記憶の孔雀、揺れるガーネット
掲載日:2026/01/10
「誰に言っても信じてくれないんだ」
「まあ、孔雀が普通の広場にはいないだろうな」
「でもね、本当にいたの。子どものときハッキリ見た。大きく羽を広げてたくさんの宝石をつけて悠然と歩いていたの。幼いときに引っ越しちゃったから、今は知らないけど、本当にいたの」
ワイングラスを傾けて、赤の渋みが口に広がる。この人も信じてくれないらしい。本当に見たのに。本当にいたのに。それこそ気味悪がる人もいるからこれは誰にも言ったことないけれど、ツガイでいた。二匹いた。幼い私はてっきり広場の隣の人が飼っている鳥だとしか思っていなかった。キレイな鳥だな、お金持ちさんだなって。
ハーブの効いたソーセージを齧る。あの孔雀は私の幻想だったのか。でも当時私は孔雀という存在を知らなかったはず。だから、間違いなくいた。
「それで、何で急にそんな話を?」
「親友のあなたも信じてくれないなら仕方ないわ、忘れて」
「いや、その親友から恋人に昇級したいからこれを渡してるんだけど」
目の前に置いてあるのは、誕生石であるガーネットが揺れるピアスの入った上質な箱。
「この宝石もあの孔雀はつけてたのかなって」
「そうかもね、って言ったら?」
「明日からこのピアスつける」
実際、そんなこと告白の返事に関係ないのだけど。二つのグラスが鳴った。




