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14話



「…………凄いわね」


「……あわわわわ……」



 目の前で起こる惨劇にそれぞれの感想をこぼすリレイとユフィ。

 ユフィにいたっては理解が追いついていないのか、ただただ唖然としているようにも見える。


 ここはSS危険地帯。

 パーティーを組んだはいいが、個々の実力を把握できないままにSSS、UNKNOWNに踏み込むべきではない、というのは当然の帰結である。

 モンスターが弱すぎても、それは実力として図ることは出来ない。

 ある程度の拮抗した能力のモンスターと戦ってこそ、持ち味としての性質、戦い方などが顕著になってくるのだ。

 SSならユフィでも単独で生還できることから、とりあえずの場所としてここを選んだのだ訳なのだが……。



「うらぁぁぁぁああああッ!!!」



 轟音一閃。

 ギルティンを囲む3匹のモンスターが、その手に持つ大剣によって吹き飛ばされぶっ飛んでいく。

 比喩ではない。

 本当にぶっ飛んでいくのだ。

 それも無造作に振られた唯の一振りでである。



「『闘気』……? いえ何か違うわね……」



 その攻撃を見てリレイは呟く。



「GYAAAAAッ!!!」


 

 戦闘はなおも続き、振りが大きいためその隙も大きい。

 振り終え次の動作に移る前の予備動作をついて、虎視眈々と隙を狙っていたモンスターが飛びつく。

 が、



「―――ッせ!!」



 『直感』によって悟っていたのだろう、見かけによらず機敏な動作で攻撃をかわしつつ、カウンターの一撃をどてっぱらに叩き込む。

 今度は剣ではなく蹴りでだ。


 その攻撃を受けたモンスターは断末魔の叫びすら漏らすことなく、その体の内部を破壊されたのかぐったりとその体を横たえ、動かなくなった。

 そして、



「オオオオオオオォォォォォォオオオオッ!!!!」



―――『威圧』


 それは『闘気』の派生スキルともいえるモノで、自らより格下であるモノに対して恐怖を与える事もあるが、なにより重宝するのが、実力が拮抗している場合でも、気迫が上回れば相手を怯ませ二の足を踏ませ行動を抑止するという効果にある。

 ギルティンほどの男が『威圧』すればそれはもう暴力だ。

 力の差を見せ付けられ、恐怖で強硬に陥った残りのモンスターはその場から去ることになり、この戦闘は終わりを告げたのである。











 













「ちょっと消化不良だが……こんなもんか?」


「十分よ」


「す、凄かったです……」



 戦闘が終わり、あたりにモンスターや危険がないことを確認した3人はそれぞれ地面に座り、その感想を述べる。


 結果的に見れば圧勝。

 多少大雑把な部分は見られたもののその破壊力、突破力はUNKNOWNでも十分通用するだろうとリレイは判断していた。

 リレイとギルティンが戦えばリレイが勝つだろう。

 それは単に相性の問題であり、技とスピードでかく乱し隙を突くリレイの戦い方と、圧倒的火力で敵を粉砕するギルティンとでは同じ剣士としてを指向が違う。

 いくらギルティンでも『魔法剣』と『闘気』の一撃に無傷とは行かないだろうし、逆にギルティンの大雑把な攻撃はリレイには届かない。

 唯それだけの話である。

 

 だが唯一、リレイが危惧した点と言えば、



「ギルティン、貴方『闘気』を使うのよね?」


「む……」



 その言葉にギルティンが眉をひそめる。

 


「凄かったですよね! モンスターがあんなに飛んでいく程込められた『闘気』なんて見たことないですよ」


「そうね……唯の『闘気』ならば、不可能なんでしょうね」


「あ~……やっぱ分かるか?」



 リレイのその言葉にギルティンは気まずそうに髪をかきむしった。

 

 そう『闘気』ならばモンスターがあそこまで吹き飛ぶような一撃など放つことは出来ない。

 仮にも此処はSS級危険地帯である。

 いくらギルティンが優秀なハンターだとしても、彼の持つ剣はアダマンタイトを使用したモノで、単純な攻撃力で言えばリレイの持つ剣の方が高いだろう。

 そのリレイはどんなに強力な一撃を持って先ほどのモンスターを一閃したとしても、アレほどの効果は見せない。

 ならば考えられるのは『闘気』ではなく……それに順ずるスキルの存在。



「よくよく考えれば、ドラゴンは物理耐性、魔法抵抗力共に優れたモンスター。

 SS危険地帯ともなればそれは特に優れたモノなんでしょうね」



 ドラゴンと言うのは生命力、攻撃力、ブレスなどが挙げられるが、一番厄介なのは鱗の硬さである。

 あらゆる攻撃に対しての抵抗力を持ち、容易な攻撃では傷ひとつつけられない。

 ゆえに数あるモンスターの種類でも最上ランクと称されているのである。



「貴方が一撃でなぎ払ったモンスターの中には物理攻撃に強いモンスターもいたのよ。

 そのモンスターも他のモンスター共々なぎ払う……ありえるのかしら?」


「…………まいったぜ。一戦見られただけで悟られちまうか。

 まあこの先ずっと隠しておけるものじゃないしな、ここだけの話にしてくれよ」



 そう前置きして、ギルティンは語り始めた。


 彼がドラゴンを狩る目的の一端。

 ドラゴンという種族は一般的にリレイの話していたような生命力や防御力を兼ねそろえたモンスターといわれているが、その実際は少々違っている。

 彼等はその巨大な体や、身に纏う鱗によって守られているのではない。

 彼等を守る、彼等だけが持つ特殊な『力』によってその存在を誇示しているのだと言う。


 その力の名を『竜気』という。



「『竜気』ってのはドラゴン独特の生命力っていうか生命の源っていうかそんなモノでな。

 生まれながらに無意識に使うそういう力を持ってるんだよ」


「『竜気』……ですか?」



 ユフィの言葉に、ああ、とひとつ頷く。



「『竜気』の特徴はちょっと特殊なモノでな。

 例えば俺達人間が扱うエネルギーってーと何が浮かぶ?」


「『闘気』、『魔法』……かしら?」


「そうだな」



 現在確認されている人間が扱うスキルで、エネルギーに変換できるものと言えばその二つである。


 『闘気』なら物理エネルギー。


 『魔法』なら魔力エネルギー。

 

 それが現状の認識だ。



「他のモンスターもそうだろうぜ。

 あいつ等は大小の差があれど物理攻撃に強いとか魔法攻撃に強いとか、そういう特徴を持っている。

 だがドラゴンだけは違う。

 あいつ等はそのどちらとも属さない、そういった力である『竜気』ってのを保有しているんだ」


「それってつまり、魔法と物理を混合したようなエネルギーって事、かしら」


「似ているが……ちょっと違うな」



 そう言ってギルティンは脇においてあった自分の剣を手に取った。



「いいか、『竜気』ってのはさっきも言ったように物理とも魔法とも違う。

 第3種のエネルギーだと考えてくれ。

 そしてその特質は『一定以下の物理、魔力を無効化する』と言う点にある。


 例えば10の『竜気』を持つ防御に9の『闘気』をぶつけたとする。

 これが『闘気』同士なら10の防御の効果で、4,5の威力に軽減が出来るだろう。

 魔法もまた一緒だな。

 だが、『竜気』の場合、9を全て通さず一切のダメージを無効化するのさ。

 

 反対に10の『竜気』を9の『闘気』にぶつけると、今度は9の『闘気』を無効化して10のダメージを与えられる……どうだ、反則くさいだろ?

 まあ、10に対し11をぶつければ1ではなく、11のリスクを負うんだがな」


「な……」



 反則どころではない。

 その話が本当であったら、ドラゴンと言う種族は力をつければつけるほど手に負えないモンスターへと成長すると言うことだ。

 ドラゴンというモンスターを軽く見ていたわけではないが、そんな特性があったのなら、このアストラル大陸で一番の脅威となるのは……。



「ギルティン……貴方。それを知っていたからドラゴンを……?」


「ないとはいえねえな。

 あいつ等は寿命が長い、そして長く生きれば長く生きるほど力を付けやがる厄介な生き物だ。

 早めに叩いておいて損をすることはねえ。

 だが、目的がそれだけかというと……またちょっと違ってくるんだけどな」



 ギルティンは立ち上がり、伸びをし、



「さて、話し込んじまったな。

 ここは一応SS危険地帯だ、長居するとちょっと危険だぜ」



 そういい終えると先へと進み始めた。



「あ! ま、待ってください!」



 その後を追うユフィ。

 その二人の背を目で追いながらリレイは考える。


 ユフィは果たして今の内容を理解できていたのだろうか。

 もしギルティンの言うことが本当であれば、ドラゴンに対する認識を改める必要がある。

 それ以上に、



「……なぜその力を貴方が使えるの?」



 先ほど見せた戦闘はギルティンの『竜気』という力で説明がつく。

 だがしかし、それを使ったと言う事実が彼女にとって言いえぬ不安となっていくのを感じていた。



 SSギルドハンター『竜殺し』ギルティン・ウェーバー。

 彼の存在はなぞに包まれたままである。










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