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『【トラウマ確定】地図にない村で地蔵を壊した僕たちは、スマホ越しにしか見えない「それ」に順番に食われていく』  作者: ゆっきー


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第4話「強制ログイン:身代わりの代償」

 前書き:

「交渉成立」だと思いましたか?

 人知を超えた「それ」にとって、あなたの言葉なんて、ただのノイズに過ぎないのに。

 ……画面の「0」という数字、赤く染まっていませんか?


 本文:


 スマホの画面上で、無機質な数字が「0」を刻んだ。


 ドクン。


 心臓が跳ねるような、重い振動がスマホから勇人の腕へと伝わる。


「アハハ! ほら、0になった! 交渉成立だよ、勇人! さよならッ!!」


 車内の美波が歓喜の声を上げ、狂ったようにアクセルを踏み込んだ。

 タイヤが砂利を撥ね、急発進する。勇人をその場に取り残し、彼女は暗闇の向こうへ逃げ去ろうとした。


 だが。


 ガリガリガリッ!!


 凄まじい金属音が響き、美波の乗った車が、まるで巨大な見えない手に掴まれたかのように、その場でピタリと止まった。


「え……? なんで……? 動いてよ、動いてよぉ!!」


 美波が泣き叫びながらハンドルを叩く。

 勇人がスマホのライブ配信画面を見ると、そこには「交渉」の真実が映し出されていた。


 勇人の背後にいた無数の「顔認識」の枠。

 それが、カウントダウンが終了した瞬間に、一斉に「車」へと移動していたのだ。


 画面越しに見える車の屋根、ボンネット、そして窓ガラス。

 そこには、びっしりと「石の指先」が食い込み、車を地面に縫い付けている。


「美波! 逃げろ、車から出ろ!!」


 勇人の叫びは、次の通知音にかき消された。


『ログインエラー:生贄アカウントが重複しています』


 勇人のスマホに、美波の自撮りアイコンが何度も点滅しながら表示される。


「な……何よ、これ……。私は交渉したんだってば! 勇人をあげるから、私は……ッ!」


 美波が自分のスマホを見ると、そこには「それ」からの返信が届いていた。


『認識完了。生贄は、**「カメラを向けている者」**とする』


「え……?」


 美波の顔から血の気が引く。

 彼女はバズるために、ずっとスマホを「それ」に向けていた。

 承認欲求のために向け続けたそのレンズが、彼女自身を「生贄のアカウント」として確定ログインさせてしまったのだ。


 パキパキ、パキリ。


 車内から、石が固まる嫌な音が聞こえ始める。


「嫌、嫌ぁぁぁ! 腕が、腕が動かない! 勇人、助けて! 開けるから、ドア開けるからぁ!!」


 先ほどまで冷酷にロックしていたドアを、美波が必死に内側から叩く。

 だが、彼女の腕は、肘から先がすでに灰色の石に変わっていた。

 叩くたびに、窓ガラスには赤い血ではなく、白い石の粉が付着していく。


 勇人がドアに駆け寄った時、車内のライトが不気味に明滅した。

 後部座席に座っていた「首のない地蔵」が、ゆっくりと美波の肩に手を置く。


 スマホの画面が、勝手にシャッターを切った。


 保存されたのは、石に変わりながら、恐怖で顔を歪ませて自撮りをする美波の姿。

 その写真の下には、無情なシステムメッセージが躍っていた。


『10,000いいね!達成。ログインボーナス:全身の石化を開始します』


「ああ……ああああ……ッ!」


 美波の絶叫が、石が砕けるような乾いた音に飲み込まれていく。


 勇人は、ただ立ち尽くすしかなかった。

 スマホのライブ配信は続いている。

 コメント欄には、彼女の最期を「神回www」「マジで石になったw」と嘲笑う、無数のフォロワーたちの文字が踊っていた。


 後書き:

 美波、ようやく「バズり」の夢が叶いましたね。

 全身が石になる瞬間の「いいね!」の数、彼女には見えていたのでしょうか。

 ……あなたのスマホの「自撮り」設定、勝手にタイマーが動いていませんか?

 次にシャッターが切れる時、そこに映るのは「あなた」ですか?

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