第三章:「禁じられた文字」
「すべての印が迷信とは限らない……時に、炎で刻まれたものは、血でしか消せない。」
この章で、リースは未知の中へ一歩を踏み出す。
そして、古の文字が、決して忘れられぬ言葉で語り始める。
だが、彼はその声を聞く覚悟ができていたのだろうか?
「古の言葉は語られるものではない…目覚めるものだ。」
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リースは奇妙な声に目を覚ました。
それは人の声ではなかった。むしろ、地の底から何かが呼びかけるような、夢とも現実ともつかぬ響きだった。
ザラ婆のいない小屋。壊れた窓から差し込むかすかな光。そして、机の上には昨日と同じように開かれた封筒と手紙。
だが、何かが違っていた。
壁に――炎で刻まれた奇妙な文字があった。まるで生きているかのように、赤熱し、脈打っていた。意味は分からないが、その文字はリースの骨にまで響いた。
無意識のうちに近づき、手を伸ばすと、世界が一瞬止まった。
視界にフラッシュのような映像が流れる:
顔のない男が燃え上がる塔の上に立つ。
灰の海に突き立つ剣。
声なき悲鳴をあげる女性。
そして――闇。
床に倒れたリースが目を覚ますと、息が苦しく、あの文字はもう消えていた。
しかし、彼は一人ではなかった。
部屋の隅に、一人の少女が立っていた。ガラスのような目で彼を見つめ、恐れる様子はない。
> 「文字を見たんだね?」
彼女は近づかず、そう言った。
「君は…誰だ?」
リースはかすれた声で問う。
> 「私は、君が見るべき時に現れた者。運命は選ぶものじゃない、目覚めるものよ、リース・アッシュ。」
質問しようとした瞬間、彼女の姿は掻き消えた。
残されたのは、理解できない恐怖と――決して記されてはならぬ文字の記憶だけ。
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外の空は依然として曇っていた。
だが、遠くの山頂に――赤い点が一つ、まるで目のように光っていた。
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第三章・完
文字は消えた――だが、その痕跡は、リース自身の中に新たな章を書き始めていた。
ここまで旅を共にしてくださった皆さまへ、心から感謝を込めて。