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第43話

「学校は明日も休むわ」聡美はそう言って公園を去って行った。


「家まで送るよ」と言ったが、「大丈夫、その代わり、何かあったらまた話を聞いてもらうわ」と断られた。


 心配ではあったが、あまり強引に言うのもどうかと思い、背中を見送ることにした。


 一人になると急に肌寒さを感じた、急いでいたため。コートを羽織らずに家を出てしまったが、この時期の夜にコートがないのは中々きつい。


 ため息と同時に口から白い息が出た。息はすぐに闇へ消えていく。


「何だか表情が暗いね」にこまるが姿を現した。


「どうせずっと見てたんだろ?」

「もちろん」


 感情のない声が妙に苛立つ。


「だったら分かるだろ。この前大智の運命を変えた矢先に次は聡美だ──知り合いの不幸が続いて、良い気分でいられるわけがない」


「あはははっ」するとにこまるは急に笑い出した。


「何がおかしい?」

「これは失礼。つい、面白くなっちゃってさ」

「バカにしてるのか? 俺は何も面白いことなんて言ってない」

「そう怒るなって。おっけい、分かったよ。特別に教えてあげよう」


 俺の顔の目の前にやってきたにこまる。そして、ニヤニヤした表情でこう言った。


「服部大智の運命を変えたから、道下聡美の運命も変わったんだよ」


 こいつは一体何を言っているんだ?


「その顔、あまりピンときていないようだね」

「いいから詳しく話せ」

「何その態度? 頼みごとをするときはもっと丁寧な言葉を使いなよ。まあいいや、話してあげる」


 そう言って俺の顔の目の前から外灯の上へ飛び乗った。どこで話そうが構わないが、さっさとしろ。


「君が服部大智の運命を変える前はね、道下聡美の父親が、会社を経営破綻させるなんて運命は存在していなかったんだよ。僕の知る限りでは、道下聡美は何一つお金に困ることのない人生を歩んでいたはずだ。夢を実現させ、幸せな家庭も作り、誰もが羨むような、そんな人生だった。それなのに、服部大智の運命が変わったことの余波で彼女の運命は大きく変化してしまった」

「そんなこと、あるわけがない──」


 言ってから思い出す。シックザルの力を手に入れた日、にこまるが言っていた言葉を。


『シックザルを使用し運命を変えた結果、その人物の運命が変わるのに準じて、家族や友人等の周りの人物たちの運命も変わる』


 だけど、どうも釈然としない。


「大智の母親が勤め先からの解雇を取り消されたことが、どうして聡美の父親が経営する会社の倒産に繋がるんだ?」


 二つの出来事には何の関係性もない。どう考えてもおかしい。


 大智の運命が変わったことが、聡美の運命に影響を与えたなど、信じがたいことだ。


「そんなことは僕に分からないよ。まあ、君が思っている以上に、一人一人の運命っていうのは互いに影響しあっているということさ。そんなことよりも──」


 またしてもにこまるは俺の顔の前に近づいてきた。


「君のせいで道下聡美の運命は不幸なものへと変わってしまった。それが事実であり、現実だよ」


 俺のせいで聡美が──。


「君が服部大智の運命なんて変えなければ、彼女は幸せな生涯を送ることができたのに。あーあ、可哀想な聡美ちゃん。君こそが彼女の運命を台無しにした張本人なのに、暗い表情をしていたからさっきは笑ってしまったってわけ。お分かりかな? あはっあはっ、あはははっ」


 豪快に笑い声を出すにこまるに、俺は何も言えなかった。


「さっき君は『助けが必要な時は言ってほしい』なんてカッコつけてたけど、いや、お前のせいでこんなことになってんねんドアホって、実は一人でツッコミを入れてたんだよ。まるでB級コメディ映画を見せられている気分だったなあ」

「──おい」

「何だよ、文句でもあるのかい?」

「聡美にシックザルを使う」


 聡美の運命が不幸なものになってしまったのなら、それを変えればいいだけのこと。何も難しいことではない。これで全て、解決させてやる。


「待ちなって、その前に話したいことがあるから」

「B級コメディ映画の感想はもう聞き飽きた」

「さっきのは冗談だよ、気にするなって」


 見え透いた嘘をつきやがって。冗談には到底聞こえなかったけどな。まあ、別にどうでもいい。


「話って何だよ?」

「君の運命についてさ」


 俺の運命だと?


「その様子だと覚えていないようだね。ほら、君がシックザルを3回使った後、君の辿る運命を話すって言ったじゃないか」


 記憶を掘り返すと、たしかに言っていたことを思い出す。こいつと最初に会った翌日の通学中の時に、そんな話をしていた。


「それは今どうしても言わなきゃいけないことなのか?」


 一秒でも早く聡美の運命を変えたい。自分の運命のことなど、今はどうでもいい。


「どうしてもじゃないけど、君のためにも、今話しておこうかなと思ってさ」

「──分かった、聞いてやる」


 含みのある言い方が気になり、俺は了承した。


「それではこれより、茜川翔の壮大な運命について話をいたします。携帯電話の電源はお切りください。撮影、録画は禁止されております。違反した場合、十年以下の懲役または一千万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。飲食物の持ち込みについては──」

「さっさと話せ」

「やれやれ、君にはユーモアというものがないのか?」


 あいにく、そんなものは今持ち合わせていないし、もし持っていたとしても、お前のくだらない茶番に付き合う気はない。

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