第6話 反応
一人の変化は、
やがて世界を動かす。
HYDRA CHRYSALIS
新章:ORIGIN
第6話 反応
異変は同時に起きていた。
世界各地で。
静かに。
だが確実に。
「……まただ」
監視モニターの前で、
一人の男が呟く。
映し出されているのは、
都市の上空。
何もないはずの空間が、
わずかに歪んでいる。
「座標固定、確認」
別の声。
緊張が走る。
「発生源は?」
「不明……いや、待て」
画面が切り替わる。
一点。
拡大。
そこにいる。
「……人間?」
誰かが言う。
だが。
すぐに否定される。
「違う」
断言。
「もう“人間じゃない”」
その視線の先。
瓦礫の街の中心。
榊が立っている。
静かに。
何もしていない。
だが。
周囲の空間が、
わずかに歪んでいる。
「……こいつが全部の原因か?」
誰かが呟く。
沈黙。
そして。
「可能性、高い」
冷静な声。
判断は早い。
「対処は?」
短い問い。
返答はすぐに来る。
「――隔離、もしくは排除」
その言葉。
空気が変わる。
「……やるのか」
迷いが混ざる声。
だが。
上は決めている。
「命令だ」
短く。
冷たい。
「対象コード:S-01」
その瞬間。
榊の目がわずかに動く。
「……来るな」
小さく呟く。
感じている。
視線。
意図。
そして――
敵意。
遠くで音がする。
ヘリ。
複数。
高速で接近。
「対象確認、視認」
無線が飛び交う。
「武装展開!」
榊は動かない。
ただ、立っている。
「……やめとけ」
小さく言う。
聞こえるはずもない距離。
だが。
その瞬間。
水が揺れる。
空気が震える。
ヘリの一機が、
バランスを崩す。
「なっ!?」
操縦不能。
墜落。
爆発。
残りが散開する。
「攻撃開始!」
ミサイルが放たれる。
一直線に。
榊へ。
「……だから言ったろ」
動かない。
一歩も。
ミサイルが直撃――
する直前。
消える。
「……は?」
操縦席で誰かが呟く。
存在が“なかったことになる”。
爆発もない。
痕跡もない。
「……干渉してるのか?」
理解が追いつかない。
榊がゆっくり顔を上げる。
「……面倒くせぇな」
水が動く。
ほんの少し。
それだけで。
空が歪む。
次の瞬間。
残りのヘリがすべて停止する。
空中で。
完全に。
「……何だこれ……!」
動かない。
エンジンも。
操作も。
「――落ちる」
榊が言う。
その一言。
それだけで。
全機が墜落する。
同時に。
「……終わりだ」
静かに呟く。
誰も聞いていない。
だが。
その力は。
完全に届いている。
モニターの向こう側。
沈黙。
誰も言葉を発せない。
「……次の段階に入ったな」
誰かが言う。
低く。
重く。
「もう通常兵器は通用しない」
事実。
確定事項。
「……どうする」
沈黙。
そして。
一つの決断。
「――プロトコル移行」
空気が凍る。
それは。
最終手段。
「上位接触、許可」
その言葉。
つまり――
「……あいつらを呼ぶのか」
誰かが呟く。
震えた声で。
「仕方ない」
冷たい返答。
「もう“人類の範囲”じゃない」
その時。
榊が空を見る。
遠く。
さらにその先。
「……来るな」
感じている。
別の気配。
今までとは違う。
もっと近い。
もっと現実的な“敵”。
「……いいぜ」
小さく笑う。
「まとめて来い」
その言葉。
完全な宣戦布告。
世界は動いた。
完全に。
人類と。
上位存在と。
そして――
榊。
三つ巴の戦いが、
始まる。
―――続く
第6話を読んでいただきありがとうございます。
ついに人類側も動き出し、
榊は明確に“敵”として認識されました。
そして新たに、
別の上位存在の介入が示唆されます。
次話では、
三つ巴の構図がさらに加速していきます。




