べものにならないんだからね!
例えば、一番魔力の多いカアサマからは前の世界のマヨネーズの入っていたようなチューブ5本の生クリームが送られてくる。ちなみに魔石は腐りません!便利!さすが非常食!
他のみんなも必ずお返しを送ってくれるから、わたしの非常食はバリエーションも量も豊富になること間違いなしである。
あ、わたしはみんなから送られてくるのを貯めるつもりだけど、みんなは食べちゃうよ!一粒のチョコを糧にひと月頑張れるだろうってさ。泣けちゃうよね。
わたしたちは魔力という美味しいものがあるので、食文化はあまり発達していない。
基本、上の人ほど魔力は洗練されていて美味しいので、有り難みも増すというわけ。
その中でもチョコはかなり希少らしい。王家にも随分昔にいたらしいけど、ここ最近では百年くらい前に公爵家にひとり出たくらいで、おそらく現在はわたしだけだろうという。
ヤバイなあ。俺TUEEEならぬ俺UMEEEで無双出来そう……




