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16話

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん」


「凄い適当な相槌だなぁ、話聞いてくれてたかぁ?」


「……私、別に興味ないし」


「ですよねー」


 深き森の魔女の住む深き森【ディープフォレスト】の奥深くにある一軒家にて、テーブルを挟み顔見て話す二人。

 メルティーナ・ヴァステンとシンタロー・キムラである。

 

「………倉庫にある昔の戦利品は勝手に持ってけば?」


「お、いいのか?」


「別に私のものってわけじゃないし。あの時の四人、

『シンタロー・キムラ』

『クロード・ヴァステン』

『アリア・メンデ』

『メルティーナ・フォン・ガルバーナ』

 【ファミリア】……あの四人で各地を回って集めたものだし、この小屋だって元々財宝を管理するための別荘を私が改築したものだし」

 

「【ファミリア】かぁ…懐かしいなぁ。何年ぐらいたったんだろうなぁあれから」


 ファミリアとはシンタローの元いた世界の家族らしく的な意味合いで、元々異世界人であったシンタロー。

 家族や村を外敵に滅ぼされたクロード。

 親に捨てられ生まれた時から孤独を感じていたアリア。

 ガルバーナの姫という立場に生まれながら、生まれつき強力な魔力を制御できず幽閉されていたメルティーナ。

 

 全くもって接点がなかった四人だが、様々な共通点があった。

 それは天涯孤独であり、帰る場所がなく、一人では寂しく、人恋しかったということである。

 だからせめて四人。

 必ず、絶対に裏切らず、ジジイやババアになって縁側でお茶でも飲もう、なんて笑い合っていたものであった。

 

「………ふぅ」


 少しばかりシンタローは感傷が過ぎたかと財宝を管理する場所へ向かう。

 そこは崖のようになっており、洞窟などは見当たらず、仕掛けも一見内容に見える。

 だが、シンタローがおもむろに崖に手を当てると、

 

―――ゴゴゴゴゴ………

 

 光のヒビが幾十も走り、目の前に人が通れる程度の大きさの入り口が現れた。

 この仕掛は【ファミリア】のメンバーにしか反応しない。

 別にここまで凝らなくてもいいんじゃないかと思わないでもないが、アリアが特にこういう凝ったものが好きで、たまに入り口にペンキなどが仕掛けられていたことがあり、クロードがみごとひっかかり、一瞬血まみれになったかと思ったくらいだ。


 更に奥に進むと、見事に散乱した財宝がわんさか放置してある。

 この空間自体に保存の魔法がかかっているので、この洞窟にある限りここにある財宝は色あせることはない。

 

「しかし今考えるとよくわからんものを集めたものだなぁ」


 金銀宝石は勿論わんさかあるが、刀剣等武器の類や、小道具などもいろいろある。

 昔自分が集めたくせに、今久しぶりに見ると新鮮で中々面白いものだ。

 

 そんな風に辺りを見ながら、先を進んでいくと、横置き刀掛台に立てかけられた一振りの鞘に収まった太刀と脇差。

 その隣には鞘に収められたまま突き立てられた両刃の剣。

 手甲、足甲の一式。

 無造作に立てかけられた杖。

 

 どれもこれもが【ファミリア】を思い起こさせる、全盛期の相棒達。

 

「懐かしいな」


 そう言ってシンタローは太刀に手を伸ばし、鯉口を切る。

 波紋は直刃。

 刀身は90cmでこれ以上長いと大太刀というらしいから、語呂のいい太刀が好みだったので90cmで打った。

 妙なこだわりだと思うが、なんとなく日本人らしい発想だとも思う。

 俺自身が作った、最高傑作で四精霊の力でオリハルコンとミスリルを一定割合で合成して玉鋼っぽいものを作り、アダマンタイトと謎の配合の金属を主成分にした金属で玉鋼っぽいものでくるみ、出来上がったのがこの太刀である。

 鞘にも色々仕掛けをしており、鞘単体でも魔法の触媒としても使える言わば魔術師の杖的存在でもあった。

 刀を鞘に納めての居合い抜きなんかは中二病真っ直中のシンタローの一番のこだわりで、満足が行く威力を出せるまでどれだけの研鑽と練成が必要だったか。

 刃を飛ばす真空斬りとか、全ての速さを超える音速の居合い(笑)とかシンタローは当時本当にまじめに研究していたのだ。

 

「ふーむ」


 とりあえずオリハルコン、ミスリル、アダマンタイトは腐るほどあるし他に足りないものもない。

 となるとどんな剣がいいかっていうはなしに逆戻りなんだよな。

 

 なんとはなしに右手に持つ太刀と左手に持つ鞘をみるシンタロー。

 

「変則二刀流ってのもありかもしれんなぁ」


 勿論こんな変態的な性能の刀を打つ気はないが、ユフィもそろそろ3鉱石を使った本格的な武器を手にしてもいい頃だ。

 

「よし、かえって相談してみるかね」


 そう言って洞窟を後にした。

 太刀を片手にしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまあ、いろいろ考えた結果、ユフィ。お前にはいろんな選択肢があるな」


「は、はいっ」


 ビシ、と指をさす

 

「例えば1つ、今までのようにツヴァイハンダーを3鉱石で配合する。2つ、剣の道を諦め魔術師として杖を持つ。3つ、剣と魔術の両立を目指す。当然3が一番理想だが前線に出ながらクセのある3鉱石武器を持ち奇跡を使って援護するのはかなり難しい」


 シンタローはうんうんと知ったかぶりしているかのごとく首を振る。

 だがユフィはおそらく両立を目指すだろうという考えが既にシンタローの中にはあった。

 この少女はか弱いようでいて芯が強く折れず曲がらず刃毀れしない、まさに日本刀のような少女であるとシンタローはまえまえから評価してた。 

 ゆえに洞窟で太刀を見つけたときは、これかなと本能的思ったし、教えるのにもやぶさかではなかった。

 

「教えは厳しいが耐えられるな!?」


「はい!!」


「違う! 師匠だ!!」


「ハイ、師匠!!」


 この三文芝居を見せられてる方は溜まったものではなかった。

 リレイ、ギルティンの両名である。

 

「っていうか刀鍛冶のアンタが戦うことができるの?」


 至極最も意見である。

 だが先日見せた【覇王の目】。

 あれがどうも脳裏にちらついてボイコットするという行為に出ることが出来ずにいた。

 ちなみにギルティンも似たようなものだ。

 

「別に流派的なものを教えるわけじゃないですからね。先人の知恵っていうのを教えるくらいですよ」


 そう言って腰に挿した太刀に手を当て外に出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユフィの新しい剣が太刀に決まったのは喜ばしいことだが、この太刀は大変扱いが難しい。

 

「まずは基本」


 鞘から太刀を抜くと鞘の方を媒体に簡単な奇跡…ファイアを起こしてみせる。

 しかもそれは杖の効果と変りなく、むしろ此方の方が効果が高いようにも見える。

 

「ま、つまりは鞘自体が杖の役割をしているって言うわけですね。唯一応分類上杖なんで強度は大したことなく、ガッツンガッツンやると壊れます」


「まあ、普通の杖でもそうだし、ふしぎなことじゃねえな」


 ギルティンはふむふむと相槌をうっている。

 こういう工夫をするタイプではないので物珍しいのだろう。


「お次は刀身ですね。まあこっちはかなりの業物なんでかなり手加減しますが」


「え? その剣をくれるんじゃないの?」


 リレイの邪気のない言葉にシンタローはがっくりとうなだれた。

 一応この刀はかなりのチートであるとともにシンタローの青春を共にした相棒である。

 譲る訳にはいかない。

 っていうかリレイの剣が攻撃力250位あるとしたらこの刀は2500位あるまさにケタ違いの一品なのだ。

 まぁ、武器というのは使い込んでいくうちに大切に使えば永久に使うことも可能で、シンタローの刀もその例によって怨霊じみた力を持っているのである。

 こまめなメンテナンスをかかさずに使っていけばリレイの剣も1000位は狙える名剣になるのではないだろうか。

 数百年は必要だろうけど。

 

「まあ、とりあえず」


 スパスパスパ、とそこら辺の岩や木をを切り刻む。

 

「こんなかんじで叩き潰すよりは切り飛ばす、切り落とす用途での使い方が主ですね」


「ほぉ~…見事な切り口だな。俺の剣じゃこうはいかねえ」


「私の剣でもスキルを使わないと無理そうね。いま、シンタローはスキルを使ってなかったでしょ?」


「イグザクトリー」


 太刀は切れ味こそが命。

 この点では負けるわけには行かないわけで。

 

「更に一歩進むと…」


 闘気を込めると刀身がぼんやりと薄く光る。

 脚部に闘気放出。

 目標に急接近し、対象物を切り飛ばす。

 

―――ズパッ!

 

「うお! 岩が切り飛んだぞ!」


「……さすがにアレは無理かも」


 思い思いの言葉を残しシンタローの技に感想を送る。

 とまどってるユフィの頭をなぜ、

 

「ま、慣れと要領でこれくらいはできるということかな。鞘を使いまずは後衛でもよし、太刀を持って前衛に出るもよし」


 そう言って鞘に太刀を収めると、

 

「そういえば四精霊の祝福を受けてたんだっけ? ならいずれこの技を使えるかもなぁ」


 二人には見せたくなかったのか、少し目につかないところによばれ付いていく


――――そしてそれは始まった。

 

 左手は鯉口に、右手は柄に触れるか触れないか。

 そのまま静かに時が過ぎていくが、目に見えていないだけで何か精霊の嘶き? 雄叫び? 歓喜?

 よくわからないがとにかく精霊の密度が異常に濃い空間になりつつあるのがわかる。

 張り詰めた雰囲気の中、シンタローは目の前の木に一瞬で詰めより、

 

「―――精霊剣・居合い抜き一刀」


 魔法も闘気もあの竜気すらも紙のように切り裂くだろう居合い抜き。

 全てがその一刀のもとに切り裂かれ跪くであろう。

 辺りは時が止まったように振るえすら許されぬ緊張を強いられる空間。

 振りぬかれた刀の先の木には何一つ傷はついておらぬが、その気になればこの空間ごと吹き飛ばし跡形もなく消し飛ばすことも出来ただろう。

 

 ユフィは自分でも気付かぬうちに震えが止まらなくなっていた。

 ハンターというのはモンスターを狩ったり、人を助けたり。

 もっと人と身近に生活の一助としての職業だと思っていた。


 ハンターは断じてこんな全てを切り伏せ、全てを屈服させるような技を必要とする職業なんかじゃない!

 

「……やっぱ、ユフィはそういう反応だよな」

 

 睨まれたシンタローは頭を掻き、過去を恥じるように苦笑いをする。

 

「とりあえずユフィ用に太刀を用意するから、そうだな一週間くらいかな。それくらい後にまた店に来てくれ」


 そう言って、背後からヒラヒラと手を振ってさっていくシンタロー。

 彼の過去に何があったのか走らないが、ユフィはいままで知らなかった何かを、今知ることが出来たような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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