第2章:「灰の村…雨の下で」
「時として、英雄は忘れられた灰から生まれる。光も栄光もなく…ただ、まだ交わされていない約束だけがある。」
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リンデイル村は、太陽がほとんど訪れない場所の一つだった。アルキアド大陸の最東端、灰色の山々の麓に位置し、枯れた松の木々と永遠に漂う霧に囲まれていた。
その村で、リースは古びた土造りの家の屋根に一人腰掛け、雨を降らせることのない厚い雲に覆われた空を見つめていた。それはまるで、今にも破裂しそうな彼自身のようだった。
幼い頃から、彼は自分の中に何か奇妙なものがあると感じていた。その名もわからない何かを、他人に見られるのが怖かった。家族はいなかった。ただ「老婆ザーラ」と呼ばれる年老いた女性が彼を育てていた。彼女は優しくもなく、冷たくもない。ただ、語る以上のことを知っているようだった。
その日、南から風が吹いた。
南風は年に二度しか吹かない。だが今回は、何か別のものを運んでいた…古い炎の匂いと、誰にも見えない馬の蹄の響き。
夜、誰かがザーラの家の扉を叩いた。扉は開かれなかったが、リースには囁き声が聞こえた。
> 「似姿が現れた…首の印は見間違えようがない。」 「確認したのか?」 「ええ…夢が始まった。」
翌朝、老婆は姿を消していた。
テーブルの上には、一枚の紙が残されていた。リースが学んだことのない言語で書かれていたが、彼には読めた。
「この封筒を開いたなら、世界もまた目を開き始めている。夢を信じるな…光もまた、罠だ。」
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空には異変があった。鳥たちは風に逆らって飛び、霧が村を離れつつあった。
何かが…山の中で動いていた。
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第2章 終わり