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八話 エピローグ1 昇進、継続

 数日後。バエル王国の城。


「貴殿の功績を認める。勇者ラスト。八の勇罪、色欲として活動せよ」


「あ、ありゅがとうごじゃいます!」


 現在、俺は身内勇者たちと、ラストを称える式に参加中だ。


 八罪を処刑した魔王ルシファー。


 それに善戦した勇者ラスト。


 この流れから、勇者側はラストを認めた。


 今後起こる戦いへ備えるために。


 俺たちの目論見通りだ。


「今後はバエル王国、並びにベリアル国の主として励むように」


「わかりゅましゅた!」


 二つの国の王とか大変そうだな。


 まあ、ベリアルには代理を立てたから問題ないけど。


「ふぅ」


 授与式を終えたラストが、肩を鳴らしながらこちらに来る。


「「「ラスト教官!」」」


 勇者たちがラストに詰めかける。


 あ。


 どさくさに紛れて、俺を押すな。


「ラスト教官! 王になったから、教官やめちゃうんですか!」

「やめないでください! 俺、まだ教わりたいことが!」

「変わりに、ルシフェルをやめさせます!」


 学園ドラマのワンシーンって感じだな。


 見てて胸焼けがする。


「落ち着いてください。私はやめませんよ」


 ラストには引き続き、勇者の教官をしてもらう。


 なぜなら、身内たちはまだまだ未熟。


 魔王軍とのバランスが取れていない。


 光をコントロールするため、成長してもらわないと困る。 


 え? ラストに仕事を押し付けんな?

  

 いやいや。


 新しい教官を立てる案はあったさ。


 でも、却下されたんだ。


 理由は、ラスト自身が教官を続けたいから。


 彼女曰く、


『あの子たちに情が移りました。王になっても教官をやめたくないです』


 だそう。


 元魔王が勇者の教官を頑張りたい、ね。


 おかしな話だ。


 だって、その職務は偽り。


 真剣になる意味はない。


『元魔王としては地の繁栄。勇者としては、あの子達の成長を見守りたい。ダメですか?』


 そんなラストの願いに対し、俺は


『ご自由に』


 と答えた。


 ラストは本当にやりたいことを見つけた。


 それだけ。


 嘘まみれの俺に拒否する権利はない。


 だからなんだ。


 教官ライフとやらを楽しく打ち込めばいいさ。


「あいつ、教官見てニヤニヤしてる。きんも」

「てかルシフェルって、アスモデウス様が処刑された時、寝てたらしいよ?」

「マジかよ。ニート過ぎる。クビにしろよ」


 ああ。最っ高。


 ラストが称賛される中、俺は役立たずのニート扱い。


 至福の一時とは、まさにこのこと。


「死ねよまじで」


 あ、そういうのはやめて。


 ニートの範囲を越えた罵倒は好きじゃない。

  

「ともかく、これでハッピーエンドだな。はっはっはっ」


「」じぃー。 


「っ!?」


 これで終わりだと一息つこうとした時、正面に一人の少女。


 勇者リリスだ。


 彼女は眉をひそめながら、俺をチラチラ見ている。

 

 ここ数日、彼女はずっとこう。


 ニートの観察なんかしても楽しくないだろ。


「あのさあ? この前からなんなんだよ?」


「んー? 別に? ただ、なかなか尻尾を出さないなって」 


「は?」


「……試しに尾行でもしようかな」


 なに言ってんだこいつ。


 ワケわかんないから無視だな。


 俺はリリスを素通りする。


 ともかく、これで勇者側の仕事に一区切りついた。


 作戦は大成功だ。

 

「ふわあ。じゃあ、帰って寝るとしますか」


 ニートたるもの、昼寝が仕事。


 これを欠かしてはニート失格だ。


「ルシフェルさん! 行きますよ?」


 突然、ラストから服の襟を掴まれる。


「なに? これから昼寝でも」


「反省会です」


「反省会? 夢の中で?」


「どうやって!? 違います! 今回のベリアルでの職務放棄。それについての指導です!」

 

 二人きりになるための建前ね。


 やれやれ。まだ休めないと。


「さすが教官! あのニートに罰を与えるとは」

「この際だ! ニート根性を叩き直せ!」

「いい加減更正しろや糞ニート!」


 ほぼ全員から罵倒の嵐。


 すげえ。味方が誰もいねえや。


 逆好感度マックスだとこうなるのか。


 ここまで分かりやすく嫌われると、悲しいを通り越して満足だ。


「そういうことなので皆さん! 本日は解散します! では!」


 俺はラストに引きずられ、この場をあとにした。


 仕事を終えたはずの今日。


 一休みできるかと思えば、また仕事。


 ニートになりたいだけなのに、何でこんな働いてるんだろうな?


 楽してえよ。


「やれやれ。ニートへの道はまだ先みたいだな」

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