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続・黄色いスイートピー ~ Climb Every Mountain

掲載日:2026/05/09

<プロローグ>

エポニーヌ。エポニーヌは彼を助ける為、彼に向けられた銃口をつかみ自ら犠牲

となった。

そして、最期は彼に抱かれて…最期に気持ちを伝えて…うらやましい。



1.TO LOVE YOU MORE


はぁ~、何で彼を紹介してしまったんだろう。身を引いてしまったのだろう。

自己嫌悪、自分がいやになる。私の方が彼をよく知っている。

小さい時からだもん。彼のタイプだって判る、私は全然タイプと違うけど。

でも、私だって、それなりに色々と努力したのに…気づいてくれなかった。

だから、諦めたいったんは。でも、でも、やっぱりダメ。諦めきれない。

心が壊れそう。何で萌々を選ぶの。絶対に私のほうが彼のことを…

萌々が憎たらしい嫌いなりたい。

いつか二人が別れる、どちらかがふられる事を思い描く…いやな女。

私は心の中でづっと彼を思い続ける、何があっても。

そしていつまでも待ち続ける。誰よりも彼を好きなのは私なのだから。


「On your marks!」

「get set!」

バン!


「痛っ!」 足がつった! 足が動かない。

「真代、どうしたの?」と萌々が声をかけてきた。

「足が…」

学年末試験が終わって部活が再開。練習の最後に100mダッシュ。

ピストルの音で足がつった。

「久々の運動のせい?」

「う~ん、そうかもね。もう嫌になっちゃう」

「うん、無理しない。無理しない」と言って、足をマッサージしてくれた。

「そうね。う~ん、まあ運動不足なのかなぁ?最近、足がつりやすいし。

ねえ、聞いてこないだも試験勉強中に足がつって」

「勉強中に?」

「そう、試験勉強していてチョットうとうとして腰が痛くなって起きて。

暗くなったっていたのでスタンドの電気をつけたら…足がつった」

「そうなの?え~なんで?姿勢が悪かった?」

「判んない。さっきはグランドに出る時につまずいた。何でか判らない。

もう本当に嫌になる」

「フフフ。そうなんだ」

「チョット、なによ面白がってない?…もう大丈夫、ありがとう。また明日」

「まあ、久しぶりだしね。うん、明日だね」

「優しいのね。萌々は」

「何?」

「いや」 本当は優しくしてほしくない。出来れば嫌いになりたいのに…

嫌いになれれば…嫌いになれればいいのに。



「う~ん、しっくりこないなあ…」

「なんか、道代らしくない走りだったね」

「萌々、そうなの。う~ん、腰に違和感があるし…足に少ししびれ…」

「昨日から調子悪い感じね。何だろうね」

「う~」

「ともかく無理しないでね…うん、もしかしたら病院にいった方が良いかもね」

「病院? もう、オーバーねえ」

「オーバーかもしれないけど…でも、一度みてもらうのも…ねえ」

「え~、でも何科にいくの?足だから…整形外科?」

「そうねえ…スポーツ外来とか…もある」

「スポーツ外来なんてのがあるんだ。ふ~ん、さすが医学部志望」

「いや、スポーツしてれば知ってると思うけど」

「そう?」

「でも、行くなら大きな病院の方が良いかも…総合的に見てもらえるし。

そう、女の先生のほうが良いかも」

「あ~そうねえ」

「女性特有な悩みとか…女医さんのほうが相談しやすいでしょ」

「うん」

「今、生理中?」

「違うけど。何で」

「生理中って足がつりやすくなる場合もある」

「そうなの」

「そう、生理中ってホルモンバランスが乱れて、カルシウムやマグネシウム…

そうミネラルが不足してつりやすくなる…あとは何かな、そうね、血行不良の

場合もあるだろうし…」

「そうなんだ、色々あるのだ、さすが萌々センセーね」

「萌々センセーて何よ。ていうか何年陸上してるの。スポーツしてれば

みんな知ってる。常識じゃ」

「そう~?そうかなぁ。ワタクシは何も知りません。センセー判りません」

「何、センセーって。バカにしてる?」

「してない。してない。やっぱ、詳しいなって」

「つりやすい場合って体のどこかに病気が隠れている場合も…

うん、そう、糖尿病も。生活習慣で起きる糖尿病とは違う…

足のしびれがあるんだっけ?」

「うん、少しね。良く判らないけど…色々あるのね原因って、やだな」

「そう、だから一度見てもらう…総合的に見てもらうのが良いかもね。

自己免疫疾患とかだとなかなか診断つかないし」

「何…ジコって?事件事故?事件も事故も起こしてない」

「違う違う、病気の話なんだから違うでしょ。おかしい笑える」

「なにがおかしいのよ。失礼しちゃう」

「あの…自分自身の事、英語だとセルフね」

「セルフ? あ~、セルフトレーニングのセルフね」

「そう、当たり前でしょ」

「萌々センセーが難しい単語使うからでしょ、萌々センセーが」

「あっなんか悪意あるな~、バカにしてるでしょ」

「あら、判っちゃた。さすが萌々センセー、あったまいい!」

「おでこ出せ、デコピンしてやる」

萌々といると楽しい…嫌いになれない…



2.A Little Fall of Rain


萌々が調べてくれた病院で診察を受けた

病院をでたらドンヨリして昼間なのになんて暗いの、雨が降りそう…

血液検査、尿検査、そしてレントゲン。MRIの為に来週まただって。

色々きかれた。肩こりや腰痛、手足のしびれはないかって。

足がつりやすいってだけなのに、何か大変。やだ。やだなあ。

心因性の可能性もあるからって言われたけど…

別に心配事とかないし葛藤なんかもない…葛藤なんか。

検査入院になるかもとも言ってた。何、やだ重病なの。

入院しないと判らない病気ってなに? そうだ、ふと思いだした。

テレビドラマだったか病気になった主人公、死んじゃって…

こんな症状じゃなかったっけ。何て病気だっけ…筋肉の病気、筋力が落ちて

歩けなくなって話せなくなって、寝たきりになって…呼吸困難になって、そして…


冷たっ?雨?雨が降ってきた、弱い雨。まあ傘はいいや。

病院の建物前の広場の花壇、黄色いつぼみの花が…スイートピーね。

しばらく雨が降ってなかったから恵みの雨っていうのかな。

この雨の恵みできっと綺麗に咲くんだろうな、いいな。私はもう咲く事はない。

花が咲く前に枯れていくんだ、だって…。


「真代!」後ろから声をかけられた。

「雨、雨降ってきたよ、傘もってないの?」声をかけてきたのは萌々。

そして彼…道也センパイも一緒。何なの、一緒って腹立つ。

「今日、病院でしょ。終わるのを待ってた。どうだった?」

「そう、二人でね。仲がいい事」 手をつないでいる、超ムカつく。

私だって手をつないだことくらいある。いつだっけ…小学校1年…2年。

「何だよ心配して待ってなのに。ずいぶんツッケンドンだな」

「別にいいでしょ。道也センパイに関係ない、何か問題ある」

萌々がいなけれ思いっきり泣きたい、道也センパイに抱きついて。

なのに何で二人一緒なのよ。一人じゃないのよ。

「検査結果、良くなかったの?顔色悪いし、泣いてる?」萌々が尋ねてきた。

「別に…泣いてないし何も言いたくない。どうせ私は死んじゃうんだから」

「死んじゃうって…何で?検査の結果が出たの」

「検査の結果は出てないけど、きっとそう。入院になるかもしれないし

絶対にそう死んじゃうの」

「だから死んじゃうってなに。何の病気」 うるさいなあ道也センパイは。

「知らないわよ。先生は何も言わないし。

でも、歩けなくなって、話せなくなって寝たきりになって、そして死ぬの」

「えーと、それって…もしかしてALS、筋委縮性側索硬化症とかと思ってる?」

やっぱり萌々は医者志望ね。難しい病気をスラッと言う。

「そうよ、私はその筋萎縮…だから…そのALSなのよ」

「その…ALSって…長く生きられないじゃ…歩けなくなって?」

「そうよ道也センパイ.。車いすなったら、お願いね」

「えっ、いや、ああもちろん。いや、いやいや違う違う」

「チョット待って。診察の結果はまだでしょ」

「そうよ、まだよ萌々。でも判るの自分の体だもん」

「足がつりやすいって事じゃないの」

「そう、足がつる。それだけじゃない。転んだりするし…」

「う~ん」

「う~んて、何よ萌々。他人事みたいに心配なんかしてないでしょ」

「心配している…でも、でもALSは多分違う、いやALSはありえないわ」

「何で判るのよ。医者でもないくせに。勝手なこと言わないで」

「確かに私はまだ医者ではないし…何か重たい病気かもしれない…

だけどALSではない事は断言する、できる。」

「何よ、偉そうに。知ったかぶってむかつく」

「チョット、真代。言い過ぎだ」

「いいの。いいのよ今は。でも、うん、絶対ALSではない、断言する」

「何でよ。何で断言できるのよ。なんでそんなに冷静なのよ」

「ALSの症状として、筋肉のけいれんとかがあるわ」

「そうでしょ」

「でも…ALSの発症は10代では稀だし。男性のほうが発症しやすい」

「稀って…10代だって女性だって…絶対ない訳ではないでしょ」

「そうね、絶対ではない。でも…確かピストルの音…

ピストルの音で足がつった時あったしょ」

「うーん、うん。確かにピストルの音で足がつった事はある…それがなに」

「あと、光。スタンドの光で足がつったでしょ」

「…えっと…確かにスタンドつけた時に…よく覚えてるわね、で?」

「音や光がきっかけで足がつる、筋肉が硬直する。ALSではありえない症状」

「…」

「ありえない症状がある以上、ALSの可能性は低い、否定できる」

「そしたら私の病気は何なのよ」

「判らない…出来る事は今の症状から可能性のある病気を推測することしか」

「推測でもいいじゃん。今日、待ち合わせ本屋だったよね、医学関係のコーナー。

なんかすごく難しいタイトルの本を見てて…声をかけにくいほど鬼の様な恐い顔で」

「鬼の様な怖い顔って…失礼ねえ。そう見てた本は…自己免疫疾患の専門書」

「自己免疫…あの…セルフのジコよね?」

「そう、セルフの自己の自己免疫疾患。自分の体を守る免疫システムが自分の

細胞や組織を外敵と誤認識して攻撃しちゃう病気。女性のほうが発症しやすい」

「えっと、何?どういう事?」

「簡単に言うと免疫システムの誤動作。原因はよくわかってない」

「じゃあ、原因がわからいってことは治療法はなくて治らないってことよね」

「治療法はある…でも完治する治療ではなくて、免疫の過剰反応を抑えて症状を

和らげる治療になるみたい。自己免疫疾患って色々な種類があって種類によって

治療法も色々。ネットで調べた…そして今日、専門書でも…症状や治療法を」

「結局は一生治らないのよね、私の病気は、萌々そうでしょ」

「う~ん、いや、自然治癒する事もあるみたいだし、きちんと治療を続ければ

死ぬ事はない。そのうちに特効薬が出来る可能性だって…いや、そもそもまだ何の

病気かわかってない」

「そうよね…」

「ともかくALSではない事は保証する。信じて」

萌々の両目光ってる。何でそんな目で…何でそんな顔で私を見るの見つめるの。

もうヤダ。萌々の事嫌いになりたいのに、恨みたいのに…出来ない。

雨、もっと強く降って。



3.Climb Every Mountain


全ての山を登れ。全ての道、小路をたどる。小川も渡る。

そして虹を追いかける。修道院や最後のシーンで流れた歌。

今日、有名なミュージカル映画をネットで見た。何か心に響いた。

何だろう、気持ちがすっとした、落ち着いた。

冒頭の緑の大地と遠くに写る山々。そして美しい歌声、子供たちのコーラス。

エンディング、家族みんながそろって元気に山を越えている。

足元に黄色の花、雄大な山並みが映る…自分がちっぽけな存在に思えてきた。

私は何を悩んでいたのだろう。

うん、そう、自分に向き合い素直になろう。自分はどう生きる生きるべきなのか。

道也センパイを諦める事はしない。でも、二人が別れる事も望まない。

矛盾しているかもしれないけど、それでいい。それでいい。

二人の幸せは私の幸せだもの。


そして私は病気に立ち向かう。

まだ何の病気かは判らない。自己免疫疾患かもしれない。違うかもしれない。

違う重い病気…そうガンだって構わない。今、出来る事、出来る範囲のことをして。

そして夢を見つける、そう夢を見つける。夢を探す。生きている限りずっと。


For as long as me live.


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