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七話 魔王参上

 アモン海岸から離れた森。


「あっはっはっはっ! さすがだなっ!」


「弱すぎ。その程度なら無職をやめろ」 


 俺はミカエルと戦った。


 結果は、俺の圧勝。


 大層な口を叩く割りに、全く勝負になってなかった。


「さすがは我が親友!」


「誰が親友だ。お断り」


「あっはっはっは! そう言わずに仲良くしようじゃないかっ!」


「あ、はい。そうっすね」


「いい経験になったっ! ありがとうっ!」

 

 それはなにより。こっちは時間を無駄にした気分。


「また改めて勝負しようっ! 次はラストをかけてっ!」


 ミカエルが背を向ける。


「なあ?」


 俺はふと、ミカエルを呼び止める。


「なんだっ?」


「お前さ? 本気だしてないだろ?」


 ミカエルがピクリと硬直。


 体は動かさず、顔だけがこちらを向く。


「……何の話だっ?」


「とぼけんな。俺にはわかる。お前、俺と本気で戦ってないだろ」


 先ほどの勝負。


 それは、俺の一方的な蹂躙で幕を閉じた。


 が、こいつは力を隠している。


 そう思った理由?


 俺も同じことをしてる身だから。


 手加減されてるのは、なんとなくわかる。


「……そんなことはないぞっ! ……自分は全力で戦った!」


 どうだか。


 やる気の無さが見え隠れしてたぞ。


「逃げんじゃねえよ。ったく。嘘は良い。けど、つくならもっとましな」


「嘘を肯定かっ! 面白いなっ!」


 開き直ったなこいつ。


 話をするだけで疲れる。


「だが、一つ言っておくぞっ? 嘘は必ず断罪される!」


「はあ」


「勇者も、魔王も、神も、貴様も! 罪人が秘めた嘘は暴かれる!」


 俺を嘘つき扱いか。


 まあ、そうですね。


 ニートになりたいからと、今に至るまで嘘だらけの人生。


 正しい認識です。


「偉そうに。ならお前は?」


 ミカエルは片腕を抑え、視線を斜め下に。


「……そんな日はこないなっ! ……何故なら、自分は嘘をついたことがないからっ!」


 嘘くせえ。


 明らかに嘘つきの常套句じゃねえか。


「そろそろ良いかっ? これから、大嫌いな勇者を殲滅……違った。予定があるのでなっ!」


「すまんすまん。引き留めて悪かった」


「なにっ! 親友の話ならばいくらでも聞くぞっ! あっはっはっ!」


 ミカエルは静かに手を振る。


「ではな親友! 今回は貴様に勝ちを譲るっ! 続きは、そう遠くない内にっ!」


 ミカエルは立ち去って行った。


 その足取りは逃げるように。


 しかし、恐れを感じさせないほど堂々と。

 

 なんだったんだあいつ。


 いや、だるかったからいなくなって精々したけどさ。


 でも、消えたら消えたでちょっと寂しい。


「楽しかった、のかもな。同類とそれなりに対話できたから」


 まあ、俺はあんな無職を認めるつもりはないけど。


「さて、今は一人だ。誰にも休息を邪魔されない。ここらで昼寝でもして。あん?」


 目の前に文字が浮かび上がる。


 これは、ラストによる魔術のメッセージ。


「人が休もうとしてる時に、タイミング悪く来たか」


 内容は、リリスがやらかしました。


 とかしょうもない内容だろうな。


 どれどれ


『ラストとリリスが負傷。勇者に人質を取られた。命の危機。至急応援を』


 目をこすり、何度も読み返す。


 なんかの間違いだろ?

 

 あのリリスが?


 俺のやることなすこと潰せるあいつが?


 ピンチだなんて想像できないぞ。


「なんて考えてる時間はないか」


 俺は隠し持っていたスーツケースから、神父服を取り出す。

 

「勇者ルシフェルはお休み。ここからは魔王として活動だな」


 文面からして戦闘は避けられないだろう。


 俺は神父服に袖を通す。


 何でそのまま行かないのかって?

 

 勇者ルシフェルは最弱、という設定。

    

 そのまま行くのはマナー違反。


 よって、ここで必要な演者はただ一人。


「魔王ルシファー降臨と。さてと、行きますか」

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